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319号 2015/5/17
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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書

© Josef Koudelka/Magnum Photos
5月も半ばなのに、夏のような暑さです。つい最近まで冬の寒さにびびっていたのですが、いまや熱中症にびくびくしている・・・どうせ、なるようにしかならないのですが。上の写真はチェコフロバキア生まれの写真家、ジョゼフ・クーデルカ(Josef Koudelka)の代表作の一つです。撮影されたのは1968年8月、場所はプラハ。8月22日、23日に当時のソ連軍がプラハに侵攻、そのせいで全く人影が消えたヴァーツラフ広場の風景です。どうしても使わせえてもらいたくなりました(詳しくは「むさびの鳴き声」に)。

目次

1)「移民はゴキブリ」発言が撤回されない理由
2)地中海の移民・難民:40年前を思い出そう
3)中東の混沌:敵の敵は、やっぱり敵?
4)完全小選挙区制、もう止めよう!
5)Britain/Britishの存在価値
6)どうでも英和辞書
7)むささびの鳴き声

1)「移民はゴキブリ」発言が撤回されない理由

4月17日付のThe Sunに掲載された同紙の女性コラムニスト、ケイティー・ホプキンズ(Katie Hopkins)によるエッセイが問題になっています。話題は地中海における難民船の沈没事故で、エッセイの見出しは
  • Rescue boats? I’d use gunships to stop migrants
    救命艇を派遣?アタシなら軍艦を派遣して移民を阻止するわ
となっている。で、どんなことを書いているのかというと・・・
  • 構うこっちゃないわ。棺桶の写真を見せてよ、水に浮かぶ死体の写真でもいい、バイオリンでも弾いてるかも、痩せて悲しげな顔をした人たちの写真も悪くないわね・・・。全然平気よ。
    NO, I don’t care. Show me pictures of coffins, show me bodies floating in water, play violins and show me skinny people looking sad. I still don’t care.
  • 言っときますがね、あの移民たちはゴキブリと同じなの。「1984年のエチオピア救済コンサート」っぽい顔してるけど、核爆弾に遭ったって死なないようにできてるの、あの人たちは。
    Make no mistake, these migrants are like cockroaches. They might look a bit “Bob Geldof’s Ethiopia circa 1984”, but they are built to survive a nuclear bomb. They are survivors.
  • この際だからオーストラリアに頼んで軍艦でも持ってきてもらって、移民たちを自分たちの国へ追い返す、、そして軍艦難民船には火をつけて焼いてしまうことよ。
    It’s time to get Australian. Bring on the gunships, force migrants back to their shores and burn the boats.(注:この部分のthe boatsという言葉をむささびは「軍艦」としましたが、これは誤りで、燃やしてしまえと言っているのは「難民船」のことでした。ある方から指摘されるまで全く気がつきませんでした。よく読めばそうに決まっています。失礼しました!)。
新聞業界の専門紙、Press Gazetteによると、この記事が掲載されると20万人を超える抗議の署名がThe Sun宛にとどき、報道水準独立協会(Independent Press Standards Organisation:IPSO)には100人を超える個人から抗議が寄せられたのだそうです。さらにジャーナリストの団体である全国ジャーナリスト組合(National Union of Journalists:NUJ)もIPSO宛に抗議文を送り、この記事の撤回とケイティー・ホプキンズの解雇をThe Sunに勧告するように申し入れた。

が、NUJの申し入れについては、ホプキンズのエッセイが具体的な個人を侮辱したわけではないということで、これを却下してしまった。

IPSOの却下についてNUJは、具体的な個人を名指ししていなくても社会における一部のグループを見下すような表現はIPSO自身が定めるジャーナリストの行動規範に反しているとみなすべきだ(potential breach of the code of practice)と批判、今回の却下は「IPSOという組織そのものの存在に対する疑問を投げかけるものだ」(thrown further doubt on its own legitimacy)と抗議しています。ちなみにIPSOは2011年に発覚したルパート・マードック経営の新聞社による盗聴事件をきっかけに、それまでの報道苦情処理委員会(Press Complaints Commission)にかわってできた公的な機関です。

▼ケイティー・ホプキンズですが、1975年生まれだから今年で40才、どちらかというとテレビの世界のパーソナリティとして知られているようであります(むささびはまったく知らない)。確かオーストラリア政府が難民船に対して厳しい態度で臨んでおり、これを追い返すという方針をとっているのですよね。ケイティー・ホプキンズの主張はそのセンに沿ったもののようですね。マードックとThe Sunの関係を考えれば大して不思議なことでもない?
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2)地中海の移民・難民:40年前を思い出そう

4月19日、リビア沖の地中海で不法移民を乗せた船が沈没して多数(約900人)の死者を出したことは日本のメディアでも広く伝えられましたよね。あの事故の4日後にブリュッセルでEUの緊急首脳会議というのが開かれ、この種の移民の斡旋に関わる業者の取締りを徹底するなど、地中海における監視・救助活動の予算を現在の3倍に増やすことでこのような事故の再発を防ごうとすることで合意したのでありますね。

この問題ついてオックスフォード大学難民研究センター(Refugee Studies Centre)のアレキサンダー・ベッツ(Alexander Betts)氏が4月26日付のThe Observer紙に寄稿、EUの首脳たちがこの問題を国境警備や不法移民の斡旋業者の取締りということのみを語っていて「助けを必要している難民のことを考えていない」(we need to be helping refugees in need)と痛烈に批判しています。


ベッツによると、今回の事故にはさまざまな背景があるけれど、最大の理由は、内戦、テロ、自然災害などの理由で定住場所を追われる人々の数が世界的に激増しているということです。地球規模で見ると、現在、displacement(それまで暮らしていた場所を離れざるを得なくなった人)の数は5000万人と言われている。第二次対戦以後で最大の規模だそうです。例えばシリアの場合、定住場所を追われた人の数は900万とされ、うち600万人が国内移住、300万人が難民として海外へ逃れている。行き先はトルコ、レバノン、ヨルダンなど。レバノンの場合、全人口の4分の1がシリアからの難民とされている。ただこれら3国にも受け入れの限界に来ており、入国を拒否するケースも出てきている。それがまた危険を承知で地中海経由でヨーロッパへ向かう人びとの数を増やしているというわけです。

これについては、簡単な解決策などない(there are no easy solutions)わけですが、ベッツの意見では、ヨーロッパの政治家たちは楽な解決へ向かおうとしている。例えばイタリアのレンツィ首相は「人身売買との戦い」(war on smuggling)を宣言、不法移民の斡旋業者の取締り厳しくすることを明らかしているけれど、この態度は不法移民が斡旋業者によって生まれているかのように錯覚している。この種の業者は彼らの「ビジネス」に需要があるから生まれるのであって、これらの業者を犯罪者扱いしても問題の解決にはならない。対麻薬戦争と同じで、取締りによって生まれるのは麻薬価格の高騰だけ。移民の斡旋業を取り締まると、当局の目を逃れる「危険な旅」が増えるだけであるとベッツは言います。

要するに地中海における危険な移民船の問題は、単なる国境警備で解決できるような事柄ではなく、難民や定住場所を奪われた人びとの保護を最優先にしないと永遠に解決しない。難民保護については「1951年難民の資格に関する条約」(1951 Convention on the Status of Refugees)というものがあって、各国とも自分たちの領土に到着・漂着した難民は救済しなければならないことになっている。しかしオーストラリア政府が打ち出した「太平洋対策」(Pacific Solution)という政策は、難民が自国の領域内に漂着することを防止するものであるし、ケニアではソマリアからの難民収容所の閉鎖が決定されたりしている。

ベッツによると、現在の救済体制では自国の領域内に到着した難民は救済するけれど、他国に到着したり、暮らしたりする難民についてはこれを支援する義務はない。複数の国が難民救済のための負担をシェアするという発想がないということです。となると、政情が不安定であったり、テロや貧困が横行している国、すなわち「難民を生む国」に近い国ほど負担が大きくなってしまう。難民の8割以上が「発展途上国」で暮らしている背景がここにあるということです。近隣諸国の負担を軽減ためには、紛争当事国および近隣諸国以外の国による支援が求められる。ヨーロッパ諸国はシリアやリビアの正常不安定に一役買っているのだから、難民救済の道義上の義務があることは言うまでもない、とベッツは主張しています。


アレキサンダー・ベッツは、いまから40年前の1975年にベトナム戦争が終わったときに発生した「ボートピープル」について語ります。ベトナム、ラオス、カンボジアなどからの難民が近隣諸国(マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、香港など)へ向かったけれど、やがて行き先の国に追い返されて、溺死する難民も出てきた。いまの地中海と同じ状況です。それがテレビや新聞によって報道され、政治的リーダーシップと大規模な国際協力の姿勢が生まれた。インドシナ難民救済計画(Comprehensive Plan of Action:CPA)がUNHCRのリーダーシップの下に合意されたのは1989年のことだった。

ベッツはまたこの種の問題に対処するためには、故郷の国を出てきた人びとの「再定住(resettlement)」という発想が必要で、ベトナムのボートピープル発生のときにはカナダ、アメリカ、オーストラリアなどにはこの伝統が発揮された。が、この発想はヨーロッパには根付いていない。EU首脳会議で5000人の難民再定住計画が話し合われたが、シリアからの難民が300万人もいることを考えると、お笑い(absurd)としかいいようがない、とベッツは言っている。
  • もし現在の危機的状況に一筋であれ希望の光をもたらすとするならば、それは難民に対する一般大衆の見方を変えさせて難民のためのクリエイティブな解決策を見出すことから始めなければならないだろう。そしてそれは世界的な規模の解決策でなければならないだろう。そのために必要とされるのが政治的な勇気とリーダーシップなのだ。
    If there is to be a silver lining to the current crisis, it stems from the opportunity for political leadership to reframe how refugees are seen by the public and to come up with creative solutions for refugees on a global scale. But that will take political courage and leadership.
確かに難民・移民が発生する国には、貧困とか内戦など、それなりの理由があるけれど、その周辺国にも大なり小なりで似たような状況にあるから、結局その周辺の地域全体が難民・移民を生み出すような状態になってしまう。ベッツ博士が主張するのは、そのような国々とは全く縁のない国もこの問題解決に関わる必要があるということですよね。5月8日付の毎日新聞に『金言』というコラムがあって、西川恵さんが地中海の移民・難民について書きながら北東アジアにおける難民発生のリスクについて触れており、いまでも「脱北者」を生んでいる北朝鮮で混乱があれば当然日本にも影響があるというわけで「想像を凝らせばいま欧州で起きていることは決して人ごとではない」と言っている。実際には地中海で遭難するリビアやシリアからの難民も、いまの日本にとっては他人事ではない・・・とベッツ博士らは言っているのですよね。
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3) 中東の混沌:敵の敵は、やっぱり敵?

The Independent紙の中東専門記者であるパトリック・コクバーン(Patrick Cockburn)が、4月12日付のサイトで、中東におけるイスラム国のような武装組織が跋扈する状況について、これを止めるための方法は一つしかない(there's only one way to stop them)として「敵の敵を味方にすること」(our enemy's enemy must be our friend)だと言っています。

いまから一ヶ月半ほど前(4月初旬)、イエメンの東部にあるアルムカーラ(Al Mukalla)という町を「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP:Al-Qaeda in the Arabian Peninsula)という名前の武装組織が襲撃した。その名が示すとおり、AQAPは、9・11同時多発テロを起こしたあのアルカイダの流れを組む武装組織なのですが、アルムカーラにあった刑務所を襲撃、イエメンにおける過激派指導者を含む300人の囚人解放に成功した。


コクバーンによると、アルムカーラの防衛に当たっていたイエメン政府軍は、AQAPの襲撃に際して武器を捨てて逃げ出してしまったのだそうです。同じような風景が昨年の夏、イラクのモスル(Mosul)で起こった。あのときはイスラム国(IS)が襲撃して町を占領したのですが、イラク政府軍は戦うこともなく逃亡してしまった。

イエメンの町を襲ったAQAPという組織が、数あるアルカイダの関連組織の中でも最も危険な存在であることはアメリカの情報当局が言っていることです。つまりあの9・11テロを起こしたアルカイダと同じかそれ以上に危険な武装組織が「活躍」してしまっている。4年前の2011年5月2日、パキスタンのアボッタバード(Abbottabad)というところで米軍の特殊部隊があのオサマ・ビン・ラディンを殺害したときはアメリカ中が「9・11テロの首謀者がついに殺られた」というので大興奮に包まれたのですよね。あたかもテロリズムそのものが根絶でもされたかのような騒ぎだった。


で、テロリズムの現状はどうなっているのか?上の地図をクリックして大きくしてもらうとわかるけれど、南アジアのパキスタンから北アフリカのナイジェリアに至るまで、イスラム国家はいずれも弱体化しており、その背景にはアルカイダやアルカイダ関連の過激派の動きがある。そしてアメリカもそのことは十分に分かっている。でもどうすれば過激派の動きを封じることができるのか、まったく分からずにお手上げ状態というわけです。

このような武装組織が跋扈する状況について、コクバーンがため息とともに引用するのがアシュトン・カーター米国防長官の次のような言葉です。
  • その国の政府が安定していれば、テロに対抗するするのも容易なのだが、イエメンにはそのような状況は存在しない。
    It’s always easier to conduct counter-terrorism when there’s a stable government in place. That circumstance obviously doesn’t exist in Yemen.
となっている。

コックバーンに言わせると、カーター長官の言うことは「ごもっとも」(You can say that again)なのかもしれないけれど、テロ集団が自分たちの基地を政情が安定しているデンマークやカナダに置いたなどという話は聞いたことがない。アルカイダのような組織がベースを置くのは政府そのものが機能していないような場所、すなわちイエメンだりイラクでありシリアのような国と相場が決まっている。

最初に述べたようにイエメンのアルムカーラではアルカイダの関連組織が勝利を収めているけれど、彼らが勝利しているのはここだけではない。ジャバート・アルヌスラ(Jabhat al-Nusra)という組織がシリア北部のイドリブ(Idlib)という町を襲撃しているけれど、これもアルカイダの関連組織です。ここでもシリア政府軍に壊滅的な打撃を与えている。サウジアラビアからの情報によると、この襲撃にあたってはサウジアラビアとトルコがテロ組織のジャバート・アルヌスラを支援している。サウジなどはジャバート・アルヌスをイスラム国(IS)とは別ものであり、ISのようなテロ集団との戦いにおいては自分たちの味方だとも言っている。

しかしコクバーンによると、ジャバート・アルヌスラはイスラム国(IS)から分離したテロ組織で、この二つは一時は内ゲバのようなことをやっていたのですが、最近では協力関係にあるという説もある。シリアの反政府組織からの情報によると、シリアの首都、ダマスカス近郊にあるヤムークというパレスチナ人難民キャンプを襲撃、これを占拠したのはISで、これを助けたのがジャバート・アルヌスラなのだそうです。


9・11テロ以来、アメリカはとてつもない金をつぎ込んで、アフガニスタンとイラクで戦争を遂行し、最近ではISやアルカイダのような武装勢力を壊滅させる目的で無人機を使った攻撃を繰り返しており、それが大いに功を奏しているかのような発表がされることがあるけれど、コックバーンによると、そうした勝利宣言によって隠されてしまっているのが、9・11以来、アルカイダ掃討作戦の失敗であり、いわゆる「対テロ戦争」(war on terror)は完全にアメリカの敗北に終わっている。

現にパキスタンからナイジェリアまでの間に広がる地域にあるイスラム教の国において、7つの戦争が進行中であり、そのいずれにもアルカイダもしくはその関連組織が絡んで強さを増している。これが欧米のキリスト教国に広がらないという保障はどこにもない。英国には280万、ドイツには410万、フランスには500万のイスラム教徒が暮らしており、その中にはアルカイダの支持者だっているはずだというわけです。

ではどうすればいいのか?コクバーンは
  • イスラム国、アルカイダのような過激派組織に対応するためには、彼らが活発に活動している国でこれを行うしかない。
    The only way of dealing with Isis, al-Qaeda and other jihadi movements is in the countries where they flourish.
と主張しており、9・11後のアメリカ政府が犯した最大の過ちは、オサマ・ビンラディンらの活動の源であったサウジアラビアという国の責任を問わなかったことにあるとも言っている。9・11テロのハイジャック犯19人のうち15人はサウジアラビアの出身者であったということです。さらにパキスタンにも責任がある。ビンラディンをアフガニスタンで匿ったタリバンをアフガニスタンで政権の座につかせたのはパキスタンであったから。

コクバーンによると、シリアやイラクにおけるアルカイダやISのような過激派との戦いについて西側の政治家や外交官が使う言葉は「敵の敵は味方とは限らない」(the enemy of my enemy is not necessarily my friend)というものです。ここでいう「敵の敵」には、イエメンでAQAPと闘うイスラム教シーア派のフーシ(Houthis)、シリアにおけるアサド政権下の政府軍、イラクにおけるシーア派の武装組織などが入る。コックバーンによると
  • (現在の中東においては)敵の敵を支援することによってのみアルカイダや類似の武装組織の活動を打ち負かすことができる・・・それが現実というものだ。
    The reality is that it is only by supporting “the enemy of my enemy” that the expansion of al-Qaeda and its lookalikes can be beaten back and the movement defeated.
というのが結論です。

▼英国メディアの間では、シリアのアサド政権による独裁政治を、イスラム国やアルカイダのテロリズムと同じレベルで批判・反対対する意見が強い。実際にはアサド政権とイスラム過激集団とは敵同士であり、欧米にとっての最優先の課題は過激武装組織の壊滅なのだから、彼らの敵であるアサド政権は味方にしなければならない・・・とコクバーンは言っているのですよね。"bad people" よりは "less bad people" の方がましということです。そのあたりを無視して、ひたすら "bad is bad is bad" という思い込み路線に走っているのが欧米の政策です。で、出口はない。

▼で、安倍政権による「集団安全保障」とかいう発想によると、このような欧米路線に日本も参加しようではないか、と。でないと、あの湾岸戦争のときのように「カネだけ出して、命は捧げなかった、弱虫・卑怯者、日本」というレッテルを貼られて「国際社会」で大恥をかく、あんなこと、もうまっぴらだ・・・というわけですよね。あのときに命はもちろんのことカネも出さないという路線だってあったはずなのに、です。英国のキャメロン政権はシリアのアサド政権への軍事攻撃を英国内の反戦デモに押されてできなかった。
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4) 完全小選挙区制、もう止めよう!

5月7日に行われた英国の選挙ですが、過半数を獲得する党は出ないだろうという大方の予想に反して、デイビッド・キャメロン率いる保守党が過半数を獲得、晴れて保守党による単独政権が誕生しましたね。労働党のエド・ミリバンド、自民党のニック・クレッグ、独立党のナイジェル・ファラージの各党首が辞意を表明した。何はともあれ選挙結果を数字で見てみようではありませんか。下の表の「議席数」の右にある「議席率」は全議席数(650)に占める獲得議席の割合、「得票数」は端数切捨て、右側の「得票率」は全投票数(約4640万票)に占める割合です。

議席数 議席率(%) 得票数 得票率(%)
保守党 331 50.9 1133万 36.9
労働党 232 35.7 934万 30.4
スコットランド民族党 56 8.6 145万 4.7
自民党 8 1.2 242万 7.9
民主連合党 8 0.6 18万 0.6
シンフェイン党 4 0.6 18万 0.6
ウェールズ党 3 0.6 18万 0.6
社会民主労働党 3 0.3 10万 0.3
北アイルランド連合党 2 0.4 11万 0.4
英国独立党 1 0.2 390万 12.6
緑の党 1 0.2 120万 3.8
その他 1 0.2 16万 0.5

今回の結果について、保守党の単独政権が可能になったことを理由に、英国の政治が「正常」(二大政党制)に復帰し、強いリーダーシップを発揮する政府ができたと喜ぶ向きもあるけれど、ヨーク大学のマーチン・スミス(Martin Smith)教授によると、得票数(率)と獲得議席数の間に存在するギャップを見れば19世紀の昔から続けて完全小選挙区制(First Past the Post)が完全に崩壊しており、英国でも「比例代表制」(proportional representation)を導入すべきであることが明らかになったとのことであります。例えば:
  • 独立党は390万票も獲得、得票率は12.6%もあるのに議席数はたったの1議席しかない。同じことが緑の党にも言える。スコットランド民族党は投票率が4.7%しかないのに議席は56もある!
  • 労働党の得票数(約934万)は前回(2010年)よりも1.5%増という数字です。なのに議席数は258から232へと26議席も減らしている。保守党は前回よりも票数の増え方は0.8%で労働党より小さいのに23議席も増やしている。
  • キャメロンの保守党は「勝った勝った」というけれど、保守党に投票したのは全体の37%で、63%の有権者が「保守党には入れない」という選択をしている。
スコットランドでは59の選挙区のうち56カ所でスコットランド民族党が勝利、残りの3議席を労働・保守・自民の3党で分け合っている。スコットランド民族党の獲得票数は145万4436なのですが、労働・保守・自民の票数を合計すると136万919で、民族党と大して変わらない。この3党はいずれも独立には反対ですが、ロンドンの下院に関する限りスコットランドを代表する声は56対3で圧倒的に独立推進の方が大きいということになる。独立反対のスコットランド人にしてみれば、ロンドンの国会では自分たちの代表はほとんど存在しないという割り切れなさを感じるであろう、とスミス教授は言っている。

それもこれもトップの得票者がその選挙区すべてを代表するという小選挙区制度が持つ矛盾であるわけですが、英国の場合、650人の議員すべてがこの方式で選ばれるから矛盾が極端な形で出てくる。昔のように全国どこへ行っても「中産階級」と「労働者階級」が比較的くっきり分かれていたような時代には「二大政党」でもよかったけれど、現在のように政治的な考え方が多様化し、しかも地方色まで出てきている世の中では小選挙区制は無理というわけです。
  • 選挙結果に有権者の意思がほとんど反映されないのでは、英国政府が民主主義の観点からして正当な存在であるのかが問われることにさえなってしまう。
    Very few voters can make a significant outcome to the electorate, undermining the democratic legitimacy of British government.
英国の選挙は650の選挙区で争われるわけですが、それぞれに保守党が強いとか労働党の地盤とかいう性格がある。選挙制度改革協会(Electoral Reform Society)という組織がすべての選挙区を調査、「安全区」(safe seats)と「接戦区」(marginal seats)に分類したところ、650のうちの364選挙区がいわゆる「安全区」であることが判明している。党派別の内訳は次のようになっている。
  • 保守党:186選挙区
    労働党:150選挙区
    自民党:7選挙区
    民主連合党(北アイルランド):7選挙区
    スコットランド民族党:5選挙区
    シンフェイン党(北アイルランド):4選挙区
例えばオックフォードシャーにあるWitneyという選挙区はデイビッド・キャメロンの「地元」であり保守党の「安全区」、北イングランドのDoncaster Northという選挙区は労働党のエド・ミリバンド党首の地元です。それぞれの選挙区の結果は次のようになっている。
Witneyという選挙区はコツウォルドと呼ばれる緑の美しい田園地帯。いわゆる「ミドルクラス」のエリアで典型的な保守党の地盤です。今回は約6万人が投票、うち保守党に投票した人が3万5000人、保守党以外が約2万4000人だから6対4ですね。

Doncasterはヨークシャーにある工業都市で、いわゆる「労働者階級」の多い大都会。これまでは労働党の安全圏であり、いまでもそうなのですが、この選挙では独立党(UKIP)が候補者を立て、約9000票を獲得して健闘している。移民の増加などの現状に不満を抱く労働者階級に訴えたということです。

この二つの選挙区における選挙は、これまでもこのような状況であったし、これからも続くであろうとされている。となるとWitneyで暮らす人たちで保守党嫌いの人は、ほぼ永久に自分の気に入らない国会議員を持つしかないということになる。同じことがDoncasterにもいるであろう保守党びいきにも言える。このような選挙区が全部で364(つまり半分以上)もあるということで、これが民主的とはとても思えない、というのがスミス教授らの言い分です。

▼最後に紹介した「接戦区」と「安全区」ですが、今回の選挙結果をすべて調べたわけではないけれど、確かに「安全区」のほとんどは従来どおりの政党の候補者が勝っていました。国会の議席の半数以上がこのような状況で決まってしまうのはどうかしていますよね。最初から結果がわかっているような選挙区には、政党としても力を入れない。党の幹部による演説会とか政策説明などは、どうしても「接戦区」が中心になってしまう。さらに(当たり前のことですが)「接戦区」の有権者の1票と「安全区」の1票では政治に与える影響力が全然違う。保守党の安全区であるWitneyで保守党以外に投票した約2万4000人は、おそらく選挙の度に同じ行動をとるのだろうと思うのですが、この人たちの考えが政治に生きることは決してない。

▼日本にもこの種の選挙区はあるけれど、その場合は「世襲議員」によるジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)の三つのバンが威力を発揮するケースで、英国の "safe seats" というのとはちょっと違う。保守党のデイビッド・キャメロンはWitneyを選挙区にしてはいるけれど個人的な繋がりがあるわけではない。
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5)Britain/Britishの存在価値

上の写真は5月2日付のThe Economistの政治コラム"Bagehot"(バジョット)のイラストとして使われているものです。5月2日ということは、選挙の5日前ということですね。英国に興味のない人にとってはユニオン・フラッグを引っ張りっこしているこの6人が誰であるのか、ピンとこないかもしれないですね。左手前から、独立党のナイジェル・ファラージ、労働党のエド・ミリバンド、ウェールズ党のリーン・ウッド、右手前からスコットランド民族党のニコラ・スタージョン、保守党のデイビッド・キャメロン、シンフェイン党のジェリー・アダムズ・・・いずれもこの記事が掲載された時点では党首です。


England

N. Ireland

Scotland

Britain

念のために解説させてもらうと、英国(UK)の国旗はEngland, Scotland, Northern Irelandを示す三つの部分から成っています。この国旗ができたのは1606年、この時点でウェールズはすでにイングランドと合併(1536年)していたので、ユニオン・フラッグにはウェールズのシンボルが入っていない。

で、Bagehotのエッセイは「連合を引き裂く」(Tearing apart the union)という見出しになっている。「ユニオン」は普通は「組合」という意味で使われるけれど、この場合はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4地域が「連合状態にある」(joining together)というようなニュアンスで、事実上は英国(UK)という「国」のことを言っている。ミリバンドとキャメロンは全国的な政党の党首ですが、スコットランド民族党、ウェールズ党、シンフェイン党(北アイルランド)はいずれもそれぞれの地域政党であるし、独立党も名前はUKIPと全国風ですが、事実上のイングランド民族党といっても構わないような性格です。

この写真は彼らの手によって英国という国の団結が引き裂かれつつあると言っているのですが、バジョットによると、今回の選挙の争点は「移民」だの「住宅」だの「国民保健制度」だのという政策よりもさらに根源的なものだったのではないか?すなわち「英国」(Britain)というものの存在自体に関わるもので
  • ブリティッシュでありたい者は誰なのか?ブリテンは何のために存在しているのか?
    Who wants to be British? What is Britain for?
ということです。この問いかけはまさに英国という国の成り立ちそのものを表現しています。あの「島国」にはEnglish, Scottish, Welsh, Irishという人びとはいるかもしれないけれど "British" なんてどこにいるのかということです。さまざまな歴史的な経緯もあって、自分のことをBritishであると考える「英国人」がそれほど多くないということは、むささびジャーナル295号でも説明したとおりです。でも国旗が象徴するのは、まさにBritainなのですから、妙な話です。

今回の選挙が行われる直前、バジョットは英国の地方を訪問して政治的な雰囲気を見て回った結果、英国は将来、この写真が示すような状態に解体してしまうのではないかという危惧の念を禁じ得なかったと言っている。

例えばスコットランド。昨年の国民投票が大いに話題になったけれど、50才以下のスコットランド人の多くが独立を望んでおり、英国全体でもスコットランドが20年以内に独立すると考えている人が半数にのぼっている。来年にはスコットランド議会の選挙があるけれど、現政権の民族党(SNP)が、二度目の国民投票をマニフェストで約束するかどうかが注目されている。ただSNPはそれほど焦ることはないと考えているとも言われている。

北アイルランドを訪問して意見を聞いたカソリック系の中流階級の人びとはすべて選挙ではシン・フェイン党に投票すると言っていた。ご存知のとおりこの党はかつてテロを繰り返したアイルランド共和国軍(IRA)の政治組織です。ウェールズ党のリーン・ウッド党首(女性)はスコットランド民族党のスタージョン党首の理想主義に大いに感銘を受けたとして、ウェールズ国内におけるウェールズ語のさらなる普及に取り組みたいと語っていた。一種の文化ナショナリズムの高揚です。そして南イングランドの富裕層エリアであるケントではUKIPの党首が「イングランドの納税者が収めた税金はスコットランドには使わせない!」と訴える演説を行っていた・・・という具合に、UKを構成するそれぞれの「国」がそれぞれに民族主義的な傾向を強めているという印象であったということです。

バジョットによると、英国人(Britons)はBritainあるいはBritishという呼称を世界に向かって「裃(かみしも)を着て身構える」(dressing up)ときに使ってきたのだそうです。大英帝国の建設とか国連のような場で意見を主張するときがそれにあたる(そう言われてみると、British Empireとは言うけれどEnglish Empireとは言いませんね)。国際社会における英国の力が衰退したいまBritainのアイデンティティもかつてほどの力がないことは事実であるとしても、きちんと理解しさえすればBritainにもかつてに劣らないほどの価値はある、とバジョットは言います。
  • (BritainあるいはBritishというアイデンティティは)過去においてそうであったように、これからも過度なナショナリズムから身を守る暖かい毛布のような役割を果たしていくであろう。このアイデンティティのおかげで英国人(Britons)はヨーロッパでは珍しいほどにナショナリズムには頑固に抗してきたのだ。
    And it will remain, as it always has been, a comfort blanket against the intemperate nationalism to which Britons, almost uniquely among their European peers, and for this reason, have remained stolidly immune.
とバジョット(おそらく筆者自身も英国人なのでしょう)は主張しています。

▼このコラムのバジョットという名前は、The Economistの第三代編集長であったWalter Bagehotに由来しています。編集長だったバジョットも現在のコラムを書いているコラムニストもEnglish(イングランド人)なのではないかと(むささびは)想像しているのですが、その人の感覚では、このままだとUKがバラバラになってしまうという危機に見舞われている。そして思うのが、Britain/Britishという、よそ行きアイデンティティが、他の国では起こりがちな極端な民族主義の台頭を防いでいるということ。EnglishとかScottishというのが普段着ならBritishは正装というわけで、正装にはそれなりの極めて大切な役割があるということですね。むささびにはこれが非常に面白いと思えるわけであります。ナショナリズムの台頭を防ぎたくて現在の国名にしたわけではないけれど、結果としてそうなっている部分は確かにある。

▼バジョットが憂慮する英国内のナショナリズム的な政党は今回の選挙において、それぞれの地域でどの程度の票を獲得したのでしょうか?2010年の選挙との比較で示してみます。
2010 2015
スコットランド民族党 50万票 154万票
ウェールズ党 17万票 18万票
シン・フェイン党 17万票 18万票
UKIP 90万票 388万票
▼これらのナショナリスト的な政党の票数を合計すると、ざっと500万になる。投票総数が約4640万だから、全体の1割強がこの種の政党に入れたことになる。スコットランド民族党の得票率は50%、2位の労働党は24.3%だったから普通にはありえないようなダントツぶりだった。ウェールズの場合、ウェールズ党は労働党(得票率:36.0%)、保守党(27.2%)、UKIP(13.6%)に次いで得票率では12.1%というぐあいで、スコットランドとは事情が違う。北アイルランドの場合、アイルランドの民族主義的な色彩を出しているのはシン・フェインだけ。議席数は減ったけれど得票数は少しとはいえ増えている。
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「ブリティッシュ」の意味
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6) どうでも英和辞書
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pollster: 世論調査員(会社)

上の漫画では右側の世論調査員が左の男に質問をしています。
  • "Do you think the Prime Minister is doing a good job, a great job or an absolutely fantastic job?"
というわけで、首相の仕事ぶりについて質問、「よくやっている」「素晴らしい仕事をしている」「まったくもって文句のつけようがない」の3つの中から選んでくれ、と聞いているのですよね。英国メディアによる政治報道に欠かせないのがpollstersの存在です。"poll"には「投票」という意味もあるけれど、世論調査・アンケートという意味もある・・・というより同じようなものですよね。前者が法律で決められた制度であるのに対して後者は非公式で選挙ほど大勢の人を対象にしていないだけ。"ster"は「~をする人」という意味のようです。

日本では「世論調査」は大体においてメディアが自分たちで行って自分たちの名前で発表するものですよね。「NHKが行った世論調査によると・・・」というぐあいです。英国の場合は(むささびの見る限りは)メディアが自社で調査するケースは全くなしで、すべてpollstersに調査を委託、その結果を記事にする。だから記事になる場合は、「エコノミスト誌がYouGovに委託した調査によると・・・」という具合にpollstersの名前も報道される。世論調査会社はたくさんあるけれど、有名どころを挙げるとIpsos MORI、ICM、YouGov、Opiniumなどがある。

5月7日の英国の選挙は、pollstersによる事前予想がことごとく外れてしまいましたね。保守党と労働党の得票率はそれぞれ36.9%対30.4%という結果だったのですが、選挙直前予想のサンプルをいくつか挙げると:

保守党 労働党
Ipsos MORI 36% 35%
YouGov 34% 34%
ICM 34% 35%

となっていた。pollstersにしてみれば「まさか保守党が単独過半数をとろうとは思わなかったし、労働党があそこまで惨敗するなんて予想もしていなかった」というわけです。予想が外れてしまったことについて世論調査会社が集まる業界団体であるBritish Polling Council (BPC)は、「我々の調査方法に問題があったのかどうか調査する必要がある」という声明を発表しています。

いつも気になるのですが、NHKの調査による内閣支持率の報道にあたって「無作為に選んだ電話番号で調査する」と言うけれど、その「電話」というのは固定電話ですよね?携帯の番号を「無作為に選ぶ」なんてことできるんですかね。いまどき固定電話に出る人って、大体においてアタイのような年寄りなのではありません?英国の場合、インターネット時代になったという事情もあるのでしょうが、調査対象や調査の方法まで詳しく説明されているので納得するのですが・・・。
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7) むささびの鳴き声
▼まずはこの「むささび」の「表紙」に使われたジョゼフ・クーデルカの写真から。写真をクリックすると、この人の写真集"EXILES"の画面が出ます。その2ページ目にこの写真が掲載されています。自分の祖国であるチェコスロバキアへのソ連軍の侵攻に抗議する写真であることは明らかですよね。この写真集そのものが "rage to see"(怒りを見る)とされているそうなのですが、プラハのヴァーツラフ広場という場所の現状を怒りをもって伝えています。むささびがこの写真を使いたいと思った理由は写真家の感情がもろに伝わってくるからです。いわゆる「客観的」でないからです。ジャーナリストは怒らなければならない、戦わなければならない・・・いまの日本の報道関係者は肝に銘じて欲しいよね。

▼先日、TBSテレビの『報道特集』を見ていたら、第二次世界大戦の勝利記念パレード(5月9日)に関連して、現在のロシアにおける報道の自由についても伝えていました。それによると、かなりの愛国主義(ナショナリズム)がメディアの世界を覆っており、政府批判の報道がなかなかできなくなっている。「それでも」というか「それだから」というべきか、プーチンの人気は80%を超えている。番組に出ていた愛国的ロシア人の表情を見ていると、ナショナリズムは他者への劣等感が基になっているのだと思えてきました。日本・中国・韓国で大きな声をあげている「愛国者」も全く同じことですね。でも、そのロシアにも政府に批判的なテレビ局があって、細々とはいえちゃんとメディア活動をやっているのです。その局の人たちには怒りがあり、戦う姿勢があったということです。

▼英国の選挙について。次なる政治イベントが2017年のEUへの加盟に関する国民投票であることは何度か紹介しましたよね。キャメロンとしてはEU加盟を続けたいのですが、そのためにはそれなりの条件をEUに提案してこれを飲ませ、それを基にした対EU関係を国民に提示して、残留についてのYes or Noを問いたいわけです。問題はそれをEUがそのまま受け入れなかった場合、キャメロンはそれなりの妥協をしなければならないわけですが、それについて英国人がどのような判断を下すのかということです。「EUなんかに残っていられるか!」と言えるのか?庶民感覚ですが、ユーロトンネルまで作っておきながら、いまさら「英国はヨーロッパではない」なんて言ってもなぁ・・・。

▼英国がEUを離脱したいかどうかはともかく、EUは英国をどの程度必要としているのかということも考えてみたい話題ですよね。そんな時に英国がヨーロッパ大陸諸国に提供できる「英国らしさ」の象徴がBritainかもしれない・・・ということは5番目の記事でディスカッションしています。

▼ところで、2017年の前にもう一つ大きな政治イベントがあります。来年(2016年)のスコットランド議会選挙です。おそらく現在のスコットランド民族党が勝って政権を続けるのだろうとは思うけれど、問題は選挙の際のマニフェストにスコットランドの独立に関する国民投票を再び実施することを約束するかどうかです。前回(2011年)はこれをうたって勝ったわけで、昨年の国民投票はその約束を実行したということです。The Economistなどは、再び国民投票を実施しても結果は前回と似たようなものだろうと言っている。いずれにしてもスコットランド民族党は英国のEU離脱にはかなり強硬に反対しているので、スコットランドの選挙結果がEUに関する国民投票の行方にも大いに影響することは間違いない。

▼例によって、長々と失礼しました。これから暑くなります。お元気で!
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むささびへの伝言