musasabi journal

第21号 2003年11月30日
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美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書

目次
@イングリッシュオークの周辺:大阪府枚方市「わらしべ園」
Aブッシュ訪英、無難に終わって・・・
B行列は英国人の趣味!?
C「金持ち」が増えて
DむささびMの<「と」・「ば」の違いを教える必要性>
EむささびJの<フィンランド体験>
F編集後記


1)イングリッシュオークの周辺:大阪府枚方市「わらしべ園」
大阪・枚方市にある「わらしべ園」は脳性麻痺児童を中心とする障害者のリハビリ施設。リハビリの手段として柔道や乗馬を使っています。英国にある障害者乗馬協会(RDA)と交流をしており、数年前にはRDAの総裁を務めるアン王女が訪れたこともあります。この施設の創設者である医者の村井正直氏(77才)が医者になったのは「金持ちになりたかった」というのが理由です。先日その「わらしべ園」に行って村井先生の話を聞いてきました。詳しくは「イングリッシュオークの周辺」をクリックしてください。詳しくはここをクリックしてください。

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2)ブッシュ訪英、無難に終わって・・・
先週の英国は、「国賓」ブッシュ大統領の訪問で持ちきりでしたが、イスタンブールのテロでちょっと当初予想されたものとは異なったものになったようです。BBCの政治記者は「(ブッシュの訪英については)ブレアがほっと一息ついた」としています。つまり事前に予想されたよりも無難に終わったということです。 で、ブッシュ訪英の直前に行われた英国の世論調査をThe Economistが次のように報じています。
  • イラク攻撃の是非:47%が「是」・41%が「非」
    米国は世界にとって善か悪か:62%が「善」・15%が「悪」
    ブッシュの訪英を歓迎するか:43%が「歓迎する」・36%が「歓迎しない」
これをもう少し細かく見ると今の英国が見えてくるようで面白いです。イラク攻撃の是非については、18才から24才の人たちの53%が「悪い」としており、「支持する」の36%を上回っている。この年齢層では米国を「善」とする意見が57%と多いのですが、「悪」とする意見も31%と結構高い。つまり若年層の間ではイラク問題に関する限りアメリカの評判はそれほど芳しくないということなのでしょう。

女性の意見も面白いですよ。イラク攻撃は42%が「正しい」としているのに対して45%が「間違っている」と批判的な意見が多い。ブッシュの訪英についても「歓迎」が35%なのに「来ないほうがいい」が42%もいる。でもアメリカを悪とする意見はたったの17%(善とするのは55%)となっています。つまりブッシュもイラク戦争も若者と女性に受けがよくないということであります。でもアメリカが嫌いというわけではない。

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3)行列は英国人の趣味!?
ノリッジ健康保険組合という組織のリサーチによると、英国人は合計1年間で13億時間を行列で何かを待つことに費やしているのだそうであります。16歳以上の1000人から回答を得た調査なのですが、1週間で平均33分を「並んで待つ」ことに費やしているとされています。「待つ」にもいろいろありますが、「一番ストレスがたまる」(stressful)なのはトイレの順番待ち、ついで病院での待ち時間、飛行場での搭乗待ち、スーパーのレジ、銀行での行列などがmost hated waitのリストの上位に入る。
この調査によると5人に3人が「行列」は英国の国民的行事(national obsession)であると考えており、ノリッジ健康保険組合のヘザー・スミスという人は「行列は英国人のレジャーみたいなもの」とコメントしていますが、3分の1が行列破りをしたことがあると認めており、5人一人は「他の人がやるなら自分もやる」と言っています。

「行列がレジャー」というのはかなり達観していないと言えないコメントです。ところで「果報は寝て待て」を英語で何というのでしょうか?Good things come to those who waitなのだそうです。しかし今回の調査では英国人の3分の1がこの格言は信じていないという結果になっています。
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4)英国では「お金持ち」が増えている(けど不平等社会に?)
11月23日付けのObserverが最近の英国人の暮らしぶりについて興味深い調査結果を載せています。ここ10年間で「金持ち」が増える一方で「質素・貧困」クラスも増えている・・・つまり全体として不平等な社会になっているとのことです。この調査はCACIという市場調査機関が行ったもので、現代の英国人は5つのグループに大別できるとしています。
  • 富裕層(Wealthy achievers):全体の25%で、職業的には医者や専門家などが多く、年齢は45から65才、中にはリタイヤした人もいる。年収は5万ポンド(約800万円?)以上で、それ以外に株収入などもある。一ヶ月に250ポンドはクレジットカードで買い物をする。ワインとゴルフを好み(日本の”お金持ち”と大して変わらないんだ!)、寝室が4つ以上ある一戸建て住宅に住んでいる。
  • 都会の金持ち(Urban prosperous):全体の11%。年齢は25から35、独身者が多く、いろいろな人種の人が住むところ(multicultural area)に居住している。趣味は演劇・美術・音楽・スキー・健康食などなど。いわゆるヤッピー(この言葉今でも使われているのでしょうか?)ですね。
  • 「まあまあ」層(Comfortably off):27%。2軒続きのsemi-detached住宅で暮らし、子供がいる。海外旅行は年に一度。クレジットカードの払いが時たま滞ったりする。「庶民」ですな。
  • ちまちま階級(Moderate means):全体の15%。長屋風の住宅(terrace)に住んでいる。店員とか工場労働者が多く、貯金は殆どなし。クレジットのリミットも当然低い。インターネットには余り縁がないが、ケーブルTVくらいなら何とか・・・という人たち。「ブルーカラー」ってやつかな?
  • 生活苦しい階級(Hard pressed):全体の22%。公団住宅の借家暮らし、片親ファミリーが多いのだそうです。通勤はバス・電車もしくは徒歩で。お金もないのにカタログショッピングなどするので、払いに汲々としている。趣味は釣りやギャンブル(競馬、ビンゴなど)。
というわけなのでありますが、最初の富裕層は10年前には全体の19%だったのが、今日では25%にまで伸びている。「寝室が4つ以上ある一戸建て住宅」に住んでいる人の数も10年前の300万人から何と殆ど500万人にまで増えている。これは尋常な増え方ではない?寝室の数はともかく「一戸建て住宅」に住んでいる人も10年前に比べて100万人増えて560万。さらにマイホーム(懐かしい言葉ですね)を持っている英国人は過去10年間で500万から700万にまで達している。いずれの数字を見ても、この10年間で「生活が豊かだ」と感じている人が如何に増えているかということですよね。

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5)むささびMの<「と」・「ば」の違いを教える必要性>
この接続助詞の使い方の違いを見つけようと、例文を考えている時に気付いたことがある。無意識に使っている母国語で、間違った文を作る(間違った使い方を見つける)ことは予想以上に難しいということである。不自然な文を作るのは「ことばの笑い」のネタをみつけるのと共通した難しさがある。そのつもりで聞いている文が文末で見事に裏切られる時の「可笑しさ」のような、ある種の言葉のマジックみたいなものが実は外国人の「間違えやすさ」と共通しているからかもしれない。
逆に外国人が作った間違った日本文を読むと、何故そんな簡単な間違いをするのか理解に苦しむことがよくある。 「と」と「ば」は「春になると桜が咲く」「春になれば桜が咲く」のように、意味は同じだと外国人に教えることになっているようで、確かに大した違いはないように思える。文法書によると、自然現象・習慣・機械の操作と結果などの依存関係を表すのが「と」。従って人間の意志や希望などの入り込む余地がなく、必ずそうなる場合に用いられるのが「と」である。

「ば」もその点では人間の入り込む余地が概ね無いのであるが、例外的に前文が状態性の場合や前件と後件の主語が違う場合には、人間の意志や希望が入り込めるというのである。「分からない事があればいつでも聞いてくれ」や「親が許せば(私は)行くつもりだ」などがその例である。

更に文法書で言われて初めて気付いたのだが、「ば」の文では後ろに望ましい事が来ることが多く、望ましくない事柄の場合は「と」や「たら」を用いるとのこと。(例文:徹夜すると翌日つらい)。逆に「さえ」などを使って後件が成立するための最低条件を示す場合は「と」は使えない。(例文:お金さえあれば遊んで暮らせる)。

日本語を学ぶ外国人にとって、こんな微妙な例外を使いこなすのは並大抵のことではないような気がする。英語話者には「と」はwhen (場合によってはif的な意味もありうるが)、「ば」はifだと教えてとりあえず日常生活を切り抜けて貰った方がいいのではないだろうか、、、。文法でがんじがらめになると(!)、日本人の英語と同じでおそらく喋れなくなるのがオチだから。
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6)むささびJの<フィンランド体験>
先日、東京の国連大学で日本とフィンランドの専門家が集まって「男女平等社会」についてのシンポジウムを開きました。そのために6人もの専門家がフィンランドからやってきたのですが、過去約1年間フィンランドという国やフィンランド人という人々とお付き合いをしてみて、やはりこの国はタダ者ではないという気がしていますね。
そもそも、この種のシンポジウムを開くために本国からこれだけの人たちを派遣する(旅費はフィンランド・サイドが持ったようです)ということ自体がスゴイです。あえてどこの国とはいいませんが、世の中には「オレたちの話を聴きたければ、金を払え」という態度のところも多分あるのではないかと思いますし・・・。

私の贔屓目なのかもしれないけれど、フィンランドという国はマジメに「対話」を求めているように思えるのですよ。先生みたいな顔をして「教え」をたれるのではなくて、です。私とフィンランドという国のお付き合いも殆ど終わりです。失礼ながら人口500万という小さな国の割には、デザイン、情報技術、健康食品、福祉制度など、本当にいろいろやっていますね。目立たないけど面白い国です。

で、男女平等シンポジウムですが、6人の参加者の中にお医者さんで社民党議員という人がいて、この人は開口一番「フィンランドが男女平等で社会福祉の行き届いた国、というのを簡単に信用しない方がいい」と言って、いろいろ実例を挙げてこの国の問題点を語りました。私も考え込んでしまったのは、離婚率の50%という数字と「福祉国家」の関係です。この国会議員によると、イチバン惨めなのは「離婚された男性の一人暮らし」なんだそうです。アルコール依存症、自殺などの率が最も高いのがこの人たちだとかで、公営住宅にしても「家族」を想定したものは数多く建設されるのに、独り者が住めるようなものは殆どないのだそうです。

もう一つ面白かったのは「新しい父親像」というタイトルのスピーチ。フィンランドでは女性の出産・育児休暇はもちろんですが、男の育児休暇(paternal leave)も認められていて、育児を男女平等に行うように奨励されているとのことでした。会場にいた日本の企業関係者が「男の育児休暇なんて日本では考えられない・・・」という趣旨の発言をしたのに対して、フィンランドの専門家の意見としては「子供と長い時間を過ごしたり、育児の経験を持つ男は性格的にも幅が広く、企業にとっても貴重な人材になりうる」とのことでした。

なるほど・・・。 日本の場合、育児どころか有給休暇もまともにとらない人の方が多いのですよね。これ、私が思うには、日本のような無宗教社会では、「規律」らしきものの役割を果たすのが「世間様の眼」しかないので、有給休暇も「周りの目」を勝手に気にしてとらないということなのではありませんか?フィンランドではルーテル派のキリスト教が精神的にも大きな力を持っていて、「一生懸命働くのはいいことだ」という労働感覚は根強くあるそうなのですが、それと育児休暇は別物のようです。それからもちろんフィンランドにもワーカホリックはいるそうです。特に最近はやりのハイテク産業などには多いそうです。
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7)編集後記
今回もお付き合いを頂きありがとうございます。「英国人は金持ちになっている」という記事Cについてですが、オブザーバーの記事とは別にBBCが報じていて気になったのは英国人の借金です。とにかく財力もないのにクレジットで買い物をしたりするの普通になっており、クレジット会社の中には年収11,000ポンド(200万円弱)の年金暮らしの老夫婦に対して79,000ポンドのお金を貸すところもあるのだそうです。で、国民全体の借金額はというと905,782,000,000ポンド。ゼロを数えるのが面倒な人のために言っておくと9057億8200万ポンド(円に直すのは自分でやってください!)国民一人当たり15,300ポンドの借金なのだそうです。これは問題だ、どう考えても。 それからグリーン同盟の会のフォトギャラリーなるものが出来ました。と言っても私が作っているサイトの上だけの話ですが・・・。全国約50ヵ所から送って貰ったイングリッシュオークの現状写真を集めたものです。いずれも2003年に撮影された写真です。一度見てやってください。「GACフォトギャラリー」をクリックしてください。

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