musasabi journal

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476号 2021/5/23
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書


コロナ・マスク・ワクチン…あれよあれよと言う間に5月が去っていきます。前回の東京五輪(1964年)は、終わったら直ぐに忘れてしまったけれど、2021年のそれはやってもやらなくても記憶には残る。

目次

1)スライドショー:わが町、ベルゲン
2)カフカが遺したもの
3)中国:「ひとりっ子」青年の死
4)日本と五輪:BBCの伝え方
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)スライドショー:わが町、ベルゲン

"Ragnar B Varga" をどのように発音するのか…「ラグナー・B・ヴァルガ」かな?この人は生まれはハンガリー、育ちはノルウェーの写真家です。いくら探しても年齢についての情報は見つかりませんでした。このスライドショーで紹介するのはヴァルガのホームタウンであるノルウェーのベルゲン(Bergen)です。ノルウェー西の海岸地帯にある町で、人口約30万、ノルウェーでは首都・オスロに次ぐ大都会だそうです。1年間平均で275日が雨天だそうで、一年を通して「灰色」が支配するエリアであり、ヨーロッパでも南の地中海地方に付き物の明るさ・楽しさ・柔らかさとは縁がない。

が、ベルゲンの暗さにはどこか詩的なところ(something poetic)がある、と本人は言っている。小さな木造の家が並ぶ住宅街か、パリを想わせる小さな喫茶店か、よく分からないけれどベルゲンを離れると途端に恋しくて帰りたくなる町なのだそうです。この町を見せるためにはモノクロ写真以外にあり得ない。

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2)カフカが遺したもの

フランツ・カフカの作品を読んだことあります?むささびは『変身』『城』を読んだことは記憶しているけれど、他に読んだ作品があるのかどうか、情けないけど記憶が定かではない。でもジョルディ・シエラ・イファブラ(Jordi Sierra i Fabra)というスペインの児童文学者が書いた、英語のタイトルが "Kafka and the traveling doll"(カフカと旅する人形) という絵本が存在することは、つい最近になってFacebookで読むまでは全く知りませんでした。その絵本の中身をざっと紹介すると次のようになる。

カフカと旅する人形

カフカは1883年にプラハで生まれ、1924年にウィーン郊外で死んでいる。41年という短い人生だった。40才のとき彼はベルリンに住んでいた。結婚はしていないし(もちろん)子供もいなかった。カフカは毎日のようにベルリン市内のスティグリッツ公園を散歩するのが日課だった。

ある日、いつものように公園を歩いていると、道端で泣いている女の子に出会った。好きな人形を失くしてしまったのだという。そこで、カフカは女の子と一緒になってそのあたりを探してみたけれど人形は見つからなかった。カフカは女の子に、「探すのは明日にしよう、明日戻っておいで」と告げた。


翌日、同じ場所で探したけれど、やはり人形は見つからない。カフカはそこで女の子に一通の手紙を渡して言った。「この手紙はキミの人形が書いたんだよ」と言って…。手紙には
  • 泣くのは止めなさい。あたしは世界を見る旅に出たのよ。あなたには手紙を書いて、あたしの冒険のことをいろいろ教えてあげるから…。Please don't cry. I took a trip to see the world. I will write to you about my adventures.
と書いてあった。

それからカフカは公園で少女と会うたびに「人形からの手紙」を読んで聞かせるようになった。「人形から来た手紙」は、そのどれもが少女を喜ばせるようなことが書いてあった。


ある日、カフカは自分が買った人形を持って来て、「この人形は旅行を終わってベルリンへ帰ってきたのだよ」と少女に告げた。すると少女は
  • あたしの人形とは全然似ていないわ。It doesn't look like my doll at all.
と言う。そこでカフカは、人形が書いたという手紙を少女に渡した。そこには
  • 私は旅をしたから変わってしまったのです。My travels have changed me.
と書いてあった。少女はその人形を抱きしめて、嬉しそうに家へ帰って行った。

カフカが亡くなったのは、その約1年後のことだった。それから何年も経って、あの少女が大人になってから、カフカにもらったあの人形の中に一通の小さな手紙があるのを見つけた。手紙にはカフカのサインがあり、次のように書かれていた。
  • キミが愛するものは、おそらくいつかは居なくなるだろう。でも最後に愛は別の形で必ず戻ってくるよ。Everything you love will probably be lost, but in the end, love will return in another way.


ジョルディ・シエラ・イファブラ

ジョルディ・シエラ・イファブラによる "Kafka and the traveling doll" という絵本の最後は次のような言葉で結ばれています。
  • 変化することを大事にしよう。成長するために変化は避けられないのだ。私たちは、共に生きることによって、痛みを奇跡と愛情に変えることができるのだ。でも痛みと奇跡を結びつけることができるかどうかは、私たちの意思と良心次第なのだ。Embrace the change. It's inevitable for growth. Together we can shift pain into wonder and love, but it is up to us to consciously and intentionally create that connection.

▼この記事は、年代をはっきりさせ、時代背景を自分なりに想像しながら読むと面白さが増すような気がする。まずカフカがユダヤ人家庭に生まれたのは1883年7月3日、亡くなったのは1924年6月3日です。わずか40年の人生だった。ベルリンの公園でこの少女と会ったのが死ぬ1年前(1923年)のことですが、彼自身は結核を患っており無職の身だった。約3週間、二人は同じ公園で会ったわけですが、カフカは毎回、「旅する人形からの手紙」を少女に手渡していた。

▼カフカ自身から少女への手紙は、少女が大人になってからカフカからもらった人形の身体の中に埋め込まれているのが見つかった。自分自身は結核の身であったけれど、少女に宛てた手紙には「希望を失ってはいけない」という趣旨のメッセージが書かれていた。ただ・・・この「少女」が誰なのか、カフカからもらったという「旅する人形からの手紙」が実在するのかどうかも分からない。ただ"Kafka and the traveling doll"という物語は2007年の児童文学賞(National Award for Children's Literature)を獲得している。つまりカフカと少女の出会いから84年経って、人形からの手紙がようやく陽の目を見たということになる。

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3)中国:「ひとりっ子」青年の死


5月15日付のThe Observer紙に
という見出しの記事が出ています。イントロは次のように書かれている。
  • 息子の死をめぐって真実を追求する母親の行動によって暴露されたのは、中国の大衆の権威・権力に対する不信感だった。 A mother’s search for the truth about her son’s death exposes the level of public distrust in China’s authorities


中国・成都市
ひとりっ子政策

5月9日の母の日、中国・四川省の省都、成都市に住むLin Weiqiという17才になる青年が亡くなった。彼の名前の漢字が分からないので「リン青年」と呼んでおきます。さらに(情けないけれど)中国における「17才」というのが、どのような年齢であるのか、はっきりは分からない。義務教育が6~15才というからリン青年は、日本で言うと高校生というところなのでしょう。

その日、リン青年は母親のルー(Lu)夫人に「母の日、おめでとう」という趣旨の言葉をかけて学校へ出かけて行った。ルー夫人は、いわゆる「ひとりっ子政策」(1979~2014年)の時代にリンを産んだ。当然ひとりっ子で、彼女にとってリンは誇りであり喜びでもあった。その日も息子が学校から帰宅したときのために美味しい夕食を食べさせてあげようと考えていたところだった。全く当たり前の日だった。

息子に会いたい…

が、その午後にルー夫人は息子が校舎の屋上から転落して死亡したと学校から知らされる。警察によると彼の遺体はすでに葬儀場に送られたとのことで、夫人も夫も息子の最期を看取ることもできないということだった。学校によると、事故後直ちに救急車が呼ばれたが、病院に到着したころにはすでに死亡していた、と。夫人が息子の死を知らされたのは転落から2時間も経ってからのことだった。

ルー夫人が中国メディアに語ったところによると、その夜と翌朝に彼女と夫は、彼の息子の遺体と事故現場を見たいと学校に伝えたけれど「全くの無駄でした」(But to no avail)。さらに彼らは町中に張り巡らされている監視カメラに写っているはずの息子の姿を見たいとも言ったけれど、これも断られた。悲嘆に暮れるルー夫人がとった行動は、中国のSNSであるウェイボー(微博)に投稿することだった。彼女は、自分たちが善良なる市民であり、母親として息子の姿を見たいだけなのに…と訴えた。
  • 彼が冷たくなってどこに横たわっているのか、誰か教えてください。息子よ、あなたを守れなかった母親を許してね。守るどころか正義さえも許されないのだから。I’m sorry, son, your mother wasn’t able to protect you; cannot even ask for justice for you.


その投稿は数時間でウェイボーを駆け巡り、両親への同情と学校、警察と「体制(the system)」に対する憤りのメッセージで溢れかえった。関連のハッシュタグを使ったツイートが18億回も記録され、
  • 自分の息子が目の前で死に、しかも学校がその両親を校内に入れないなんてこと絶対に許せませんよ。学校は一体何を隠しているのか?As a mother, one can never accept that her son dies before her … the school doesn’t even allow parents to get into the campus. What are they hiding?
という類のメッセージでSNSが溢れかえった。

真実は事実に求めよ」!?

息子が転落したとされる現場を見たいと願ったルー夫人は、校内に入ることを学校側に拒否され、泣きながら息子の写真を抱えて校門の前に坐り込んだ。彼女が坐り込んだ背後には、学校のモットーである「真実は事実に求めよ。完璧は平均に求めよ」という文字が見える。



ルー夫人のウェイボーへの投稿によると、彼女は地元のメディアからも「助けることはできない」と告げられたのだとか。その理由は「水が深すぎる」(The water is too deep)ということだった。「相手が悪すぎる」ということで、メディアも学校や警察には逆らえないという意味です。ルー夫人はその後、警察によって、監視カメラの映像を見ることを許されはしたものの、見せられたのは息子の死の瞬間は除外された映像だけだった。

監視カメラ

中国では国中のいたるところに監視カメラらが備えられており、事故の瞬間が写った映像がないとは考えられない、というわけで「学校や警察が自分たちにとって都合のいい部分だけを見せることにしたのではないか」というウェイボー・ユーザーのコメントには4000人以上が「いいね」のマークが付いた。学校当局は新華社通信に対して、自分たちのとった行動の正当性を説明するコメントを提供するけれど、度重なるObserverからの取材要請には沈黙を通している。この事件は、今日の中国において正義を求める市民が直面する欲求不満を表していると言えるけれど、それはまた権力と市民の間における信頼感の欠如が、厳重に管理された社会においてさえも顔をのぞかせることを示してもいる。

中国には「参考消息」(Reference News)という名前の高級紙がある(らしい)のですが、この新聞でさえも成都市におけるこの騒ぎに関連して
  • 公衆の関心事には、真実を以て答えることによってのみ疑いは晴れるものだ。Only when truthfully responding to the public’s concern can suspicion be dispelled.
というコメントを同紙のウェイボー・アカウント上で発表している。おそらく大衆の感情の高まりに黙っていられなくなったのだろう。


町中にある監視カメラ

「参考消息」紙がコメントを発表した数時間後(正確に言うと5月11日午前3時54分)、地元の教育委員会が彼らが行った調査の結果を報告した。彼らの結論は、リン青年の死は自殺であり、理由は「個人的な事情」(personal issues)とのことだった。つまり学校側に不正の類はないということだった。が、オンラインの世界では疑いは晴れていない。教育委員会のコメントに対しては「俺たちをバカにするのか」(Do you treat us like idiots?)というコメントが寄せられ、そもそも死亡事件の調査は警察の仕事であるはずなのに、なぜ教育委員会が口を挟むのか?という批判も載せられている。

「これ以上騒ぐな」

事件がついに地方都市の問題から全国規模のメディアが注目するものとなった時点で警察が重い口を開いた。彼らによると、監視カメラの画像や検死の結果まで慎重に調べた結果、この事件には犯罪性はないと結論づけた。そしてウェイボー上で次のようなコメントを発表している。
  • この調査結果にはご家族も反対はしていないことは告げておくべきだろう。市民が噂を広めるようなことがないように強く要望する。It’s worth noting that the family did not object to the outcome … We urge citizens not to spread rumours.
要するに「これ以上騒ぐな」ということで、ルー夫人もSNSに投稿することを止めた。彼女と夫が息子の自殺を受け入れたのだという意見もあるが、口をつぐまされたのだという人もいる。ある夜、学校に集まった人々は白い花をかざしながら「真実・真実・真実」(Truth, truth, truth)と叫び声をあげた。するとすぐに警察が介入して何人かを連れ出してしまった。


校内を歩くリン青年が映った監視カメラの映像。生前最後の姿で、すったもんだの挙句、ついに国営テレビで放映されたもの。

真相は女性問題」?

こうなって中国の国営メディアも取材に参加してきた。中国中央テレビは5月14日正午にこの事件についての独占放送を行った。記者が地元の警察署へ出向いて、捜査員からリー青年が自殺したとされる「事件」を詳細に取材した。あの監視カメラの映像の分析も含まれていた。警察が示した映像によると、リン青年は、学校内にあるポンプ室のようなところで自分の手首を切ろうとした。それから5階へ行き、転落する様子が映像に写っている。

警察がリン青年の学友たちとインタビューした結果として明らかにしたのは、リン青年が「女性問題」(relationship issues)に悩んでいたということだった。警察がこれまでそれを公にしなかったのは、「本人のプライバシーを尊重すると同時に家族をも傷つけることを避けたかったから」と説明している。そして「ご家族もこのことを公にすることに反対ではなかった」(And the family had no objection)と言っている。

▼いま中国ではインターネットの世界がとんでもない勢いで拡大しつつあるのですよね。同時にSNSも発展する。しかも人口が13億もあるから、欧米的な意味での「自由主義」「民主主義」というのは難しい。そんな中で起こったのがこの事件なのでしょうね。ひとりっ子社会を生き、ネット社会をも生きているこの両親のような人たちがわんさといるのでしょう。リン青年の死因が「個人的な事情」による自殺であるということを公表した教育委員会に対して「俺たちをバカにするのか」と怒るのも当たり前ですよね。中国流の一致団結主義ではとても乗り切れない。


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4)日本と五輪:BBCの伝え方


5月15日付のBBCのサイトが
という見出しの記事を載せています。書いたのは東京特派員のアンドリース・イルマー(Andreas Illmer)という記者。記事が載っているのは、BBCのサイトの中でも"World"というセクションの第一ぺージ(トップ記事という意味ではないけれど)であり、明らかに「世界」の読者に読まれることを意識して書かれた記事です。中身は、この問題をめぐるIOCや日本の政府、さらには五輪に批判的な日本人の意見などなど、このところ日本のメディアでさんざ書かれていることなので、むささびにはさして珍しいものではなかった。ただ記事の最期の部分にあった「おカネ以上の価値」(More than just money)というパラグラフについては語る価値があると思ったので簡単に紹介します。


日本の政府がオリンピックの開催にこだわるについては二つの背景がある、と。一つは2022年2月に迫った北京の冬季五輪です。アジアにおける日本のライバルである中国が主催する世界規模のイベントであり、
  • 日本には、何としてでも東京五輪を成し遂げようとする覚悟があることは疑問の余地がない。So there is little doubt that overall, Japan is prepared to go to great lengths to get the Tokyo Games done.
ということ。つまり日本の五輪推進派には中国に対するライバル意識がある、と。 

もう一つの背景が「復興」です。前回の東京五輪が開かれたのが1964年、戦後日本の復興を象徴するシンボルとして考えられた。豪メルボルン大学のジャック・アンダーソン(Jack Anderson)教授は
  • 日本は長期にわたる経済不振に悩んでいる上に、福島における津波と原発事故という災害にも見舞われた。東京五輪はそのような状態からの日本の復興のシンボルとなる。その意味で今回の東京五輪は日本にとって特に大切なのだ。Japan has seen economic stagnation for a long time, there has been the tsunami and the nuclear disaster of Fukushima, so the Games would have been as symbolic of a revival of Japan. It does take a special importance in that sense.
とコメントしている。

もちろん五輪は実施されるべきだ(Games should go ahead)というのと、実際に行われる(they will go ahead)というのは別問題で、近代五輪には3回(1916年、1940年、1944年)キャンセルされた歴史がある。いずれも世界規模の戦争が原因です。そのようなキャンセルの背景を考えると、
  • 逆風状態ではあるかもしれないが、IOCがこの五輪のキャンセルを頑なに拒否しているのを見ると、結局のところ7月23日に始まるだろうというのが専門家の見るところだ。ただそれがどのような形で始まるのかは相変わらずはっきりしない。 So despite mounting headwinds, the IOC's refusal to even consider a cancellation has most observers agreeing that this year's Olympics will indeed go ahead and kick off on 23 July - in what shape or form still remains unclear.
とBBCの記者は書いている。


一方、アメリカのTHE NEW YORKER誌が5月16日付のサイトで
  • コロナに対する政府の無為無策のおかげで、日本人の反オリンピック感情が高まっている。 The government’s inept response to the coronavirus pandemic has led to widespread discontent about hosting the Games.
という記事を載せています。政治家以外だれも望んでいないこのオリンピックを強行しようとする勢力に対して怒りを抱える日本人(furious Japanese citizens)の心理について語る文化エッセイです。こちらはBBCほどの世界的な影響力はないかもしれないけれど、五輪ホスト国の人びとの怒りが、このようなインテリ・マガジンにまで取り上げられるというのは珍しい現象なのでは?

▼むささびの英国人の友人などは「もちろん中止だよね」(They will be cancelled surely?)と言っています。コロナ禍を考えての話です。むささびの自己確認のために記しておくと、むささびがこの五輪に反対なのはコロナ禍のせいだけではありません。東北大震災と原発事故からの「復興」という発想そのものが不愉快なの。東京が賑わうことによって日本全体が盛り上がり、それが東北の「復興」を助けるという考え方を受け入れられないってこと。大きなものをさらに大きくして小さなものを少しでも大きくする…自分自身が「小さなもの」であると考えており、それが自分の出発点と思っているむささびには我慢ができないほど不愉快な発想だってこと。

▼さらに「我慢できないほど」不愉快なのが、何とかいう名前の大学教授・内閣参与の「この程度の感染で五輪中止なんて、お笑いだ」という趣旨の発言。この人はさらに「日本の緊急事態宣言といっても、欧米から見れば『屁みたいな』もの」とかいう発言をしたのだそうですね。つまり「英国やアメリカのような、戒厳令に近いやり方をするべきだ」と言っているのよね。この人の場合、自説支持のために客観的なグラフを示したりするのですね。ひょっとすると、彼の眼から見ると、ロックダウン緩和策が進められている(と報道されている)英国などはお手本中のお手本かもしれないけれど、彼は英国人がこれまで払ってきた「戒厳令」による犠牲についてはどこまで認識しているのか、疑問です。

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5)どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら


nonuplets:九つ子

5月7日付のBBCのサイトによると、西アフリカのマリ共和国の女性(25才)が赤ん坊を9人一度に出産したのだそうですね。女4人・男5人の「九つ子」です。多産に関するギネスブックの記録は、2009年にある米国人女性が記録した「八つ子」(octuplets)なのだそうです。実際には1971年にオーストラリア、1999年にマレーシアの女性が「九つ子」を産んでいるのですが、両方とも数日しか生存しなかったのだとか。米国人が生んだ8人は12才の今も元気に生きている。マリ共和国の九つ子供が誕生したのは5月4日ですが、将来ギネスブックの記録を更新できるかどうか…。

ちなみに双子から上の数の出産児を英語で言うと
  • 双子:twins
    三つ子:triplets
    四つ子:quadruplets
    五つ子:quintuplets
    六つ子:sextuplets
    七つ子:septuplets
    八つ子:octuplets
    九つ子:nonuplets
らしいのですが、ネットで調べる限り、5人以上は単に数で表す方が多いようです。五つ子はfive children/babies、九つ子はnine children/babiesという具合です。twinsとかtripletsのような言葉を使う場合、全体の数字を表したい場合は最後の"s"を忘れないこと。twinというと「双子のうちの一人」という意味になる。

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6)むささびの鳴き声

▼徒然なるままに。漫画家の富永一朗が亡くなったのですね。5月5日の「こどもの日」、96才、死因は老衰だとか。むささびは「チンコロ姐ちゃん」が好きだったのですが、漫画そのものも面白かったけれど、登場人物のセリフが良かったのよね。相手を見下すときに「ちゃんちゃらおかしい」と言いますよね。「チンコロ姐ちゃん」の登場人物が使ったのは「チャンチャラアハハでおならも出ねえや」というものだった。あれは良かった。


▼BBCが1995年に放送したのダイアナ妃とのインタビューに関連して「BBCの姿勢は誠実さと透明性の高い基準を満たしていなかった」(BBC fell short of the high standards of integrity and transparency which are its hallmark)とする報告書をBBCの独立調査委員会が発表したのですよね。そのことについて、5月21日(日本時間)のBBCのサイトが上のようなサイトを「英国」コーナーのトップに掲載しています。いわく
  • BBC's deceit over Diana interview worsened my parents' relationship - William ダイアナ・インタビューについてのBBCによる欺瞞が私の両親の関係を悪化させた(とウィリアム王子)
▼このような話題に王室メンバーのコメントを掲載するものなのですね。最近特に目に付く日本の権力者による秘密主義と三つ目の記事で紹介した中国における権威主義をBBCの問題と並べて考えると、英国における社会的な空気の通りやすさを羨ましいと思わざるを得ない。

▼コロナ関連のワクチン接種について、飯能市役所からむささびと美耶子宛てに予約日が決まったという連絡がありました。そのワクチン接種について、5月21日朝のTBSラジオのニュース番組を聴いていたら、キャスターが日本におけるワクチン接種率について「日本は190数か国中の120位前後、XXやYYのような国と同じようなレベルなんですよ、情けないと思いません?」という趣旨の「怒りのコメント」を述べていました。そのコメントを聴いて、むささびは心底情けない思いがしてラジオを切ってしまった。


▼日本が国際比較の点でどのレベルにいるとかいないとか…だから何だというのでしょうか?自分たちの子供の学業成績について自慢げに語る親と似ていません?(むささびは)その子供たちの学力については「そうなんですか」と感心するようなフリはできるけれど、それを語る親の無教養ぶりには醜いとしか言いようがないから黙ってその場を離れるしかない。あのTBSのキャスターはワクチン接種率の低い国々のことを見下すような口ぶりで語っていました。もう二度とあの番組だけは聴くまいと心に決めました!

▼時期があさって(5月25日)に迫っており、急な話で申し訳ないけれど、イベントのお知らせです。日本時間の午後8時~9時、ジェレミー・トーマスという英国の映画監督兼プロデューサーによるオンライン(Zoom)の講演会が行われます。この人はプロデューサーとしてベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』の制作にかかわったほか、北野武監督の『BROTHER』、三池崇史監督の『十三人の刺客』など、日本の映画制作にも深くかかわってきたのだそうです。この講演会(同時通訳)では、この人がなぜ日本の映画人と仕事をするようになったのか、彼なりの日本文化論などを語り、意見交換することになっています。


ジェレミー・トーマス

▼ジェレミー・トーマス氏は1949年生まれの72才だから、マーガレット・サッチャーが首相になったころは30才だった。その頃の日英関係というと、英国は「ヨーロッパの重病人」、日本は「アジアの経済的リーダー」と呼ばれたりしていた。むささびの記憶では、日本のインテリたちは、日本の経済力については密かに鼻を高くして落ち目の英国を見下していた。そのような時代を生きて、大島渚らとも親交のあったジェレミー・トーマスは、日本という国や日本映画・日本人などについて何を想っていたのか…興味がありますね。参加申し込みも含めて、講演会の詳細はここをクリックすると出ています。

 
▼最近は亡くなった人の話題が多くて寂しい想いですが、5月24日(つまり明日)はあのボブ・ディランの80回目の誕生日なのだそうですね。"Times they're changin'", "Don't think twice, it's all right" etc 本当にむささび世代には涙が出るほど懐かしい歌ばかりです。しかもうれしいことに、あのジョーン・バエズもディランと同じ年齢でまだ歌っているのだとか。"House of the Rising Sun" には感激しました!半世紀以上も前のことだった!

▼もう5月も終わり、むささびの道楽である野菜の栽培もトマト・キュウリ・ナスのような夏野菜の季節になりました。お元気で!

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