musasabi journal

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 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
531号 2023/7/2

この写真はニューヨークのグランド・セントラル駅なのですが、撮影されたのが1929年~30年のいつかなのだそうです。要するにグランド・セントラルもこの時代には駅の窓から自然の日光が差し込んでいたけれど、それ以後は周囲のビルディングが立て込んでこのような光が差し込むことはなくなったということ。それにしても見事な写真ですよね?

目次
1)スライドショー:ロンドンの犬たち
2)再掲載:実力主義社会は住みにくい
3)再掲載:むのたけじと憲法9条
4)久しぶりです、ブレアさん!
5)どうでも英和辞書:liveability
6)むささびの鳴き声
7)俳句

1)スライドショー: ロンドンの犬たち

今年5月末の「むささび」(528)でアラン・シャラー(Alan Schaller)という写真家による、ロンドンをテーマにしたモノクロ写真集を紹介しましたが、今回もまたアラン・シャラーのモノクロ写真で舞台がロンドンであるということでは前回と同じです。決定的な違いは主人公が人間でもなければ建物でもなくて、ワンちゃんであるということです。ロンドンの町を犬たちを片っ端から撮りまくったものなのですが、それほどドラマチックな作品ではなくて、正に「どこにでもいそうな」ワンちゃんばかりで、その意味ではロンドンっ子の写真と同じ。ただ…何故か飽きないのでありますよ!

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2)再掲載:「実力主義社会」は住みにくい…

むささびジャーナルをやり始めたのが2003年だったのですが、第3号に「英国人の対米感覚」という記事を載せたことがあります。保守派のオピニオンマガジン "Spectator" が掲載していたもので、実力主義のアメリカと「階級主義」の英国を比べながら、いわゆる「実力がモノを言う社会」は本当に人間にとって望ましいのかということを問いかけている。書いたのはトビー・ヤングという保守派を代表する評論家です。20年前の記事ですが、それほど古ぼけた気がしない。

再掲載:英国人の対米感覚
「実力主義社会」は住みにくい


むささびジャーナル第3号 2003年3月23日)

英国という国に大して興味のない人にとってはどうでもいいことでしょうが、英国は「階級社会」であると言われています。詳しいことは英国という国で暮らした経験がないので私自身にも分りませんが、例えば「労働階級」(working class)とか「中産階級」(middle class)などという言葉が日常的に使われているところを見ると、やはり今の日本にはない「階級」と呼ばれるものがあるんでしょうね(日本が階級のないフェアな社会であると言っているのではありませんが)。middle classという言葉はアメリカにもある筈ですが、working classというのはないと思う。またアメリカ人の言う "middle class" は文字通り「中間層」のことですが、英国人がこれを言う場合は、「富裕層」という意味の場合が圧倒的です。そして大体において英国のmiddle classは政治的には保守的です


その英国で特にmiddle classの人々に読まれている週刊誌The Spectatorは英国の保守的な人々の考え方を知るのには非常に参考になります。古い話で申し訳ないのですが、2000年7月8日号にDOWN WITH MERITOCRACYというエッセイが掲載されていました。MERITOCRACYは「実力主義」という意味ですから、このタイトルは「実力主義反対!!」という意味になる。このエッセイはアメリカで暮らした後、英国へ帰国したばかりのToby Youngという英国人が書いたもので、次のようなイントロで始まっています。
  • Toby Young says that a society based on class is kinder and gentler-and more generous to those who fail-than one based on ability alone...
英国とアメリカを対比して前者を「階級社会」、後者を「実力主義・能力中心主義社会」と定義し、英国のほうが「失敗者に対して親切で優しく寛大」であると主張しています。アメリカ社会では能力と実力のある人が尊敬されるのに対して、階級社会の英国ではどの家柄の出身なのかが問題にされる。どのような家柄の出であろうと実力があって一生懸命努力することによって社会で成功者となる…これがアメリカン・ドリームというものだろう。それに対して英国の場合は、家柄によってその後の人生が決まってしまうようなところがあり、人生とは宝くじみたいなもの、自分の努力でどうなるものでもないという考え方が定着している(とこの記事は言っています)。


アメリカでは実力とハードワークによって成功者として尊敬を集めるが、その裏返しとして「失敗者」は能力もないし努力もしなかったヤツとして、世の中のツマハジキ的存在に成り下がってしまう(とこの筆者は言う)。それにひきかえ「人生とは宝くじみたいなものさ」という考え方に立つ英国では、失敗者(例えば職を失った者)はたまたま運が悪いだけで人格とは関係ない。世の中どのみち不公平なものなのだ、失敗したからってアンタが悪いんじゃない…というわけ。

筆者の結論は「"完全にフェアな社会"などというものはこれからもできっこない。それが分かっている英国の方が、いわゆる"成功者"でない人にも住みやすい社会だ…"というわけであります。 どう思います?Life is unfairという「達観」よりもit could be fair if you try(努力すれば何とかなる!)という真面目さの方が単純な意味で説得力はあるけれど、肩も凝りますね。何事も一つの例だけに基づいて結論づけることはできないので、Spectatorのこのエッセイだけで英国の保守的な人たちの考え方の全てを知ったような気になるのはよくないのですが、ブレア首相を始めとする「新しい英国」を推進する人たちが最も嫌っているのが、この種の考え方であることは間違いありません。

▼この筆者が否定している "meritocracy" を日本語的に言い換えると「メリット中心主義」ということになるけれど、「メリット」とか「デメリット」とかいうカタカナ英語では「強み」「弱み」という意味しか伝わってこない(と思う)。辞書によると "meritocracy=quality of being good and deserving praise" と説明されているのですが…。要するに人間が人間の価値を決めようとする態度に問題があるということなのか、な?

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3)再掲載:むのたけじと憲法9条

ジャーナリストのむのたけじさんが2016年8月21日に亡くなって7年になる。生まれ(秋田県)たのが1915年、ということは101才まで生きたということだ。すごいですねぇ!むささびジャーナルが彼について書いたのは2008年で、143回目のときだった。93才になっていた彼が『戦争絶滅へ、人間復活へ』という岩波新書を出したばかりだった。正確に言うと、この本は、むのさんより約40も年下のノンフィクション・ライター(黒岩比佐子さん)がむのさんにインタビューを して、いろいろなことについての発言を引き出すという形をとっています。

『戦争絶滅へ、人間復活へ』

むささびジャーナル第143号 2008年8月17日

むのさんは私(むささび)よりも26才年上です。広島・長崎に原爆が落とされ、第二次大戦が終わった昭和20年(1945年)、私は 4才、むのさんは30才だった。今年(2008年)7月に出たばかりの本の広告を見て、すぐに本屋さんへ行きました。むささびが知りたかったことは二つです。一つはむのさんが日本の憲法第9条をどのように考えているのかということであ り、もう一つは、朝日新聞を辞めて『たいまつ』という週刊新聞を自分で出すということまでやってしまったこの 人が、ジャーナリストという職業をどのようなものと考えているのか、ということでありました。

まず憲法9条ですが、むのさんは、その二つの性格に目を向けるべきだと言っています。一つは、それが侵略戦争 をやって沢山の人を殺した加害者である日本に対する「裁き」として、アメリカから与えられたものであるという性 格です。ならず者国家である日本から武器を取り上げて二度と使わせないようにしようというものであり、日本を 国家扱いしていない屈辱的ともいえるものだということです。しかし憲法9条にはもう一つの性格がある、とむのさんは言います。
  • 人類が生き続けていくためには、戦争を放棄したあの9条の道を選択する以外にないといえる。だから憲法9条を 良いほうに考えると「人類の道しるべ」だということもできる。
つまり日本にとって屈辱的なものではあるけれど、人類全体にとっては「平和への道しるべ」ともなりうる性格を持 っている、というわけです。憲法第9条の「二重性」とはそういう意味です。ところが(むのさんによると)終戦直後 の日本は全くの壊滅・放心状態で、戦争の辛さ、苦しさ、悲しさから解放された当時の日本人(特に進歩派の人々) は、この憲法を「神様の御幣」のような立派なものとして祀り上げてしまった。

  • 本当なら、憲法9条が連合軍に宣告された死刑判決だという屈辱と、日本がみずから再生を図るための輝かしい 道しるべという理想の両方の面を、突き合わせなければならなかった。その上で初めて、日本人は今後どういう生 き方をし、人類に対してどういう呼びかけをしていくべきかという苦闘が始まったはずです。そういう議論を、あ のときしなければならなかった。
むのさんはまた終戦直後の日本人の放心状態だけでなく、連合軍の極東裁判にも問題があったと言います。すなわ ち、あの裁判では「戦争が終わったときに大臣をやっていたような人たち」だけが裁かれて、「最初に戦争を始めた 人たち、満州事変を起こした人たち」は全く放置されてしまった。で、戦後もその部分を残したままアメリカの要 求に沿って自衛隊を持つにいたった。

いまや日本は軍事予算という点では「軍事大国」になってしまっているのですが、むのさんは、秋田県横手市で「自 衛隊には一人も行かない町を作ろう」という運動を始めているのだそうです。自衛隊に行かなくても「ママ(おまん まのこと)食える郷里を作ろう」というのですが、兵器はあっても軍隊に入る人がいない、という状態にしようとい うわけであります。

以前にもむささびジャーナルで触れたのですが、イラク戦争とベトナム戦争の違いは、後者を戦った米軍は徴兵 制に支えられていたけれど、イラク戦争は志願制ということ。ベトナム反戦運動は、当時の学生たちが徴兵制にさ らされていたから起こったけれど、イラクの場合は恵まれない家庭の子弟が「おまんまを食うために」参加すること で成り立っている。だから反戦運動が起こりにくい状況になっている。学生たちは反戦運動をやるかわりに、シリ コンバレーでおカネ儲けをしているというわけです。

むのさんによると、戦争が終わった1945年から1960年までの15年間、「人殺しなどは少なかったはずです」とのこ とです。何故ならみんなとくにかく食うことに一生懸命だったからだ、ということです。この点、作家の半藤一利 さんが、今年の8月8日付けの日経新聞の夕刊で同じようなことを言っているのは興味深い。半藤さんは次のように 語っています。
  • 戦後日本人が一生懸命働いて豊かになり、世界に誇るに足る国をつくり上げることができたのは軸があったから です。それは平和主義、平和憲法だったと思います。


私(むささび)が『戦争絶滅へ、人間復活へ』という本を読む気になったもう一つの関心である、むのたけじという人がジャー ナリズムをどのように考えているのかということですが、彼は次のように言っています 。
  • ジャーナリズムとは何か。ジャーナリズムの「ジャーナル」とは、日記とか航海日誌とか商人の当座帳とか、毎日 起こることを書くことです。それをずっと続けていくのが新聞。それは何のためかというと、理由は簡単で、いい ことは増やす、悪いことは二度と起こらないようにする。ただそれだけのことなんです。
つまり、新聞記者とかテレビ・ジャーナリストのような人たちには「いいこと」「悪いこと」という価値判断のような ものが求められると言っている(と私などは解釈します)。日本の新聞は800万部とか1000万部とかいうように発行部 数が非常に大きいのですが、むのさんによると、それは「新聞にとって本当に危険なこと」なのだそうです。

たくさん売ろうとすれば、個性を薄めなければ生きられない。それは読者がいない、ということと同じで、自己 主張できないということです。

確かに日本の新聞やテレビは、いわゆる「政治的中立」ということを金科玉条のごとく標榜していますね。むのさん の表現を借りると「与党と野党の主張を、両方紹介して、足して二で割って、ちょっと砂糖をまぶして・・・」とい うことで、結局「何だか分からない状態」になる。「まったく自己主張というものがない。そんな状態で反戦など と言えますか」と嘆いている。
  • むささびジャーナルの『どうでも英和辞書』で "journal" のことを書きました。私、そ の際には、むのさんの言う「自己主張」については全く意識にありませんでした。が、このように言われてみると、 新聞やテレビは単なる「掲示板」以上のものが要求されているのに、それには全く応えていないということは言え るかもしれないですね。「自己主張=偏見」と思い込んでいるのかも?
  • ただ自己主張のなさはマスコミだけのことではなくて、それ以外の世界にもあるように思えませんか?「自分は こう思う」ということを言ってしまうことへの逡巡のようなものです。それを言葉で定義すると、間違うことへの 恐怖感となる。なぜ間違うことが怖いのかというと、自分が口に出すことは絶対に言い直しがきかないと思い込ん でしまうから。なぜそう思い込むのか、よく分からないけれど、自分の考えは間違っている可能性があるという ことを認めたうえで、それでも何かを言うことが、自由で新しい発想への入り口であることは間違いないし、偏見 に陥らない自己主張も可能になる。「とりあえず言ってみよう」の精神ですな、必要なのは。
 
▼知らなかったのですが、むのたけじは「武野武治」が本名なのですね。彼の言葉に
  • 「ジャーナリズムとは、歴史の日記。過去に何があって現在に至っているのか。何をやって、何をやらなかったのか。人間の歩みを伝えるのが、私たち古い世代の仕事なのだ」
というのがあるのだとか。

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4)久しぶりです、ブレアさん!

7月1日付の日本経済新聞のサイトに、英国のトニー・ブレア元首相とのインタビューが出ています。英文の日経と日本語の日経の両方のサイトに同じインタビューが出ているのですが、見出しが全く違う。
日本語では「ウクライナ戦争が第三次世界大戦に繋がることは決してない(させない)だろう」と言っているけれど、英文では「ロシアによる核の脅威を食い止めるのは中国だろう」と言っている。それぞれの読者の関心を考慮してのことなのですかね。むささびは日本語版にこだわってブレアさんの主張のポイントと思われる部分のみピックアップしてみました。


ブレアの主張の最大のポイントと思われるのは、ウクライナ戦争が世界的な規模の戦争にまで拡大する可能性について語っている部分で、その可能性は低いと言っている。
  • 「罪のない国家を大国が侵略する時代は、終わったと思われていた。それだけに、世界中が衝撃を受けている。一方で、各国は戦争の影響を限定的にとどめようと懸命に努力し、ほぼ成功している。ウクライナの人々にとって大変な状況であることは言うまでもないが、今回の紛争が限定的にとどまることに望みを抱いている」
この「紛争が限定的にとどまることに望みを抱いている」の部分は実際には
  • "reasonable grounds for hope" that Russia's invasion of Ukraine will not trigger a third world war.
と言っている。そのような「望み」の根拠となっているのが中国の存在のようです。
  • 「中国すらも、ロシアが核兵器を使用しないよう訴えている。紛争が世界的な戦争に発展することは、全く利益にならないと中国も考えているのだろう」
ブレアによると
  • I think China does not believe it is in its interest at all for this to slide towards a global conflict.
となる。


自分たちの利益を最優先に考える中国にとって、ウクライナ戦争が世界規模の戦いになることは全く利益にならないと考えている…というのがブレアさんの発想のようです。ブレアさんによると、21世紀の欧米諸国にとって最も重要な課題は「中国との係わり:stay engaged with China」なのですが、そのために欠かせないのは「強くなければならない:we're strong enough」ということ。それによって中国との関係でどのようなことが起こっても対処することができる、と。

ブレアさんによると、中国が台湾を侵略することはないらしいのですが、その根拠はアメリカが北東アジアにおいて築きつつある同盟関係で、それが中国とのトラブルを避けるための「ガードレイル:guardrails」のような役割を果たす、と言っている。

▼このインタビューは日経の「コメンテーター」である秋田浩之さんという人が行っているのですが、秋田さんによると、インタビューの間、ブレアの「表情が曇り、口ごもった」ことが2度あったのだそうです。まずは第三次世界大戦の危険について語った時で、現在の紛争がウクライナ国内に限定されることに「望みを抱いている」("reasonable grounds for hope")と言ってその話題を切り上げようとしたのだそうです。ブレアにとって第三次世界大戦が起こらないのは「精緻な論理より、強い感情が先行した発言に思えた」と記者は言っている。

▼もう一回、ブレアの表情が曇ったように見えたのは、イラク戦争の良し悪しを話題にしたときだった。イラクの独裁者とされたサダム・フセインが大量破壊兵器を隠し持っているという理由で、ブレアの英国、ブッシュの米国がイラク爆撃を開始したはずなのに、肝心の大量破壊兵器がついに見つからなかった。それが理由でブレアは政治生命を絶たれたと言ってもいいくらいのダメージを受けたのですよね。秋田浩之さんはそのあたりのブレアの態度について、日本語では次のように記している。
  • イラクの独裁政権を倒したのは正しかったと信じつつ、なぜ情報収集を誤ったのか、今も自問しているように感じた。
▼で、この部分(ブレアが口にした言葉)は英文では次のように書かれている。ちょっと長いけれどそのまま紹介してみます。和文はむささびの制作です。
  • "It's always difficult to go back with hindsight. But I always say to people there are many things we would have done differently. But I still think that ultimately, in the Middle East, the removal of Saddam Hussein was an important thing to do." あと知恵で過去のことを語るのはいつも難しい。が、私がいつも皆に言うのは、「違うやり方もあったかもしれないな」と後から思うことはよくある。が、中東問題に関する限り、サダム・フセインを追放したことは重要だった、と伝えている。
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5)どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら
liveability:住みやすさ

上の写真はオーストリアの首都・ウィーンです。6月21日付のThe Economistのサイトに「2023年版世界一住みやすい町:The world’s most liveable cities in 2023」というデータ集が掲載されています。同誌の関連機関である Economist Intelligence Unit (EIU) が毎年まとめる、世界の173都市に関するデータ集で、2023年のデータによると、最も住みやすいのはオーストリアのウィーン(上の写真)、最も住みにくいのはシリアの首都ダマスカス(写真下)であるとなっている。
今回のランク作成にあたってEIUではそれぞれの都市について「安定性:stability」「保健制度:health care」「文化・環境:culture & environment」「教育:education」「インフラ:infrastructure」の5項目についての充実ぶりを採点している。EIUによると、一時は何をとってもピンチだったコロナ禍による生活の質の低下現象からは「完全に抜け出している:fully recovered」と言っている。

下のグラフはEIUの調査によるそれぞれの町の「住みやすさ」のスコアなのですが、ウィーンの総合平均点が98.4なのに対して、ダマスカスのそれは30.7と状況は厳しい
今回のランク作成にあたってEIUではそれぞれの都市について「安定性:stability」「保健制度:health care」「文化・環境:culture & environment」「教育:education」「インフラ:infrastructure」の5項目についての充実ぶりを採点している。EIUによると、一時は何をとってもピンチだったコロナ禍による生活の質の低下現象からは「完全に抜け出している:fully recovered」と言っている。

ランキングの全てが公開されているわけではない。日本について言うと「大阪」が第10位に入っているけれど、東京は出ていない。ロンドンは46位、ニューヨークは69位だそうです。EIUによると、この国際調査は世界を舞台にビジネスを展開するビジネスマンたちが、自分の新しい勤務先がどのような環境下にあるのかを知るため(to help companies calculate hardship allowances for staff)としているのですが、中にはこの種のランキングを見ながら自分の出身地についての優越感に浸りたがる人たちもいるようだと言っている。

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6)むささびの鳴き声
▼むささびジャーナルのようなミニコミ誌を作っていて有難いのはグラフの存在です。言葉に代わって「図」がストーリーを語ってくれる。ただグラフにも弱点はある。それなりのサイズで使わないと何を示しているのかが分からない。例えば上の棒グラフはアメリカ人の中で動物を食することに抵抗を感じる人の割合をしめしている、というのですが、左から、食することに抵抗が大きい人が多い順に「チンパンジー・イヌ・ネコ・イルカ・ウマ・タコ・シカ・サーモン・ウシ・ニワトリ」と並んでいる。一番抵抗が大きいのがチンパンジーで小さいのがニワトリ(チキン)というわけ。

▼このグラフを紹介するStatistaというサイトによると、現在スペイン領のカナリア諸島でタコを食料として調理する施設の建設が進められているのですが、これについては動物保護団体などからの反対の声が大きいのだとか。タコは「知覚力:sentient」が豊かな動物で、喜び・悲しみ・痛み・ストレスなどを感じることができる、そんな生き物を殺すなど「とんでもないこと」というのが彼らの意見なのだそうです。

▼アメリカにはこのような「慈善家」が多いと思うけれど、このグラフに見る限り、タコ保護論者は全体の24%にすぎないらしい。グラフの基になった調査は英国の世論調査機関であるYougovが行ったとのことです。


▼ついでにグラフをもう一つ。上に掲載したのは、アメリカ人が最も好んで飲む「ビン入りの水: bottled water」のリストです。上から順に飲料水(63%)・コーヒー(57%)・ジュース(50%)・紅茶(48%)・エネルギー飲料(27%)・ビール(25%)・ワイン(24%)というわけです。つい最近知ったことなのですが、彼らは(大人も子どもも)普通の飲料水とくればペットボトル入りのものを飲むんですね。つまり駅のホームにある水道の水なんて、あり得ない。もちろん家庭にある水道の水も…。暮らしにくいハナシじゃありませんか。

▼ダラダラと退屈極まりない話ばかりで申訳ない。もう7月なんですね。あ、それと、7月5日はむささびの誕生日、どうでもいいけど82なんです!。

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