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 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
515号 2022/11/20

上の写真は、アメリカ・コロラド州の小さな村を訪れたお医者さんです。今号のスライドショーで紹介しているユージン・スミスという写真家の作品です。1948年撮影というから、今から70年以上も前に撮られた作品なのですが、むささびは、この作品は何度見ても飽きない。不思議です。

目次
1)スライドショー:ユージン・スミスの世界
2)女性が働くと子供が増える?
3)ファシストが世界を破壊する: N・チョムスキー
4)再掲載:脱原発・日本の可能性
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声
7)俳句

1)スライドショー:ユージン・スミスの世界
 

アメリカの写真家、ユージン・スミス(Eugene Smith)の作品については以前にもスライドショーで取り上げたような気がするのですが、過去の号を探しても見つからないところを見るとむささびの記憶違いなのかもしれない。1918年、アメリカ合衆国カンザス州ウィチタに生まれ、14歳から写真を撮り始め、19歳の時(1937年)、プロの写真家を目指しニューヨークへ移り、『ニューズウィーク』誌のスタッフとして仕事を始める。従軍カメラマンとして太平洋戦争を撮影、その作品が『ライフ』に掲載され、報道写真家として有名になる。1971年からは熊本県水俣に移り住み、3年にわたり有機水銀による公害を取材して話題を呼んだ。しかし1978年、アメリカで脳出血を起こし、59歳で死去。余りにも若かった。

なおネット情報によると、2020年にユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミス(環境ジャーナリスト)による共著写真集『水俣』(1975年)に基づき製作された映画『MINAMATA(原題)』が公開され、大きな話題を呼んでいる。「日本では2021年9月公開」となっているのですが、むささびは映画は見ていません。

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2)女性が働くと子供が増える?


女性が労働力として社会に参加することが多くなるとその国の出生率は下がる…というのがこれまでの常識とされてきた。そうでしょうね、子供の面倒を見る一方で労働力としても活躍するというのは簡単なことではない。となると、どうしても子供はせいぜい二人という家庭が常識になって当たり前ですよね。でもそれが最近、特に先進国では事情が異るらしい。(ちょっと古いけど)8月23日付のThe Economistによると、「労働に対する女性の参加率が上がると、赤ん坊の数が増える」という傾向が見られるのだそうです。


この記事によると、1980年、女性労働者の数が多い先進国では、働く女性が少ない貧困国に比べると、女性の出生率が低かった。先進国では富裕な両親は子供一人に沢山のおカネを使う傾向にあった。そうなると子供の数は少ない方が望ましい。働く母親は子育てから生ずる「機会費用(opportunity cost)」が高いものとなった。となると女性の労働参加が増えるに従って出生率は下がるはずだった。が、2000年の時点の調査では、英国やアメリカでは働く女性の割合が17%増えたにもかかわらず、出生率が下がることはなかった。それどころか、先進国の中でも働く女性の数が多い国における出生率は特に高いという数字が出ていた。「どうなってるんだ!」と人口学者は戸惑った。

全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)の研究によると、働く女性が多いと出生率も高いという傾向は文化および政策の変化によって起こりやすいのだそうです。アメリカやノルウェーのような国では、仕事を続けながら母親であることが比較的容易に両立できる。その結果、出生率が高くなる。一方「仕事」と「母親」の両立がそれほど簡単ではない国(スペインやイタリア)では女性が働くことが少ない一方で子供の数も少ないということになる。

EU加盟国の出生率:2018年


全米経済研究所の研究者によると、出生率が高くなるについては主なる要因が4つある。即ち
  • 1. 融通性のある労働市場: flexible labour markets
    2. 協力的な父親の存在: co-operative fathers
    3. 社会的な規範が適している: favourable social norms
    4. 優れた家族政策: good family policies.
例えばノルウェーの場合、子育てがかなりの部分国家による援助に頼っている。2021年のノルウェーでは、幼児一人につき約3万ドルの国家予算が使われており、女性の雇用率と出生率はOECD加盟国中一番高い。しかもノルウェーでは育児休暇が49週間も与えられている。

育児に対する国家支援の規模だけが各国の育児状況を左右しているのではない。いわゆる社会的要因も重要な役割を果たしている。アメリカは子供一人当たり年間500ドルの政府支出をおこなっているけれど、これはOECD加盟国の中でも殆ど最低の部類に属する。アメリカはまた有給育児休暇が政府によって保障されていない唯一の国であるともされている。アメリカの男たちはほぼどのOECD加盟国の男たちよりも家事をやり、育児にも精を出しているにもかかわらず、です。、


男に家事をやらせるのは政府にとっても女性にとっても簡単なことではないはず。(家事は女性の仕事という)社会常識のようなものを変えるには時間がかかるし、育児のための予算をもっと増やす必要もある。さらには親の育児休暇についての新しい政策の導入も必要となるだろう。アメリカではこれらは民主党が熱心な分野であったけれど、政治的には微妙な分野でもある。しかしThe Economistは
  • 時代の流れは明らかだ。富裕国においては母親の労働が容易であるということが、出生率の増加に繋がるということだ。But the trend is clear: making it easier for mothers in rich countries to work is a good way to help bump fertility rates.
と言っています。

世界の人口
7,999,929,535人
2022年11月15日午前7時45分現在

▼世界の総人口ですが、11月15日午前7時45分現在で約79億9000万人となっているけれど、12時間後の午後7時半には80億人を突破していました。BBCの解説によると、世界の人口は2080年代に100億の大台を超え、その後は下降線をたどることになるのだそうです。

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3)ファシストが世界を破壊する: N・チョムスキー

アメリカの時事問題評論誌 Boston Review のサイト(10月17日号)が、哲学者・ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)によるインタビューを掲載しています。タイトルは
ラジオ・ジャーナリストのデイビッド・バーサミアン(David Barsamian)を相手に、アメリカ政治、プーチンによるウクライナ戦争、中米関係と台湾問題、気候変動問題などなど実にいろいろ語っているのですが、とてつもなく長いインタビューになっています。そこでむささびの独断と偏見で、アメリカにおけるファシズムの台頭という話題を語った部分のみを紹介することにしました。ここをクリックすると全部読めます。
 
  • David Barsamian: 9月21日、ジョー・バイデン(大統領)が国連で演説をして「ロシアは国連憲章の中核精神とでも呼ぶべき部分に恥知らずにも違反をしました:Russia has shamelessly violated the core tenets of the United Nations Charter」と訴えた。しかし国連憲章の中核に違反するという意味ではアメリカも過去において同じようなことをやっている。アメリカのメディアはそのような矛盾と偽善(contradictions and hypocrisies)を指摘しているのか?

アメリカのリベラル ベトナム戦争は
誤りだった?
イラク戦争は?

アメリカのリベラル


Noam Chomsky: (バイデンの演説には)第三世界では大きな反響があった。その殆どがからかい半分のバカにしたようなものではあったけれど。第三世界のメディアは、(国連のような世界で)起こっていることを殆ど信用していない。ほら見ろ、ここに国連憲章違反の主犯格がいるではないか(アメリカのこと)。その違反者が誰にも先立って我々に教えてくれるのだ。「また誰かが国連憲章に反している:Oh, somebody violated the UN Charter」とね。ひどいものだよ。殆ど信じられないくらいだ。


国際問題の専門誌に "Foreign Affairs" というのがある。その雑誌に最近、二人のリベラル派の人間が記事を書いている。一人はFiona Hillで、彼女は2017年から2019年までアメリカ国家安全保障会議(National Security Council)で欧州・ロシア担当の上級役員を務めていた。もう一人はAngela Stentで、ロシアの専門家としてブルッキングス研究所に関係していた人間だ。二人は最初はプーチンを非難したかと思うと、次に第三国(の指導者たち)を批判する。
  • このアホな第三国たちには、プーチンがウクライナでやっていることとアメリカがベトナムやイラクでやったことを同じように見る人間がいる。なんとまあアホな話ではありませんか。This crazy Third World. There are people out there who actually dare to compare what Putin is doing in Ukraine with what the United States did in Vietnam and Iraq. How crazy can you be?
という具合だ。

それがアメリカのリベラル・エリートたちの言っていることではあるが、誰もそれを批判しようとしないのだ。もちろん私は批判しているよ。私以外にも頭が狂った異端者たちも批判はしている。しかし主流派の言論人からはそのような声は聞こえてこない。


ベトナム戦争は誤りだった?

ヨーロッパには、ロシアを国連安全保障委員会から追放すべきだという声がある。アメリカや英国がイラクを侵略したときに英米を国連安全保障委員会から追放せよなどと言った人間はいただろうか?ベトナム(戦争)についての記録を見れば分かるけれど、国連はそのことを議論しようとはしなかったのですよ。その問題を持ち出すと、アメリカが国連をぶち壊すだろうと、国連は思ったのだ。そうなるとそんな話題は持ち出せない。それが我々が身を置いているインテリ社会(intellectual community)というものなのだ。

あれから数十年が経つけれど、ごく少数の人間を除いては、ベトナム戦争に対して正直な批判(honest critique)した者はいない。今からほぼ50年前の1978年、アメリカ人の70%がベトナム戦争は「間違い:mistake」ではなくて「本質的に誤りであり、道徳に反する:fundamentally wrong and immoral」ものであると考えていた。体制派の中でも左派系とされる人びと(例えばNew York TimesのAnthony Lewisら)は

  • ベトナム戦争は、いいことをやっているつもりで開始された。しかし結果としては「間違い:mistake」ということになった。我々は自分たちにも払えそうなコストを以てベトナムに民主主義をもたらすことが出来なかったのだ。 the war began with “blundering efforts to do good,” but it turned into a mistake because we couldn’t bring democracy to Vietnam at a cost acceptable to us.
と言い張っていたのだ。しかしその一方でアメリカ国民の70%が、ベトナム戦争は「間違い」(mistake)ではなくて、「本質的に誤りであり、道徳に反する」(fundamentally wrong and immoral)と言っていたのだ。


イラク戦争は?

さて今現在、アメリカの「主流」と目される人間の中で、イラク戦争を(オバマが言うように)単なる「戦略上の失敗:strategic blunder」ではなくて、完全な国際犯罪行為だとして批判する人間はいるのか?イラク戦争を「冷血にして極悪な犯罪であり悲劇」であると批判する人間だ。

もう一つの大罪といえるアフガニスタン侵攻(2001年)から20周年を期してワシントン・ポストがジョージ・ブッシュ(元大統領)とのインタビューを掲載したことがある。Styleという欄に掲載された元大統領は、政治とは無縁、孫と戯れる、どこまでも「お人好しなおじいちゃん」というイメージで描かれていた。しかし彼は20年前にはアフガニスタンを破壊し尽くした人物なのだ。


▼むささびではあまり取り上げることがなかったけれど、チョムスキーは今年で93才になるのですね。ウィキペディアに見るだけでも肩書が「哲学者、言語哲学者、言語学者、認知科学者、論理学者」などと並んでいるけれど、要するにいわゆる「考える人」なんですね。ただこの人の場合は象牙の塔に君臨するというタイプではなく、政治的な発言が非常に多い。そこが面白いところです。

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4)再掲載:脱原発・日本の可能性


むささびジャーナル221号(2011年8月14日)より再掲載
脱原発・日本の可能性
下の記事は東日本大震災(2011年3月11日)から約5か月後のむささびジャーナルに掲載されたものです。とてつもない事故に直面して日本中が不安を抱えながら生きていた時代です。あれから11年が経つのですね。
 

Financial Times (FT) のコラムニスト、David Pillingのエッセイ(8月10日付)は次のような書き出しになっています。
  • ここだけの話であるが、東京ではいまだに電灯がついている・・・。だから何なのだとおっしゃるかもしれないが、いま現在日本では所有している原子力発電所の3分の2がオフの状態であるということを考えてもらいたい。うだるような酷暑で気温は華氏90度台をはるかに超えており、ただでさえひっ迫している電力供給をさらに難しくしている。もし、日本経済にとって原子力発電が本当に言われるほどに重要なものであるならば、何故(3分の2の原発が稼働していないという状態で)日本という国が機能停止状態に陥らずにいるのであろうか?
「核エネルギー抜きの日本はまともにやっていけるのか(Could Japan function normally without nuclear energy)?」という疑問があるけれど、いまでも54基ある原子炉のうち稼働しているのは17基だけという状況であり、脱原発社会の予行演習(dry run)をやっているようなものなのだ、とPillingは言います。そのような状態であるのに停電もしないで済んでいるのは、個人・企業も含めた社会全体で節電運動が進行していることが主なる理由なのですが、東電は実際にはそれほど原発に頼っているわけではないという声もあるのだそうです。即ち昨年(2010年)一年間に東電が供給した電力の30%が原子力発電によるものですが、それでも東電の原発発電能力の20%しか使っていないという人もいる。

もちろん脱原発にはそれなりのコストがかかる。すべての原発を閉鎖した場合、石炭、石油、液化天然ガスを使った発電のために370億ドルの追加コストがかかるとされており、それは消費者の負担ということになるし、二酸化炭素の排出も増えるという問題もある。さらに長期的な課題として、日本は1973年のオイルショックを乗り切ったときのような省エネ技術を開発できるのか、いわゆる代替エネルギーの活用はどこまで増やせるのか・・・という疑問もある。

原発推進派の意見によると、原子力発電は自然エネルギーによる発電よりもはるかに安いと言われる。原発による1キロワット/時の発電コストは5円~7円であるのに対して、地熱発電の場合は12円~20円、太陽熱の場合は47円というわけです。確かに原子力発電は低コストのように見えるけれど、Pillingによると、これには隠れたコスト(hidden costs)が入っていない。例えば原発の立地先に支払う金銭、使用済み核燃料の処理費用、そしてもちろん福島のように事故が起こった際の補償金や処理費用などは計算に入っていない。

ある大学の推定によると、原子力発電の本当のコストは1キロワット/時12円で、地熱発電、水力発電よりも高いとPillingは言い、代替エネルギーは大量に作られるようになるとコストが安くなる(renewable power could be cheaper if it were produced on a larger scale)とも指摘しています。ドイツの場合、18%が代替エネルギーによっているのに、太陽エネルギーの開発では指導的な存在であった日本は1%にすぎない。Pillingによると、さまざまな規制を設けることで、日本は代替エネルギー産業を初期の段階で絞め殺してしまったのだそうです。

中には日本は自然エネルギーによる発電には地理的に適していないという人もいるけれど、自民党の河野太郎議員はそのようなことはないと主張している。議員によると日本は地熱では世界第三位、潮力では第六位の力を持っており、省エネ技術と代替エネルギーを組み合わせれば「20年以内に原発をスクラップにできる」(Japan could scrap nuclear power within two decades)とのことであります。

原発を廃止すると、いまでさえ中国や韓国の2倍とされる電気料金がさらに上がって、企業が海外へ流れてしまうという声がある。さらに原子力発電を廃止するとそれに関する技術をも失うことになり、大きな声では語られないけれど、将来、必要になるかもしれない核兵器の所有もできなくなるという意見もある、とPillingは言います。

で、最初に挙げられた「日本は原発なしで機能するのか?」という疑問に対する答えは案外早く出されるかもしれない(may be answered much sooner than people think)とのことで、
  • 来年(2012年)の5月までには日本の原発はすべて定期点検のために閉じられた状態になる。もし現在のような反原発の厳しい世論が今後も続くとなると、再稼働を命じるだけの強い意志が地元の政治家にはないかもしれない。そうなると日本株式会社は好むと好まざるとにかかわらず脱原発ということになるだろう。
とPillingは言っております。

 むささびのコメント
  • 原発の今後といえば想い出すのは(以前にも言いましたが)かつての「非武装・平和」ですね。半藤一利さんは『昭和史・戦後篇』という本の中で、戦後の日本人の平和論は反戦というよりも厭戦、「戦争なんてもうこりごり」という感覚だったと言っています。戦争に懲りて、人間の行為としての戦争そのものを語ったり考えたりすることさえも止めてしまったということです。その意味では思考停止状態だった。だから「軍隊なしにどうやって国を守るのか?」と言われると「それもそうだな」というわけで戦争をしないで問題を解決するという思考そのものまで放棄してしまった。
  • 「原発なしにどうやって国際競争に生き抜けるのか?自然エネルギー論は無責任だ」という声が聞こえてくるような気がしませんか?「脱原発」を「非武装」に、「国際競争に生き抜く」を「国を守る」に置き換えると、そのまま昔の「現実論」に戻ります。


▼(ここからは2022年11月17日に書いたものです。)東京新聞(2022年11月15日)の「本音のコラム」(下に掲載)という欄で、ルポライターの鎌田慧さんが『883万1163署名』というタイトルのエッセイを載せています。東北大震災の約3カ月後、2011年6月から彼自身も参加して1000万の署名を目標に「さようなら原発」という運動が始まったのだそうです。それから11年後の2022年11月11日、衆参両議長と首相あての署名簿を経産省の職員に手渡したのですが、署名は目標の1000万には届かず883万1163だった。この署名運動の呼びかけ人は、鎌田さんと内橋克人、大江健三郎、落合恵子、坂本龍一、沢地久枝、瀬戸内寂聴、辻井喬、鶴見俊輔の9人だった。

▼つまり呼びかけ人9人のうち辻井、鶴見、内橋、瀬戸内さんの4人が「鬼籍に入られた」わけですが、鎌田さんによると岸田内閣は「非科学的、実現困難、危険極まりない」原発地獄への道を歩んでいるというわけで、これからは「再生可能エネルギー推進」のための運動に取り組むと言っています。ちなみに鎌田さんは1938年生まれの84才です。
 

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5)どうでも英和辞書
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tosh: たわ言
11月10日付の Guardian のサイトに
という見出しの記事が出ていました。「toshって、どんな形をしているのか?」という意味ですよね。これはツイッターを買収したあの億万長者のイーロン・マスク(Elon Musk)が、英国の北アイルランド担当大臣に発した質問です。

「toshって、どんな形してるの?と質問した」というわけですよね。「お洒落」とかいう意味の "posh" というのは聞いたことあるけど "tosh" というのは…と思って辞書を引いてみたら "nonsense" という意味だと書いてあった。

最近、ヒートン=ハリス(Heaton-Harris)という英国の北アイルランド担当大臣が辞任したというメールが北アイルランド省の名前で英国内のメディアに送り付けられ、メディアが取り上げたのですが、実はこれが全くのでたらめだった。で、ヒートン=ハリス大臣がとった行動は、自身のツイッター上に「これは完全なでたらめだ。ツイッター(@elonmusk)がこのようなでたらめ情報を自らのスペースから削除することを期待する」という趣旨のメッセージを掲載、しめくくりに
  • Very exciting I know, but complete and utter tosh. 自分の辞任というのは、話としては面白いかもしれないが、全くのたわ言(utter tosh)だ。
という文章を載せた。これがマスク氏の目に留まり、彼が大臣に対する返答として「toshって、どんな形をしているのか?」というメッセージを送ったというわけです。Guardianによると、「マスク氏が大臣をからかうつもりで言ったのか、本当に "tosh" という言葉の意味が分からなかったのか、はっきりしていない」とのことであります。

▼ネット情報によると、マスクという人は、まだ51才なんですって!?そして今年現在の「純資産」は「1998億ドル」なんだとか。円でいうと…ええと…ええと「XX?X?兆円 」かな?

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6)むささびの鳴き声
▼メディア関係者が読む専門誌「メディア展望」の11月1日号に出ている『日本語を壊すメディア』というエッセイは思わず頷いてしまう内容です。最近のメディアで使われる「日本語」について書かれている。筆者は「読売新聞OB」の日野健氏。メディアが使う文字や言葉が時代と共に変化するのは当然としても、最近の変化は「政官財界などの公権力や時流に引きずられているとしか思えない」ものが多いとのことであります。筆者が挙げる具体例が7月16日付の朝日新聞朝刊に掲載されていた
  • 『マイナポイント巡り不具合』
▼という見出しです。「マイナポイント」は「公的個人番号につけられる金銭ポイント」のことであり、総務省が主宰するサイトには「マイナンバーカードを使って申込むことで最大20,000円分のポイントが受け取れます」と書いてある。むささびがそもそもイラついていたのが「マイナ」という言葉です。いわゆる「個人番号」を「マイナンバー」と言い始めたこと自体が気に入らないし、それを略して「マイナ」とは何事だ!と言いたいわけ。「マイナ」と書かれれば「マイナー」か「マイナス」としか読まない。「マイナポイント」などと書かれても「マイナスポイント」としか読まれない。

▼日野さんの記事で(むささびが)さらに笑ってしまったのは、朝日の見出しで使われている「不具合」というれっきとした日本語についての解説です。製品の不良や瑕疵(かし)については、かつては「欠陥」という言葉が使われていた。車の不良品については「欠陥車」という言葉が使われるのが当たり前だった。それがいつの間にか「不具合」という言葉が使われるようになった。広辞苑が「不具合」という言葉を最初に掲載したのは1991年刊の第4版からで、しかもそれには最初から「多く製造者の側から、『欠陥』の語を避けていう」という但し書きまで付記されているのだそうです。つまり「欠陥」と言うより「不具合」と言った方が、少しだけとはいえ「まし」な印象を与える、と。

▼北朝鮮によるミサイル発射について政府のJアラートが誤報したことについて、NHKや朝日新聞は松野官房長官が「システムの不具合が原因」と語ったと伝えており、英字紙は「システムの不具合」を "a system malfunction" と表現している。"mal" は「不」という意味の接頭語で "malfunction" は「然るべき機能を発揮していない」という意味ですよね。「欠陥システム」は "a system defect" かな?辞書を見ていたら「性格的欠陥」のことは英語で "character defect" と説明していました。「性格的不都合」などという日本語、聞いたことあります?


▼ますます寒くなります。お元気で!

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