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むささびの鳴き声
068 犯罪者の肩書き

ちょっと前のことですが、NHKラジオのニュースを聴いていたら、東京・江東区のマンションで若い女性が行方不明になっており、同じマンションに住む「派遣社員の男」が容疑者になっている・・・と言っておりました。翌朝のどの新聞にも同じように書かれていた。この場合、なぜ単に「同じマンションに住む男」ではなく「派遣社員の男」と報道されるのでありましょうか?

同じ日のニュースとして、長崎市長を殺害した「元暴力団の男」に死刑判決というのがあった。「暴力団」と殺人はつながりがあるし、そもそも暴力団という存在そのものが本当なら許されないはずのものなのだから、死刑判決の報道で「元暴力団の男」という表現が使われても、さしたる違和感を(私は)覚えない。あるいは「裁判官がストーカー行為」とか「大学教授がセクハラ」それに、「防衛省事務次官が接待ゴルフ」というような場合、それぞれの職業や社会的な地位と犯罪行為を対照的(「・・・ともあろう者が」とか)なのでニュースになるということもあると思います。だから構わないと思う。

しかし殺人容疑者が派遣社員や新聞配達員(そんな事件ありましたよね)であった場合、立場を利用したわけでもないし、「・・・ともあろう者が」ということでもない。なのに、何故わざわざ職業や身分を表す言葉を入れるのでしょうか?同じ立場や職業にある人が、その報道に接して、多少なりとも身がすくむような想いをするかもしれない・・・ということは、記者や編集者の考慮の外にあるのですかね。確か奈良県で新聞配達員が何かの犯罪を犯したことがあり、そのときはご丁寧にも「XX新聞の配達員」という呼ばれ方だった。

さらに新聞記事で不思議だったのは、行方不明の女性については「会社員」となっており、容疑者については「派遣社員」となっていたということです。「会社員」と「派遣社員」、別の呼び方をしなければならないほど違う人たちなのでしょうか?記者や編集者のアタマでは、派遣社員は「会社員」ではないってことですかね。

最近ではあまり見ないような気はするけれど「住所不定・無職」というのも警察の書類みたいでイヤですね。警官やお役人にそれを期待はしないけれど、せめてメディアの人たち(言葉を使うことを職業にしている)は、一人の人間を表現するのに、このような能のない言葉は使わないで欲しい。そもそも、その人がどのような職業・企業・身分に属するのかを言わないと気がすまないという感覚は本当に情けないと思います。[2008/6/8]

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