musasabi journal

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 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
540号 2023/11/5

540回目を迎える「むささび」ですが、これを作るために使っているホームページビルダーというソフトウェアが何故か故障状態になってしまいました。メーカーに電話をして何とか修復できたのですが、果たしてうまくいくかどうか…ちなみに上の写真はヒマラヤ地方で暮らすネパールの子どもだそうです。

目次

1)スライドショー:Scotlandを感じる
2)再掲載:宗教教育で無神論を教える
3)ネタニエフの失策
4)再掲載:P. ケネディが予想した2031年の世界
5)どうでも英和辞書
6)鳴き声
7)俳句

1)スライドショー: Scotlandを感じる

あなたはスコットランドへ行ったことあります?むささびはたった一度(それも一泊)だけ行ったことがあります。このスライドショーの舞台はそのスコットランドです。ご存じのとおり、英国(UK)という国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの「国:nation」から成っています。人口の大きい順で言うとイングランド(約5650万)、スコットランド(約540万)、ウェールズ(310万)、北アイルランド(200万)ということになる。

今回のスライドショーは "Feel Scotland" というタイトルになっています。使われている約15枚の写真は、どれもBBCのサイトから拝借したものなのですが、撮影したのがいずれも現地のスコットランド人で、プロの写真家は殆どいない。いずれも自分のカメラを使って、自分の感覚で、自分が気に入っているスコットランドを撮影しています。息をのむような景色は出てきませんが、それでも「身を置いてみたいなぁ」と思ってしまうスコットランドです。

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2)再掲載:宗教教育で無神論を教える

ガザをめぐるイスラエルとパレスチナの対立は、世界中で宗教とか信仰などの問題に議論を深めていると思います。特に英国のように実に様々な思想・宗教が混在しながら自己主張をしている社会においては、です。最近の世論調査によると、自分が何らかの宗教グループに属していると考える英国人(イングランド人・ウェールズ人)は次のようになっている。
 
で、約20年前にむささびジャーナルが生まれて間もないころの号を見ていたら『宗教教育で無神論を教える』という見出しの記事がありました。2004年2月22日の第27号です。「無神論」と言えば宗教そのものを否定する姿勢のことですよね。それを「宗教教育」の中で教えるのですか…?というのがむささびの反応なのですが、考えようによっては、それ自体が如何にも英国人らしい姿勢のように思えるので、この際もう一度読んで見ることにしました。よろしくお付き合いを。

なおこの記事で触れられている情報はあくまでも「20年前の英国」に関連するものであることをお分かりください。

再掲載:宗教教育で無神論を教える

むささびジャーナル第27号(2004年2月22日)

英国では公立の小中学校は「宗教の時間」を設けることが義務になっています。実際にどのような授業が行われているのか、残念ながら私自身は知りませんが、政府発行の参考書によると「教科概要はいずれもキリスト教を反映したものでなければならない(Syllabuses must reflect Christianity)」とされています。

尤もこの後に「英国で実践されている他の宗教の教えも考慮に入れること」(while taking into account of teachings and practices of the other principal religions represented in the UK)という但し書きがついているところが、折衷的で如何にも英国的といえるかもしれません。


然るに英国においては教会に行く人の数がぐんぐん減っています。今から20年前の1980年の調査では毎週教会へ行くのは全体の19%であったのが、最近(1999年)の調査では7%にまで落ち込んでいる。つまり英国は限りなく無宗教社会になりつつあるとも言えるわけ。 このような矛盾した状況を反映してか、最近になって「宗教の時間では無神論も教えるべきだ」という動きが出ています。

授業内容を決める機関であるQualifications and Curriculum Authorityが進めている計画がそれで、いわゆる宗教(キリスト教、イスラム教、仏教など)ではないが「思想」(non-religious beliefs)と呼ばれるものを授業で教えるということです。無神論もその一つですが、ヒューマニズムとか不可知論(人間は感覚的に経験する以上の事は知ることができないという主張:agnosticism)なども入る。宗教教育(religious education)という言い方を止めて「宗教・哲学・道徳教育」にする方針なのだとか。


「道徳や哲学を教えるのに聖書の言葉など教えても最近の子供らは受け付けない。道徳を教えるのなら現在の具体的な例に沿って教えないと・・・」というのが、この動きを進める人達の意見。殆ど無宗教社会といっても今日の状況からして宗教教育そのものがナンセンスという声もあるのですが、「宗教・哲学・道徳教育」推進派も宗教そのものを学校から排除することには批判的で「却って宗教間のあつれきや偏見を助長するだけだ」としています。

なお現在の宗教の授業の場合、両親は自分たちの宗教を理由に子供を欠席させる権利も有しているのだそうです。それも「神の存在を信じない」という無神論も教えるとなると、子供たちを欠席させるだけの理由もなくなるわけです。


▼ロンドンのキングス・カレッジが今年(2023年)5月に行った世界23カ国の人びとの調査によると、「神の存在を信じる」という英国人は50%で、「信じない」という人の48%とほぼ同数だったそうです。「信じる」が50%というのは23カ国中の18番目、英国以下の国としては、ノルウェー、韓国、日本、スウェーデン、中国となっています。最下位の中国では「信じる」が17%だったのえすが、トップのフィリピンでは「信じる」が100%だった。

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3)ネタニエフの失策

10月20日付のドイツの週刊誌 Der Spiegel の英文サイトにエフード・バラク(Ehud Barak)という人とのインタビューが掲載されています。 Der Spiegel の説明によると、この人はイスラエル独立党という政党(野党)の党首、1999年~2001年には首相も務めた政治家なのだそうです。1942年生まれでネタニヤフ首相の対パレスチナ政策には大いに批判的で、このインタビューにも
  • ネタニヤフはイスラエルの歴史上犯された最悪の失策に対する責任を負っている "Netanyahu Bears Responsibility for the Biggest Failure in Israel's History"
という見出しが付けられている。むささびは、このインタビューの一部を紹介しますが、原文(英語)はここをクリックすると読むことができます。

  • DER SPIEGEL: ガザからのテロ攻撃があった10月7日、あなたはどこにいたのですか?

Barak: 仕事の関係でニューヨークにいたが、第四次中東戦争(Yom Kippur War:1973年10月6日 – 10月25日)の50周年記念会議にも出席してスピーチをすることになっていた。そこへ友人から電話があり、イスラエル南部にひどいテロ攻撃があって多くの死者が出ているとのことだった。あれは単なるテロリズムではなく、イスラエルという国を根底から揺るがす攻撃だったと言える。
  • DER SPIEGEL: 「根底から揺るがす攻撃」とはどういう意味ですか?

Barak: イスラエルという国は、ユダヤ人が安心して暮らせる場を提供するべく作られたものだ。政府は彼らの生命を守らなければならないのにそれができなかった。イスラエルという体制ができて以来最も厳しい一撃だったのだ。This is the heaviest blow we suffered since our existence.
  • DER SPIEGEL: イスラエルには強力な軍隊と優れた情報網が存在しています。このようなことがなぜ起こるのですか?

 

Barak: 我々の情報網、軍隊、政治等などにおける最悪の失態であったということだ。ネタニヤフと彼の右翼政権は長年にわたってハマスを助けてきたのだ。カタールからの資金がガザへ流入することを助けてきた。彼には彼なりの作戦というものがあった。ハマスが存在する限りにおいてネタニヤフは「パレスチナ人と交渉など不可能」と主張することができたし、パレスチナ政府のトップであるアッバス大統領は国民の半分も支配できていない。ハマスはテロ組織であり、話し合うことなどできない。その一方でネタニヤフはWest Bankを支配して、より穏健派といわれるパレスチナ政府の弱体化に力を注いだ。パレスチナ人による国家の誕生を何としてでも防ぎたかったということだ。 
  • DER SPIEGEL: ネタニヤフは内政面でも失敗が多かったですね。

Barak: ネタニヤフは司法面での改革を進めたことになっているが、実際には自分の訴追を免れるためのクーデターを実施したようなものだった。「何もかもぶち壊してしまった人間に修繕は無理」(The person who destroyed everything can't fix it.)というけれど、ネタニヤフには正にその言葉が適用される。 
  • DER SPIEGEL: 首相(ネタニヤフ)は汚職の疑いで訴えられていますね。いずれも否定してはいますが。それでも彼は首相であり続けることが許されていますね。

 

Barak: 他の国ならそのようなことは許されないはずだ。ネタニヤフについては、もう一つおかしなことがある。17年も前のことだが、彼は当時は野党のリーダーだった。当時は首相だったエフード・オルメルトがレバノンにおける戦争に巻き込まれてしまった(stumbled into a war in Lebanon)。オルメルトは大いに批判されたのだが、野党党首のネタニヤフはオルメルト首相について「(イスラエル)を回復不可能な状況にまで追い込んでしまった人物(The person who destroyed everything can't fix it)であると批判した。同じことが今のネタニヤフについて言えるのだ。 
  • DER SPIEGEL: それでも彼は首相の座に坐り続けている。

Barak: そのとおりだ。が、数日前に緊急臨時政府というものが出来上がり、その中にはかつての防衛大臣や政権幹部も含まれおり、その意味では国民(や兵士たち)の信頼を得ていると言える。その意味ではかつてのような問題はないと言えるかもしれない。
 
▼ガザを実効支配しているのがハマスなら、北部レバノンではイラン寄りの「テロ組織」とされるヒズボラがこの数日、イスラエルと国境付近で砲火を交わし、紛争拡大の恐れが高まっている。Barak氏は「イスラエルとヒズボラ間の戦争起こる可能性は50%ではないか」と言っている。

▼と、このようなことを考え始めると、プーチンの「愛国心」だけが頼りのウクライナ戦争もかなり「特殊」なものに見えてきますね。

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4)再掲載:P. ケネディが予想した2031年の世界


『大国の興亡(the Rise and Fall of Great Powers)』という本のことを憶えています?エール大学のポール・ケネディ教授が書いた本で、出版されたのが1989年というから、30年以上も前のことなのですね。世界史の中でそれぞれの時代に栄えたgreat powers(大国)が衰退するのは、大体において軍事に自らの富の大きな部分を費やすことが原因であるということが、教授のメッセージだったと記憶しています。彼のいわゆる「大国」の中には日本も含まれており、メディアの間では大いに話題になったと記憶しています。

むささびジャーナル93号(2006年9月17日)がこの本について書いているのですが、それは英国のThe Independent紙が掲載した『2031年の世界(the world in 2031)』という編集企画の中で取り上げられたからだった。2006年といえば、2001年、ニューヨークを中心にして起こった「同時多発テロ」から5年目という年であったわけですが、The Independent紙としては、あのテロ事件から30年後の2031年に世界がどうなっているのかを追及しようとちたわけです。

現在(2023年)は「同時多発テロ」から22年目にあたる。その間、歴史家には想像もつかないような出来事(例えばコロナ禍)があったけれど、ロシアのウクライナ攻撃やイスラエルのパレスチナ攻撃などはある程度は予想の範囲内の出来事だったのでは?2031年までにはまだ8年ある現在、かつてベストセラーとなった本の著者が何を考えていたのかを振り返って見るのも無駄ではないと思うわけです。

再掲載:ポール・ケネディが予想する2031年の世界

むささびジャーナル93号(2006年9月17日)

2006年9月11日(月)はあの「9.11」(2001年9月11日)から5周年というわけで、いろいろなメディアでこれを振り返る企画が掲載されたり、報道されたりしましたね。英国のThe Independent紙が掲載した『2031年の世界(the world in 2031)』もその一つで、あの9.11から30年後の2031年に世界がどのような状況になっているのかを3人の歴史家が予想しています。これを全部紹介するのは、私の力ではちょっときついので、ここでは米エール大学のポール・ケネディ教授の予想だけを、しかも極めて短くまとめて紹介してみます。この人は、確か20年ほど前(1989年)に『大国の興亡(the Rise and Fall of Great Powers)』という本がベストセラーになった人です。

ケネディ教授がまず予測しているのは、これからも中東の石油を巡る西側諸国による軍事行動があって、2008年と2012年の間に欧州、米国それから日本でテロリストによる攻撃があるということです。何故この時期なのかについては書かれていないのがタマにキズですが・・・。


で、30年後の世界については現在とそれほど劇的には変わっていないというのが教授の意見で、2001年の時点で「あのテロが世界を変えた」というほどの変化はないということです。ただアメリカは、経済・軍事・科学技術のいずれをとっても世界一の力を持っていますが、現在より少しは他国や国際機関と協調するようになっているだろうとのこと。これは財政赤字がひどいし、ほぼ10年におよぶアフガニスタンやイラクでの戦争のお陰で軍事力の面でも限界を感じるようになったということです。

アジアは明らかに中国とインドが世界的な大国として責任を負う立場になっているのですが、そこまで行くのに両国とも国内的にかなりの混乱を経験しています。さらにロシアが世界の4番目の大国として力を発揮するようになっているのだそうです。ヨーロッパはjust fine(まあまあ)という状態で、自己中心的な進歩を続けるアメリカや15年計画の経済発展を続けるアジア諸国に対する「快適な批判勢力」(comfortable antidote)であることを楽しんでいるだろうとのことであります。アフリカは内戦だの大量殺戮だのという苦難の30年を耐えて、ケニア、ボツワナ、モロッコなどの国々はかつてよりは強くなっている。

教授がかなり悲観的な予想をしているのは中東です。2009年から2012年の間にエジプト、サウジアラビア、シリアの3国でほぼ同時に体制崩壊が起こり、イラクの内戦は悪化し、イラン内部で指導層の世代間闘争が起こる。しかし何といっても怖ろしいことに、イランがイスラエルのテルアビブを核攻撃して壊滅状態にする。それに対抗してイスラエルがイランに核で反撃、イランで1000万人の死者が出る。が、イランは大いに弱体化はしても消滅するわけではない。


このような事態に直面して怖ろしくなった大国(Great Powers)は様々な部分で妥協をはかり、国連の平和維持活動を強化し、核戦争後の処理にあたる。で、アメリカはどうするのかというと、興奮はするけれど、同時にこの泥沼に踏み込むことの恐怖をも感じてしまう。「たかだかテルアビブが消滅したからと言ってイランを核攻撃するとは何ごとだ」(who exactly did you "nuke" just because Tel Aviv had disappeared?)と、イスラエルを批難する始末です。ヨーロッパは茫然自失、ロシアは沈黙。繁栄するアジアはというと、そのような愚かな宗教とイデオロギーの戦争など、あちらの出来事で、係わり合いにはならない。壊滅的な打撃を受けたイスラエルはアメリカによって保護されてはいるものの将来は非常に不透明というわけです。

ケネディ教授によると、9.11の30年後の中東は、アラブ諸国で穏健派の指導者が出てくるかもしてないが相変わらず不安定ではある。ただ一つだけ言えるのはテロ組織のアルカイーダが「遠い過去の想い出」(distant memory)となっているだろうとのことです。教授によると、アルカイーダは中国西部のイスラム教徒に対する中国による「防衛対策」(security measures)に抗議して、2010年に上海で、2012年には北京で、それぞれ爆弾テロを実行して、自滅の道をたどるのだそうです。 


アメリカと中国が対テロ戦争に共闘し、ロシアもヨーロッパもこれを支持し、世界中の国で自国内のテロリスト壊滅作戦が行われる・・・このような状況を経て、アルカイーダは「遠い過去の思い出」になるというわけです。というわけで、ケネディ教授の結論は次のとおりであります。
  • さて、(ニューヨークの)ツインタワービルが倒壊してから30年、我々はどうなっているのか?年をとっているだけに、おそらく多少は賢くなっているだろう。地球全体としては必ずしも幸せであったわけではない。特に多くのアフリカ諸国や中東にとってはそうだ。しかし、2031年のいまの我々は、2001年当時に学者たちが予測したよりは、はるかに恵まれた状況にいることは間違いない。そのこと自体は一応喜んでいいだろう。ただ大した喜びでないことも事実である。 So, where are we, 30 years after the twin towers came down? Older, certainly; perhaps a bit wiser. It has not been a happy planet, especially in much of Africa and the Middle East. But, in truth, we are in 2031 a lot better off than most of the pundits of 2001 thought we might be. That itself is cause for some rejoicing. But not much.
ケネディ教授の予測の中には北朝鮮が出てきません。教授の最近の著書には'The Parliament of Man: The United Nations and the Quest for World Government'という本があるそうです。
 
▼むささびは、60年前には人間の歴史は「経済」で動くものと考えていたし、今もそのような側面はあるとおもうけれど、それはどちらかというと人間の物質的な側面のみを考慮しての話ですよね。2023年現在の人間を脅かしているのは「愛国心」や「宗教」のような柔らかい側面であり、それとは正反対の独裁主義のような硬い側面ですよね。9・11の頃に現在のプーチンのような人間がロシアをリードするなんて、考えてもみなかった。

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5)どうでも英和辞書
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Sycamore Gap Tree: シカモア・ギャップの木

なだらかな丘が続いており、真ん中あたりにくぼみのようなところがあって、そこに一本の木が生えている…上の写真は、つい最近までイングランドのノーザンバランドに見られた殆ど「名物」のような景色なのですが、悲しいかな、今はもうありません。

まず丘の部分ですが、"Hadrian's Wall"(ハドリアヌスの長城)と呼ばれる「世界遺産」の一つ。 紀元122~130年ごろにローマ人によって作られたとされている。写真でいうと真ん中のくぼみの部分に立っているのが「シカモア・ギャップの木(Sycamore Gap Tree)」と呼ばれるカエデの木で、映画『ロビン・フッド』に登場したことからロビン・フッドの木とも呼ばれて親しまれていた。樹齢は数百年とされていたのですが、つい最近(2023年9月27日)二人の人間(16才と60才とされている)によって切り倒されてしまった。つまり上のような景色はもうないわけ。


「シカモア・ギャップの木」を切り倒した二人は警察に逮捕されたのですが、BBCなどによると間もなく保釈金が払われて釈放されてしまった(released on bail pending further inquiries)とのことなのですが、これから別の取り調べが行われるかもしれない(pending further inquiries)とのことなのですが、むささびなどには不可解この上ないのは、「なんでまたそのような名木を伐採する気になったのか?」ということに対する納得のいく説明がメディアでは全くなされていないということ。「地元民はカンカンに怒っている」程度の報道はわんさとあるのに、です。

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6)むささびの鳴き声
▼北九州市にある東八幡教会の奥田知志牧師は自分のことを「平和ボケのデクノボー」と呼んでいます。同教会のサイトにある『巻頭言』(10月29日)というエッセイ欄に掲載されている『平和ボケのデクノボーの役割』でそのように言っている。日本の知識人のような人が「平和ボケ」という言葉を使うと、むささびなどはどうしても「平和憲法」のことを考えてしまう。日本の憲法第9条には次のような言葉が並んでいる。
  • 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
▼この憲法が施行されたのは76年前(1947年)のことで、むささび(1941年生まれ)がほぼ6才という年だった。奥田牧師は1963年生まれの60才だから、日本が「平和」憲法なるものを獲得してから16年後のことです。年齢にこだわって申し訳ないけれど、むささびの父親は1905年の生まれだから「平和憲法」が生まれたときはもう42才になっていた。日本の憲法第9条が掲げる言葉には、むささびの父、むささび本人、そして奥田牧師の三者が三様の感覚を持っていたのでしょうね。

▼奥田牧師が自らを「平和ボケ」と呼ぶのは、心から自分をそのような「世間知らず」であるとして自己批判しているのではなくて、日本であれ、外国であれ、とても平和と呼べるような状態ではなく、ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの戦争によってどれだけの人間が傷ついているかを想像すると「胸が痛み」「日本がどれだけ平和かが身に染みる」と痛感している。ただそれでも日本という国(とそこで暮らす人びと)が戦争のない状態で生きてきたのは事実であり、それを否定するべきではない。

▼あちらこちらで戦争が起こっているときに、日本のような「平和を謳歌」することで生きてきた日本はどのように生きるのか?奥田さんによると
  • それは「止めとけ」ということだ。「平和はいいぞ」と「羨ましがらせる」ことだ。
▼宮沢賢治は有名な「雨にも負けず 風にも負けず」の中で、自分が目指すべき生き方として
  • 北に喧嘩や訴訟があればつまらないからやめろと言い 日照りのときは涙を流し 寒さの夏はオロオロ歩き 皆にデクノボーと呼ばれ 誉められもせず苦にもされず そういう者に私はなりたい…
▼と言っている。平和ボケのデクノボー国家である日本の使命は「つまらないからやめなさい。平和はいいですよ」と説得することにある、と奥田牧師は日本人を説得している。で、奥田牧師はエッセイを次のような文章で締めくくっています。
  • ちなみにイエスは「敵を愛せ。迫害する者のために祈れ」と言う。ずいぶんと「ボケ」てらっしゃる。だが、このことばは二千年の時を経て今に生きている。
▼何だかわけの分からないことをくだくだと失礼しました…ですが、最後のイエスについての奥田牧師の言葉はどういう意味なのでしょうか?
 
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