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むささびの鳴き声
078 イングランドにて:オックスフォード3週間留学

我々が暮らしている村からバスで40分、電車だと20分弱のところにオックスフォードの町があります。このところ大学主催の夏季講習に参加するために毎日電車通学をしています。私が参加しているのは、どちらかというと外国人向けのコースで、英文学研究コースと政治・歴史コースの二つがあります。私が参加しているのは後者の方なのですが、参加者は2コース合計で約120人、圧倒的多数がアメリカの学生さんで、このコースに出ることによって単位がもらえるのです。

で、何をするのかというと、大学が用意したゼミの科目の中から二つ選ばなければならない。一つではダメ。私の場合は「1900年〜1945年の英国政治」(British Politics 1900-1945)というのと「変わりゆく英国」(Changing Face of Britain)の二つですが、他にも「人権」「グローバリゼーション」「中東研究」「非植民地化の流れ」「EU研究」等々いろいろある。そしてゼミは小さな部屋で6人程度の学生と講師がテーブルを囲むような形で授業をする。これが2時間です。

もう一つ、毎日あるのが大教室での「講義」(lecture)です。これには政治・歴史コースの全員(約60人)が参加します。まずは講師が1時間半ほど話をし、そのあとで質問を受け付ける。これも全体で2時間です。テーマは「EUのこれから」「戦争はなぜ起こるのか」「金融危機についてのフランス人の見方」「イスラエルと中東」等々、国際政治や経済が中心です。つまりゼミ+講義=4時間を3週間続けるわけです。参加費用は、私の場合で約13万円(1000ポンド)ですが、大学の寮に宿泊していないので多少安い。アメリカ人たちは1400〜1500ポンドくらい払っているようです。

ゼミや講義以外に夜の催しとしてディスカッションや読書会というのもある。参加しているアメリカ人の殆どがオックスフォードや英国が初めてというわけで、彼らのための観光企画も用意されています。パブ巡り、シェイクスピア生誕の地で劇を見るツアー、ロンドンの博物館を見て回る会・・・要するに3週間びっしりオックスフォードと英国文化を体験してもらおうというわけです。

なぜここまで詳しく紹介するのかというと、この夏季講習が大学にとっての大切な収入源になっているであろうと思うからであり、「知」を売りものにした大学ビジネスの典型例であろうと思うからです。さらに(私からすると)驚異的なのは、オックスフォードの中心部を歩く観光客の群れです。ガイドさんに連れられて博物館などを見て回るのですが、コースの中に私が毎日通っているExeter Collegeという大学のキャンパスも含まれている。おそらく各Collegeの歴史とか有名な卒業生などについてのエピソードを語ったりしているのでしょう。

大学のみならず町全体が、オックスフォードの「知」によって人を惹きつけ、それによって生きているわけですね。夏季講習に参加していると、大学側の必死さ加減がうかがえます。参加者を納得させるような内容にすることで、リピーターが増え、口コミで参加者が絶えないという状況が作れるのですから。

講習が終わるまでに約2000語のミニ卒論を提出することが求められている。大学生の場合、これをやらないと単位がもらえない。私の場合は面白半分で参加しているにすぎないので単位がとれてもとれなくても関係ないし、言葉のハンディと知識不足もあってゼミの授業に追い付いて行くのが精一杯というところですが、卒論だけは提出しようと思っています。学生さんには単位がかかっているけれど、私には意地がかかっている![2010/7/18]

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