musasabi journal

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318号 2015/5/3(改訂版)
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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
きょう(5月3日)は憲法記念日です。埼玉県飯能市近辺はとてもいい天気です。昨日、英国のウィリアム王子夫妻に女の子が生まれたのですよね。昨夜7時のNHKニュースが「もうすぐ生まれる」というロンドン特派員のレポートをトップニュースとして伝えていました。2番目のニュースが救援活動もままならず悲惨な状態のネパールからの報告でした。順序が逆。むささびは、このニュース番組を作っている編集者の頭脳を疑うと同時に「なんでこんな番組のために視聴料を払うのか?」と考え情けなくもなりました。

で、今週の木曜日(5月7日)は英国下院の選挙の日です。保守党も労働党も単独過半数はとれず、二大政党制から多党政治の時代へと移り変わる時代を象徴するような選挙になると言われています。英国社会そのものの変化が政治の世界に反映されているということですね。

そこでこのむささびジャーナルはいつもとは趣向を変えて、世論調査をいくつか紹介しながら現在の英国人が何に喜び、何に不安や怒りを覚えながら暮らしているのかを紹介したいと思います。参考にするのは、4月19日付のThe Observerのサイトに掲載されている "Britain Uncovered"(素顔の英国)という企画記事です。言うまでもなく紹介するのは、相当に長い記事のほんの一部です。できれば本文をお読みになることをお勧めします。

英国のパーセンテージ
金持ちほどお金に不安?
極端すぎる、南北格差
リストラの不安はないのに・・・
左翼には辛い時代?
英国はヨーロッパではない!?
テレビは信頼、新聞には不信感
で、結局、選挙はどうなるのか?
むささびの鳴き声

金持ちほどお金に不安?
まずは毎日の生活で何についていちばん不安(anxiety)を覚えるか?という問いなのですが、トップにくるのは「お金」、次いで「家庭・家族」、「健康」、「仕事」などとくる。この中の「仕事」とは「仕事上のプレッシャー」という意味であり、「時間」というのも「時間に追われるプレッシャー」という意味です。お金のことがいちばん心配ということについては年齢別の違いはないそうなのですが、ちょっと面白いと思うのは地域によって差があるということ。The Observerによるとイングランドの東部や南西部ではお金に関係する心配が大きい。ウェールズではmoneyよりもfamilyのほうが大事だと考えられているのだそうです。イングランドの南のほうにはどちらかというと富裕層が住んでおり、そのような人のほうがウェールズや北アイルランドの人よりもお金にまつわる心配が大きいということになる。
「仕事」(work)にまつわる心配は第4位なのですね。それも一桁しかいない。最近の流行言葉であるwork/life balanceに関係するのですが、現在仕事に就いている人に「給料はいまのまま・勤務時間が短くなる」(Shorter hours/same money)というのと「勤務時間はいまのまま・給料が高くなる」(Same hours/more money)の二つの選択肢があるとしたらどちらをとるか?と聞いたところ、6:4で後者のほうがいいと答えた人のほうが多かった。つまり勤務時間が短くなる(個人の時間が増える)よりもお金がたくさん貰える(個人の収入が増える)ほうが望ましいと考えている人のほうが多いということですね。

▼日本人だと、関心事の順番は「仕事・家庭・健康」となるかもしれない(とむささびは想像する)のですが、それは何十年も前のことですかね。それにしても、「勤務時間が短いけど給料は大したことない職場」と「給料は高いけど勤務時間が長い職場」を選ぶとしたら、あなたならどちらを選びます?
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極端すぎる、南北格差
日本の都道府県の中ででいちばん金持ちなのはどこか?と問われれば、日本人ならさしたる根拠もなく「東京」と答えるのではありませんか?同じことを英国人に聞いたら何と答えるか?当然、ロンドンがいちばんの金持ち(wealthiest)と答える(下のグラフ)。2番目は?と聞かれると、日本人は何と答えるのか?大阪?京都?神奈川?・・・「分からない」というのが正直なところなのでは?でも英国の場合は、ほとんどの人がイングランド南東部(South-east :ロンドンから南へ下ったところ)と答えるに決まっている。ここは「金持ちロンドン」の金融街などでしこたま儲けている皆さんや定年になった高級官僚らのベッドタウンです。
上のグラフは、英国人の間で「金持ち」であると思われているエリアに関するものです。実際に金持ちであるのかどうかは分からない。あくまでもイメージです。が、そうだとしてもこのグラフが示す格差はちょっと異常だと思いません?むささびが本当に異常だと思うのは、2位のイングランド南東部とそれ以下のエリアの間に存在する差です。イングランド南東部をロンドンのベッドタウンだと考えると、英国人の間におけるこの2エリアのリッチなイメージは圧倒的です。さらに言うと、イングランド以外の3地域がいちばん下に来ており、いちばん得点が高いのはスコットランドの1%だけ。ウェールズと北アイルランドは「0%」です。単なるイメージとはいえ、この格差は深刻です。こうなるとスコットランドでナショナリズムが高まるのも当然だと思いません?ウェールズとや北アイルランドの住人たちが「自分たちは英国ではない」という意識を持つのは極めて自然なことですよね。

▼英国の国名はUnited Kingdomとなっているけれど、イメージ上の経済格差だけを見てもとてもUnited(団結している)とは思えないですよね。日本人のイメージとして都道府県にこれほどのイメージ・ギャップを持っているでしょうか?

▼日本でいちばん金持ちなのが東京であることは、オリンピックなどというもの(アホな無駄遣いという意味)をやろうというのだから察しはつく。預貯金残高に見る日本の金持ち都道府県ランキングというネット情報によると、東京の次には香川県、以下徳島・富山・奈良・・・などと続くのだそうですね。むささびが暮らす埼玉県は30位だそうです。
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リストラの不安はないのに・・・
むささびが勝手に想像する日本人像によると、最も心配するのは職場をリストラされることなのでありますが、そのあたりについての英国人の感覚はどうなっているのか?
現在職に就いている人の中で「将来リストラされるかもしれない」という不安を抱いているのは3割で残りの7割は「近い将来のリストラはない」と考えている。この数字はどのように考えるべきなのか?The Observerは、全体的に雇用が安定している明るい傾向と見ている。また家計の将来についても向こう1年間で「良くなる」という人のほうが「悪くなる」という人よりもはるかに多い。

不思議なのは若い世代(18~24才)の感覚で、将来の家計状況が良くなると考えている人が57%にものぼっている。若年失業率が16.2%と全体の失業率(5.7%)よりもはるかに高い現状と矛盾するように思えるのですが、The Observerはこれ以上悪くなることはないだろうという気持ちの表れかもしれないと言っています。

リストラの心配で悩む人が意外に少ないと思われるのに対して、気になるのは現代の英国人が抱えている精神的不安の問題です。The Observerの記事は "mental health issue" という言葉を使っている。なぜ "mental illness"(精神病)と言わずに "issue"(精神衛生問題)などという持って回ったような言い方をするのか分からないのですが、要するに「うつ病」のような精神不安定状態のことです。
自分もしくは自分の周囲に「精神衛生問題」を抱えた人がいるとする人がほぼ半数にのぼっている。「無関係」より多いのです。この問題は年齢によってはっきり分かれる。The Observerによると若年層(18~24才)では32%がこれを身近に感じているのに対して、55才から上の場合はわずか9%となっている。長い未来が待っている人たちにはそれなりの不安があり、先が見えているような層には人生に対する開き直りや諦め感も強くてその分だけ図々しくなっているということなのでしょうね。

さらに精神衛生問題にも地域差がある。工業都市バーミンガムを中心としたウェストミドランズというエリアと北イングランドがともに30%台でかなり高い。この2つのエリアに共通しているのは、金融のようなサービス産業よりも工業が中心の経済構造になっており、その意味ではかならずしも「時流に乗っている」ような地域ではないということです。

要するに精神的な問題を抱えている人が多いということですが、にもかかわらずそれを「恥ずべきこと」(stigma)と考える風潮が未だに強い、とThe Observerは言っている。平均的には3割の英国人がそのように考える傾向にあるのですが、自分自身がその問題を抱えていると考えている人の場合はこれが5割以上に上るということです。「とくに問題にするようなことではない」とする人はわずか2%にすぎない。

▼精神的な問題点を抱えていることが「恥ずかしいこと」「忌避すべきこと」と考えてしまうということは、うつ病にかかるような人間は「弱い人間」であり、克服しなければならないという義務感めいたものにとらわれているということですよね。妙に肩肘を張って生きている人たちが多いということでもある。このあたりは日本と少し違う(というのはむささびの感覚かもね)。

▼「金に不安を感じる」とする意見がロンドンを中心とするリッチ・エリアに多いのに、うつ病のような精神不安を抱えている人はリッチとは思えないエリアに多いという現象はどのように解釈するべきなのか?むささびの推測と解釈によると「リッチな人たちの金にまつわる不安なんて、結局大したこっちゃない」となるのですが。
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左翼には辛い時代?
個人的な生活面ではそこそこ楽観的な数字が多いと思うのですが、個人の生活を超えて政治・社会の領域になると、ちょっと雰囲気が変わってくる。まず自分自身の政治姿勢を問われると、右翼も左翼も同じような数なのですが、「英国の政治状況はどうか?」と問われると「右翼的になっている」と答える人が非常に多い。
自分の政治姿勢はともかく英国全体として「右寄りになった」とする人の方が「左寄りになった」という人より圧倒的に多いのですね。注目すべきは「中道寄りになった」と感じる人の割合でしょう。この場合の「中道寄り」というのは(むささびの見るところによると)ほとんどの場合「左」だった人が真ん中寄りになったということです。ブレアの労働党の登場(1997年)がその始まりです。実はキャメロンは保守党を左へ寄せて真ん中にしようとしてきたのですが、保守党内の右寄りグループの抵抗にあっている。
上のグラフにある「差別」のうち「イスラム」は説明の必要がないですよね。人種差別は法的にはないことになっているけれど、昨今の移民反対の風潮がアジア人や黒人への差別意識を生んでいることは間違いない。現に数年前には暴動まで起こっている。性による差別についていうと、女性の国会議員の数は650人中148人だから約22%、日本の衆議院の8%(480人中39人)よりはましというところですね。

微妙なのは「階級差別」です。このグラフだけ見ると、「英国は階級社会だ」と思われるかもしれないけれど、実際に英国人に聞いてみると、自分を "middle class" と定義する人が37%、"lower middle class" という人が20%となる。英国における"middle class"を翻訳すると「経済的に恵まれた人たち」という意味であって、アメリカでいうような「中間層」とは少し違う。半数以上が自分を"middle class"だと思っている社会が、本当に「階級差別社会」と言えるのか?このグラフは文字通りには受け取れない。

ところでThe Observerによると、政治的な姿勢と精神病には関連性があるらしく、左翼的な人の4割以上がこれに罹っているのに対して右翼的な人の場合はわずか2割以下となっている。社会的な差別に対する敏感・鈍感も精神状態に関わっているかもしれない。

▼日本のメディアでは、右派・左派という表現を見なくなりましたね。昔は何かと言うと右・左論争だったように記憶しています。冷戦が終わってからこれが使われなくなったということですかね。一方、英国のメディアでは相変わらずこのレッテルを頻繁に使いますね。むささびの知識によると、終戦後(1945年)からサッチャー政権誕生前までの英国は基本的に「左翼的」だった。国民保健制度(NHS)がその象徴です。サッチャー以後は反対に「右」が主流になって現在に至っている。
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英国はヨーロッパではない!?
右傾化する英国にとって、この選挙後の最大の政治イベントは2017年に予定されている、EUへの加盟を続けるべきかどうかについての国民投票です。この国民投票は一昨年(2013年)キャメロン首相が「2015年の選挙で保守党が政権をとれば」という条件付きで約束したものだから、労働党政権が誕生した場合、理論的には国民投票をやらなくても構わない。では英国人自身はこの国民投票を実施すべきだと考えているのか?
英国人の大多数が国民投票を実施することに好意的です。これほどまでに差がついてしまうと、労働党が政権についたときに「国民投票は保守党政権が約束したものだから」と言って実施しないというわけにはいかない。そもそも英国人は自分たちのことをヨーロッパ人であると考えているのでしょうか?
英国人の多くが自分たちをヨーロッパ人であると考えておらずヨーロッパ大陸で使われている言語を使えるのは10人に2人と極めて少数なのですね。自分たちをヨーロッパ人だと思わないのだとしたら、英国人の地球規模での地域感覚はどうなっているのか?ヨーロッパに属していないのなら、どこに属しているというのか?大西洋を隔ててアメリカに属しているということ?こんな状態で2017年の国民投票を迎えたらどうなるのか?
「離脱」の意見がいちばん多いわけですが、「離脱」の46%の内訳は「絶対離脱」という強硬論者が28%で「多分そのほうがいい」(18%)という穏健派を圧倒している。要するにこの調査で見る限りにおいてはかなりの数の英国人がEU離脱を望んでいる。

▼反EUの急先鋒である独立党(UKIP)のファラージ党首は、なぜEUからの離脱を主張する根拠として最も熱を込めて叫ぶのが "self-reliance" という言葉です。独立独歩ということ。EUのような巨大な機関の歯車になるより自分の力を信じて独立を貫くほうがいい・・・聞こえはいいけれど、どこか情緒的ですよね。独立独歩でどこへ行こうというのか?なぜ「みんなで協力」ではいけないのか?

▼それにしても英国はEUから離脱して経済的にやっていけるのでしょうか?まず貿易を見ると、今年2月の対EU諸国への輸出額は110億ポンド、EUからの輸入額は179億ポンド、差し引き70億ポンドの赤字、つまりEU諸国からの輸入の方が多い。別の言い方をすると、EUの方が英国を必要としているということかもしれない。が、英国へ投資をしてモノを生産している外国企業はどうなるのか?トヨタ、日産、ホンダのようなところです。車だけとってもジャガー、ローバーなどすべて外国資本であり、彼らはEU市場に関税なしで輸出できるからこそ英国に立地している。それがEU域外からの輸入と見なされるのでは、何のために英国に工場を持つのか、投資先としての英国の価値が半減してしまう。というようなことはUKIPも承知の上ですよね。それでも「自立」とか「独立」に価値があると思っている・・・それを英国の有権者がどのように判断するのか?

▼この問題は単に「英国 vs ヨーロッパ」という風に考えるのではなく、大陸との付き合い方という意味で、「日本 vs アジア諸国」という図式の中でも考えてみたい。日本でも鳩山由紀夫さんらが「東アジア共同体」を唱えたことがありますよね。中国の指導層も似たようなことを言い始めている。ヨーロッパの言語を使える英国人は2割にも満たないというけれど、アジアの言語を使える日本人なんて何パーセントいるのか?英国にとって最大のパートナーであるアメリカは、英国のEU離脱は全く望んでいない。アメリカにとってEUとの架橋になれるからこそ英国にも存在価値がある。同じことがアメリカの対日視線にも言える(とむささびは思っている)。
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テレビは信頼、新聞には不信感
というわけで、これらの調査を総合すると、英国人はどちらかというと内向きな方向に進んでおり、それがヨーロッパに対する姿勢に示されていると言えます。最後にこれまでの英国社会において大きな存在感をもってきたと思われる「伝統的な存在」(institutions)に対する英国人の信頼感をリストアップすると次のようになる。
このグラフでは、「信頼している(+)」と「信頼していない(-)」の差を出し、+の大きい順で並んでいます。ダントツで信頼されているのが国民保健制度(National Health Service:NHS)です。これは「信頼」というよりも、存在の必要性ということです。第二次大戦直後に作られた医療の無料制度で、「揺りかごから墓場まで」(from cradle to grave)というキャッチフレーズで有名ですよね。

明らかに伝統的な存在であると思われるのに、なぜかこのリストではカバーされていないものに「教会」がある。「宗教」は調査の対象になっているのですが、毎週教会の礼拝に参加するか?という問いに対して3割が「する」で7割が「しない」と答えている。さらに「最近では、宗教は世の中にいい影響を与える存在にはなっていない」というテーマに対して6割が賛成で、反対の1割を大きく上回っている。イスラムとの対立も含めて宗教というものに対して懐疑的になっているということですね。

それから王室に対する態度は日本とはちょっと違いますね。総合点では3番目に信頼度が高いけれど、「信頼していない」という声もけっこうあるのですね。日本の皇室と違って英国人の王室に対する態度は無批判に平伏すというのではないからかなりさめているとも言える。

日本との比較で面白いのはメディアに対する評価です。「テレビニュース」に対する信頼感が高い割には新聞に対する評価が低いのですね。英国の場合、高級紙であれ大衆紙であれ、それぞれ政治色がかなり鮮明なのに対して、テレビは政治的には「中立」(impartial)が基本です。そのせいもあるのかもしれないけれど、テレビと高級紙の間の信頼度の差はほとんどショッキングと言ってもいい。

さらに「大衆紙」は、センセイショナリズムが売りという意味では日本の週刊誌にあたるかもしれない。となると、これと政治家の関係も面白い。新聞や週刊誌が政治家を叩きに叩くと国民の政治家への評価が落ちる。しかしそれでは大衆紙や週刊誌が「信頼」されているかというと、これもかなり情けない状態であるということです。政治家とメディアがビリ争いをやっているというわけですね。

▼英国で発行されている日刊紙の中で、最も発行部数が大きいのはThe Sunの186万部、2番目がDaily Mailで160万部、3番目がDaily Mirrorの90万部などとなっています。いずれもいわゆる「大衆紙」です。「高級紙」の世界では、トップがDaily Telegraphの48万、2位はThe Timesの39万、3位がFinancial Timesで21万などとなっています。

▼どの部数を見ても、これで政治的な影響力なんてあるのだろうか?と思えてしまうような数字ですが、これはいずれも「紙」として売れている新聞の部数です。英国の新聞は完全にネット時代になっており、広告収入もウェブサイトによる収入が紙媒体を上回っている。ネットの世界では、読者はあまり政治性にはこだわらないですよね。保守党びいきの人でもGuardianのサイトは読むのだから。つまりいろいろな新聞を読む読者が増えているというわけで、政治的な偏りは昔ほどではないことは確かでしょうね。


▼新聞社が主宰するニュースサイトのデザインを日本と英国の新聞で比較して見てください。日本の新聞社のデザイン感覚はどうなってんの?と言いたくなる。読みにくいこと夥しい。おそらく日本の新聞人たちは、新聞といえば「紙」と思っているということでしょうね。
朝日新聞 Guardian
毎日新聞 The Independent
読売新聞 Telegraph
東京新聞 Daily Mail
産経新聞 The Times
日本経済新聞 Financial Times
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世論調査に見る職業別信用度
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で、結局、選挙はどうなるのか?
いまの英国は、およそ以上のような精神状況にあるわけです。で、選挙はどうなるのか?下院の議席数は650だから単独政権を作るためには326議席を獲得する必要がある。政治の世論調査で有名なYouGovの予想(下のグラフ)によると労働党が議席数ではトップ(278)になるけれど、単独過半数には48議席足りない。スコットランド民族党(SNP)と連立を組んでもまだ2議席足りない。それを緑の党(Green)と「その他」から1議席をとるとようやく過半数にはなる。
しかし労働党の内部ではラディカル左翼風で、スコットランドの独立を志向するSNPと連立を組むことへの抵抗は強い。ミリバンド党首もSNPに対しては否定的なコメントを出してきているので、いまさら連立というのは難しい。となると労働党を少数与党として政権を作るしかなくなる。そういう状態を英語で "hung parliament" と言います。実は前回(2010年)の選挙もそういう結果だった。そしてキャメロンの保守党が自民党と連立を組んだわけです。

そうなると政治が不安定化する。それを嫌って有権者が保守+自民+その他の連立の方が望ましいと考える可能性もある。となると人間的には人気があるキャメロン率いる保守党に票が集まる可能性も・・・要するに全く分からないということです。

▼ちなみに賭け屋の最大手、Ladbrokesの予想によると、保守党の単独過半数は6倍、労働党は33倍の賭け率となっており、保守党の勝利の方が可能性が高いと見ているのですね。緑の党の過半数獲得は1000倍、UKIPは250倍となっている。大穴で儲けたいのなら、いまがチャンスであります。
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英国政治の輪郭が変わる?
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むささびの鳴き声

▼5月7日の選挙の行方が全く読めないとされるのは、保守党と労働党の二大政党がかつてのような圧倒的な力をもたなくなっていることに原因がある。それは人びとの考え方や生き方の多様化の反映である・・・なんてことは政治家の皆さんは知っている。それまでのやり方が通じなくなっているけれど、どうしていいのか分からない。

▼話が飛ぶようですが、ボルチモアの暴動に立ちすくむしかないアメリカも同じですよね。黒人の大統領まで誕生させて、「アメリカは民主主義の本家だ」とアメリカ人自身が思っていたはずだから。実は日本も同じで、本来なら首相になどしてはいけない人物のやりたい放題の前で立ちすくむしかない。我が党にはいろいろな意見の人がいるのですよ・・・かつての自民党の人たちはそのように言って胸を張っていましたよね。でも今は何も聞こえてこない。中国・原発・津波・地震・安倍晋三という「脅威」を前にして立ちすくむだけということですね。
▼いまから約30年前に "100% BRITISH" という本が出版されて話題になったことがあります。「話題」といっても、ちょっとした娯楽本に過ぎないのですが、発想が非常に面白いと(むささびは)思いました。英国で行われるアンケート調査の類を徹底的に調べて、英国人の気質や生活習慣を1%から100%までの数字で表したものです。

▼以下はその本からの抜粋ですが、この本が出たのが1988年である点にご注目を。1979年に首相として登場したマーガレット・サッチャーが、いわば英国の「右傾化」路線を突っ走って8年目を迎えた年であるということ。この2年後には人頭税の導入を強行しようとしたサッチャー首相がついに退陣に追い込まれることになるのですが、英国全体としては労働党が影の薄い存在となっていた時期であるということです。

1% お風呂でセルロイドのあひるのおもちゃで遊ぶという男の成人
5% 人生の現実(facts of life)を父親から学んだと思っている女性
10% 自分の子供が自分たちよりも上流階級と結婚することに戸惑いを覚える母親
→階級を意識する英国人はごく少数であったということです。
15% 政治家こそは良きマナーの模範者であるべきだと考える英国人
20% 二日酔い(hangover)を醒ますために酒を飲むと言うウエールズ人
25% 自分の息子には消防隊員になってもらいたいと思っている母親
30% 極右政党を支持するという若者
→サッチャー路線の成果!?
 35% 同性愛を認める独身聖職者
40% 男性から平等に扱われていると感じている女性
45% 脱税しても構わないと思っている若者男性(15~20才)
→じつはこれもサッチャー流「個人主義」の落し子だった?
50% 自分の足の毛を剃るのに夫のカミソリを使う女性
55% 人間よりペットの方が素晴らしい仲間だと考えているペットオーナー
60% ロマンスに飢えていると感じている女性
65% 発展途上国は英国の真似などしない方がいいと考えている10代
70% 死後の生命を信じている英国人女性
75% 有権者からの手紙が自分の考え方に影響すると答える国会議員
80% 星占いを信じる英国人女性
85% 児童に同性愛者と異性愛者は平等だと教える学校を支持しない英国人
→いまでは信じられない。
90% 選挙には必ず投票するという英国人女
95% 自社への就職を希望する若者がネクタイをしめているかどうかを気にする経営者
100% ネクタイはその人の育ちと教養を示すと考えているロンドンの証券マン

▼長々とお付き合いをいただき有難うございました。
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