musasabi journal

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432号 2019/9/15
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
上の写真は1980年代半ばの上海の子どもたちです。撮影したのは英国のカメラマン。説明は最初の「スライドショー」をご覧ください。カメラマンによると、子供たちは二人とも青い目の人間が自分たちを撮影していることを意識していて、「へんなヤツだね」とか言いながら笑っているところらしい。昔、日本でも「ヘンなガイジン」というギャグが流行ったことがありましたよね。

目次

1)スライドショー:30年前の中国
2)日英韓ニュース事情
3)Facebookの幽霊たち
4)労働党は何をしたいのか?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)MJスライドショー:30年前の中国

最近英国で話題になっている本にエイドリアン・ブラドショー(Adrian Bradshaw)という写真家の手になる"The Door Opened"という写真集があります。「1980年代の中国」をテーマにする写真集で、いわゆる街頭写真(street photography)というジャンルに入る作品ばかりを集めたもので、普通の中国人の普通の生活風景を見ることができます。

ブラドショーが初めて中国へやって来たのは今から35年前の1984年、中国語と中国文化を学ぶ学生としてやってきたのですが、昔父親から誕生日プレゼントにもらった東ドイツ製のカメラを持っていた。1984年以来ずっと中国に滞在しながら写真家としての活動を続けているのですが、撮りまくった約200万枚の写真の中から「1980年代の中国」をテーマにするものを中心にしているのが"The Door Opened"です。

中国では1978年12月、鄧小平の指導の下に開催された第11期三中全会(中国共産党全体会議) において、経済建設の重視と改革・開放政策を採用するという歴史的な決定が行われています。1949年の建国以後、長期にわたって停滞を続けていた中国経済が、長い眠りから目を覚ましたのが1978年末のことであり、その開放政策によって私有制と市場メカニズムが徐々に導入され始めたのが1980年代の初めだった。


▼このスライドショーの13枚目に紹介されている安徽省の合肥という町の朝市風景(上)のものが特に注目すべき写真なのだそうです。近郷の農民たちが持ち寄った農作物を売っている風景なのですが、中国の経済改革は農業分野から着手され、それまでは国家が決めていた価格を農民自身が決めることが許されるようになった。それによって農業分野における生産性が大幅に改善され、それが農業以外の産業分野にも適用されるようになったのが、中国の経済成長の背景だった。「農業こそが中国にとっての新しい経済時代が始まった分野だった」(This is where the new economic era really started)とブラドショーは言っています。

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2)日英韓ニュース事情



むささびジャーナル430号で、最近の英国人がBREXIT関連のニュースに疲れ切っているという話をしました。その際に、ロイター通信がオックスフォード大学と共同で運営しているジャーナリズム研究所(Reuter Institute)の調査(2019年版)のことを短く紹介しました。この調査ではいろいろな国における最近のメディア事情が紹介されている。人びとがメディアおよびメディアが報道するニュースというものに何を感じているのかを報告しているのですが、それを見るとそれぞれの社会の実情が見えてくるような気がして面白い。ロイターの報告書では38か国におけるメディア事情が報告されているのですが、日本・韓国・英国の事情をかいつまんで紹介します。ここをクリックして実際の報告書をご覧になることをお勧めします。


まず英国から。ニュースを知るために「先週利用した」(used last week)メディアのトップ5はそれぞれ次のようになっている。


「従来メディア」の最初の3つはテレビなのですが、4・5位は紙媒体としての新聞です。Daily MailもThe Sunも大衆紙と呼ばれる新聞で政治的な傾向としては「保守」であり、両方ともBREXIT推進派に属する新聞です。一方の「オンライン・メディア」で目立つのはMail onlineが第2位、Guardian onlineが第3位につけていることです。両方とも新聞社が運営しているサイトなのですが、前者は明らかに保守、後者はリベラル派の代表格のような新聞です。「従来メディア」では第5位(15%)だったThe Sunは「オンライン」でも6位(5%)と健闘している。Mail onlineとThe Sunの健闘ぶりを見ると、英国のEU離脱を支持しているのが、必ずしも極右勢力ではなく、いわゆる「庶民」であることが見えてくるような気がする。

では日本はどうか?


日本の場合、「従来メディア」のトップ5に新聞が入っていないのですね。辛うじて「地方紙」(Regional or local newspaper)が第6位と健闘しているだけで、発行部数では1位と2位の読売と朝日という全国紙が8位と9位にいるだけ。ただロイターの報告書は、日本では読売と朝日に代表される全国紙は「未だに大いに影響力がある」(still enormously influential)と言っている。

ロイター・ジャーナリズム研究所によると、日本では新聞のデジタル化が他国に比べると遅れているのだそうですが、それは印刷媒体としての新聞の販売収入が高いことが理由である、と。例外が日本経済新聞で、日本では初めて「紙の日経」より「オンラインの日経」が先にニュースを流す‘digital first’方式を採用している。

次に韓国ですが、告白せざるをえないのは、むささび自身が韓国の事情に非常に疎いということで、とりあえず報告書の言うままに紹介してみます。


従来メディアは圧倒的にテレビの世界で、トップ10のうちトップ8がテレビ局、新聞社はようやく9位に朝鮮日報(19%)、10位に中央日報(同)が来ている。また「従来メディア」では最もよく見られているのはJTBC Newsという新聞社系(中央日報)のテレビ局であり、公共放送のKBSは第2位なのですね(第3位のYTN Newsはニュース専門のテレビ局)。

ネットメディアになると、日本よりははるかにたくさんの人が利用していることがわかる。日本の場合、ポータルサイトのYahooが54%である以外は、どれも1桁台です。韓国の場合はNavarとDaumというポータルサイトも大いに使われているけれど、テレビ・新聞社系のニュース・サイトもかなり使われている。

韓国の場合、日本や英国と違うのはニュースの送り手としてのメディア組織が持つ「ブランド・イメージ」の点で中央日報系のJTBCがトップで、第2位はニュース専門のYTNときて公共放送のKBSは3位に甘んじている。「~が言っているのだから間違いないだろう」というあれで、英国ではBBC、日本ではNHKと相場が決まっていません?「ブランド・イメージ」なるものが、正しいかどうかは別にして、ですが・・・。



ロイターの報告書には、メディアを通じて流布される「ニュース」に対する信頼度(trust in the news)が示されているのですが、これが国によってかなり違う。読者・視聴者からの信頼度が最も高いのはフィンランド(59%)、次いでポルトガル、オランダ、カナダなどが挙げられているのですが、英国(40%)は38か国中21位、日本(39%)は25位、韓国(22%)は38か国中38位(最下位)となっている。ロイターによると、韓国メディアの多くが社会的な有力者や有力企業による問題行動を積極的に暴露することがないと考えられているのだとか。

▼ロイターの報告書の中でむささびが個人的に関心を持ったのが、ネットメディアの世界における「有料記事」に対するそれぞれの国の人びとの態度です。むささび自身は日本のものであれ外国のものであれ、お金を払って記事を読むことはしていないのでありますが、日本人の場合、料金を払って読んでいる人は7%、英国人の場合は9%、韓国人の場合は10%です。ニュースへの信頼度トップのフィンランドでは16%が「払う」と言っているのだそうです。

▼それから英国におけるBBCの存在感はすごいですよね。「従来メディア」としてのみならず「ネット」の世界でもBBCのウェブサイトの存在感が群を抜いている。NHKのサイトなんて見たことあります?英国社会におけるBBCの存在感はちょっと大きすぎるのでは?と思いたくなるくらいです。

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3)Facebookの幽霊たち


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少しばかり古い話なのですが、6月18日付の書評誌・London Review of Boos (LRB) に出ていた "Ghosts in the Network"(ネットワーク上の幽霊)というごく短いエッセイが気になりました。ここでいう「ネットワーク」はFacebookのことなのですが、「幽霊」はかつてはユーザーとして投稿したりコメントしたりしていたけれど、もうこの世には存在しない人びとのことをいいます。LRBのエッセイを書いたのはレイチェル・コノリー(Rachel Connolly)というジャーナリストなのですが、話題に上っているのはオックスフォード大学インターネット研究所(Oxford Internet Institute:OII)のカール・オーマン(Carl Öhman)とデイビッド・ワトソン(David Watson)という研究員が発表した "Are the dead taking over Facebook?" (Facebookが死者に占領される可能性)という変わったタイトルの論文です。


今年(2019年)の第二四半期(4~6月)におけるFacebookの月間アクティブ・ユーザーの数は24億1000万人なのだそうです。月間アクティブ・ユーザーとは一か月で最低一回はFacebookを使う人間のことですよね。ではこのうち「幽霊」(故人)は何人くらいなのか?それは誰にも分からない。Facebookが明らかにしないから・・・という人もいるけれど、実際にはFacebook自身にも分からないのではないかと、OIIの研究者は言っている。

そこでこの研究者たちはFacebookが広告営業用に明らかにしている、年齢別のユーザー分布の数字を入手し、これと世界の平均寿命の統計数字を掛け合わせて推測してみたところ、今から約80年後(2100年)の「幽霊」ユーザーの数は最高で49億人に達する。これはFacebookのユーザーが現在のペースで増え続けたと仮定しての数字であり、いわば最大限のものなのだそうです。 ではこれから世紀末までの80年間、一切新規ユーザーがなかったと仮定すると2100年時点での「幽霊」は14億人で、これはいわば最も少なく見積もった数字です。世紀末における実際の幽霊数は49億と14億の真ん中あたりなのではないかとのことであります。


レイチェル・コノリーによると、Facebookのユーザー(アカウントの所有者)が死去した場合、友人や家族がそれをFacebook側に報告してアカウントを消してもらうことはできるかもしれない。あるいは生前から自分の代理人のような人間を指定しておいて、死後はアカウントを廃止してもらうことも・・・どれも理論的には可能かもしれないが、現在のところユーザーが死亡してもアカウントが廃止されるというシステムはないのだそうですね。


そうなると例えばFacebookに投稿されたビデオが「最優秀賞」に選ばれたのに、投稿者がこの世にはいないということは大いにあり得るわけですよね。さらにFacebookに投稿された情報を頼りに、イベントへの招待者リストを作成してみたら、多くの招待客が故人だったとか・・・。この4月、Facebookの最高経営責任者の立場にある人間が、ユーザーの死去を察知するシステムの開発を早急に進めていることを明らかにしたけれど、問題はそれほど簡単ではない(not straightforward)のが現実らしい。

ユーザーの生死さえ不確かなのだから、情報源としてのFacebookは全くあてにならない、とコナリーは批判します。Facebookの運営に欠かせないのが広告収入ですが、2017年にFacebookが広告主に示した自社情報によると、18才から24才までのユーザーが4100万人となっていた。が、政府による国勢調査では、この年齢層のアメリカの人口は3100万人だった。


いわゆる「アクティブ・ユーザー」の数もいくらでも偽造できてしまう。ひと月に一回程度しか使わないのに「アクティブ」に入れてしまうこともできる。またサイトによっては、長い間サービスを利用しないユーザーは削除するところもあるけれど、Facebookはそれをやっていない。

オックスフォードのインターネット研究所の研究者たちは、Facebookのアカウント情報について、デジタル時代の文化遺産であり、将来の歴史研究者たちにとって非常に貴重な(invaluable)情報を提供するものとなるかもしれないと言っているけれど、コナリーはこれを疑問視している。彼女によれば自分自身のアカウントにある「いいね!」とか「シェア」などは全くいい加減なやり方でボタンを押しているだけであり、マジメにとられるような類のものとはとても思えない。

現代のFacebookに対する集団信仰のような現象を検討しても将来を予測することには繋がらない、とコナリーは言います。インターネット研究所の研究結果は、将来の予測というよりも現代の観察に役に立つものになるかもしれない(not as a prediction of the future, but as a commentary on the present)と。

▼そういえば数か月前に、むささびの「お友だち」が亡くなったときには、家族とおぼしき人からの「生前はお世話になりました」というニュアンスの訃報メッセージがFacebook上に掲載され、多くの友人からのお悔やみのメッセージが載せられた。Facebookのアカウントそのものは今も存在しているけれど、亡くなった時点のまま変わっていないので、故人のものであることが一目瞭然で分かる。この人の場合、カメラマンだったのでFacebookでも彼が写した作品がたくさん紹介されていた。それがそのまま残っているのは、私としては有り難い。

▼いずれにしてもコンピュータを通して人間が付き合おうとすると、どうしてもこういう問題が起こりますよね。むささびジャーナルの場合、発行者がこの世から消えたら届かなくなるのだから分かりますよね。分からないのは、受け取りてが未だにこの世に存在しているのかどうかということです。同年輩が多いので、そのあたりが気になるのですが、直接聞くわけにいかないし、いちいち知らせてくれることもないだろうし・・・。

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4)労働党は何をしたいのか?
 

とにかく最近の英国メディアを見ていると、飽きもせずにBREXIT関連の動きや発言を伝えまくるので、英国人でなくてもいい加減疲れてくる。現在何がどうなっているのかをはっきりさせましょう。

まず、英国のEU離脱日は10月31日ではありません。3か月延期して来年の1月末ということになっている・・・正確に言うと、ボリスはEUに対して離脱日の延期を要請することを義務付けられている。議会がそれを決め、女王もそれを承認したからです。それをやらないと法律違反になる。なのに、です、昨日(9月14日)のBBCのサイトはボリスが遊説先で「10月31日の離脱は誰にも止められない」(won't be deterred by anybody)と発言したと伝えている。それ以前にEU側から然るべき譲歩を引き出して「合意離脱」に持ち込む可能性について「慎重だが楽観的」(cautiously optimistic)であるとも言っている。


いずれにせよ、EU側と交渉した結果として得られる譲歩を含めた「離脱のための合意案」は議会に提出されその承認を得なければならない。そんなことが出来るのか?しかも下院は9月10日から10月13日までボリスによって閉会させられている。つまり現在はなにもすることができない。一つの可能性として考えられるのは、ボリスの努力にもかかわらず、離脱が来年の1月末まで延期されることになり、その間にボリスが国会を解散して選挙に打って出るということです。要するに自分のやろうとしていることについて「国民に聞いてみようじゃんか」と開き直るということ。

だったとして、むささびがお話ししたいのはボリスのことではなく、野党第一党である労働党のことです。9月11日付のBBCのサイトに
  • Brexit: Labour manifesto to offer vote on Leave and Remain 労働党、選挙マニフェストで離脱か残留かを選択する投票を呼びかけ
という見出しの記事が出ている。次なる選挙が行われた場合、労働党は選挙マニフェストで、自分たちが政権を獲得した暁には「EU離脱についての国民投票をもう一度行う」と約束することになっている・・・というわけですよね。その選挙で労働党が勝利した暁には、労働党政権下で、EU離脱をめぐる国民投票を再度実施する(further referendum on Brexit)ことを約束している。
 

問題はその際の選択肢です。2016年の国民投票では「離脱か残留か」(Leave or Remain)の二者択一だった。そして「離脱」が勝ったのですが、ティリザ・メイの下で「どのように離脱するのか」をめぐってもめにもめた。EU側との合意の上で離脱するというのがティリザの考えであり、(場合によっては)「合意なしの離脱」もありだとするのがボリスら強硬派の主張だった。

コービンの労働党が考えているのは「合意離脱か残留か」の二者択一です。コービンは「合意離脱」のことを「信用が置けそうな離脱案:(a "credible Leave option")」と呼んでいるけれど、いずれにしても労働党政権がEUと交渉した結果生まれる「合意案」を基本にした「離脱」であるわけです。


実はこの辺りにコービン労働党の苦しさがある。2016年の国民投票の際も、労働党の公式見解はEU離脱反対だったのに、党首コービンの言動がいまいちはっきりしなかった。それが現在も尾を引いている。コービンの口をついて出るのは「合意なき離脱反対」であって「離脱そのものに反対=残留」という言葉は出てこないわけです。

労働党のウェブサイトを見ると、イの一番に「労働党は2016年の国民投票の結果を容認する」(Labour accepts the referendum result)と言っている。一番大切なことは労働者の生活の向上であり、国民投票の結果、EUを離脱することが決まった以上は、英国民の生活向上のために有利な離脱条件をEUと交渉する、これが労働党の政策であるということです。


あの国民投票から3年、EU離脱に対する政治的・社会的なムードも変わってしまった。特に強硬離脱を唱えるボリス・ジョンソンのような極端な人物が保守党党首(=首相)に就任してしまったことで、保守党が分裂状態であることは言うまでもないけれど、それに対抗するはずの労働党もまた「合意離脱」を押すグループとあくまでも「残留」を押すグループに分裂してしまっている。党幹部および労組関係者からすると、2016年の国民投票で北イングランドの労働者たちが大挙して「離脱」に走ってしまったことを忘れることができないわけです。

BBCの記事は「労働党は選挙期間中も、有権者に対してソフト離脱なのか残留なのか」をはっきり訴えることができない」のだから、
  • 将来の労働党政権がEUに残ることを支持するのか、離脱することを支持するのかを有権者に対してはっきり伝えることができない状態になってしまうだろう。 the leadership will be unable to tell voters if a future Labour government would advocate coming out or staying in the EU.
と言っている。今月末に労働党大会が開かれることになっており、BBCによると、党内の多数を占めるとされる離脱反対派は、これを機にEU残留支持を党の方針として打ち出すように迫るものとされている。コービンらの姿勢では、有権者に対して立場を鮮明にしないということになる。となると労働党支持者の中から自民党(最初からEU残留を主張している)に流れる人間が続出する可能性もある。

▼つまりコービンらの労働党幹部は、英国の有権者の声がいまいち読み切れていないということです。ボリスのような強硬離脱は望んでいないのは分かるけれど、かといって今さら「残留」を主張するのは、あの国民投票の結果を容認していないことに通じるし・・・。ま、とりあえず2案を提案して、どちらをとるかは有権者に決めてもらおうという姿勢です。よく言えば「民主的」かもしれないけれど、「自分の主張がない」とも解釈できる。

▼ところで、英国がEEC(欧州経済共同体)に加盟したのは1973年、エドワード・ヒース率いる保守党が政権についていた。ただ2年後の1975年、労働党のハロルド・マクミラン首相の下で、そのままEEC加盟を続けるかどうかの国民投票が行われた。結果は67%対33%という大差で加盟を続けるという主張が勝利した。興味深いのは、サッチャー率いる保守党(野党)が「加盟継続」で結束していたのに対して、労働党は分裂していたことです。特に労働党左派がEECへの加盟に反対していたのですが、その理由は「英国の主権が犯される」とか「他の加盟国から安い労働力が英国へ流入して自分たちの仕事が奪われる」などというものだった。

▼1975年の国民投票が行われたとき、コービン現党首は下院議員になりたてだったのですが、EEC加盟に反対したトニー・ベンは党内左派の重鎮だった。ひょっとするとコービンの欧州観もトニー・ベンの影響を受けていたかもしれない?

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5) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 
password:パスワード

ネット時代、何をするにもパスワードが必要ですよね。下記はパスワードを登録したい人間と受け付ける側(コンピュータ)のやりとりです。"cabbage"(キャベツ) という言葉をパスワードとして登録したかっただけなのに・・・。

cabbage
ダメ、最低8文字必要です。
boiled cabbage
ダメ、最低一つは数字を入れてください。
1 boiled cabbage
ダメ、言葉と言葉の間にスペースを入れないで。
50boiledcabbages
ダメ、最低一つは大文字にしてください。
50BLOODYboiledcabbages
ダメ、大文字を一つ以上続けては使えません。
50BloodyBoiledCabbagesWillKillYou
IfYouDon'tGiveMeAccessImmeidiately
ダメ、カンマやピリオド、アポストロフィなどは使えません。
NowIamGettingReallyPissedOff50Bloody
BoiledCabbagesWillKillYou
IfYouDontGiveMeAccessImmeidiately
ダメ、このパスワードは他の人によって使われています...

あるギャグサイトに出ていたもので、むささび同様、悪戦苦闘しているのですが、見ていて悲しくなる。身につまされるのよね。「言われたとおりにやったじゃんか、ええ加減にせえ、このお!!!!」という感じです。
 
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6)むささびの鳴き声 
▼毎朝、むささびが最初に開くウェブサイトはBBCなのですが、本日(9月15日)のトップニュースはショッキングでした。"Drone strikes hit Saudi oil production" というのですからね。サウジアラビアの油田が、イエメンの反政府勢力が打ち上げたドローンによって攻撃されたというのです。火の海に包まれた石油施設の写真がついているのですが、記事によると、この攻撃によって一日500万バレルの石油生産が影響を受けたとのことだった。500万バレルというのはサウジアラビアの一日あたりの石油生産の半分にあたるのだそうですね。

▼言うまでもなく、このニュースがショッキングなのは攻撃がドローンによって行われたという部分ですよね。攻撃した側には人命の危機が伴わない。今さらそんなことに驚いている方がおかしいのですが、それにしても、ですよね。太平洋戦争における日本の「カミカゼ特攻隊」も、18年前のニューヨークにおける9・11テロも、遠い遠い昔のことなのですね。カミカゼも同時多発テロも、人間が人間に対して行った行為であり、やった本人たちは少しも悪いとは思っていない、どころか(おそらく)英雄扱いなのですよね。

▼4つめの記事(労働党は何をしたいのか)ですが、ケンブリッジ大学のデイビッド・ランシマンという政治学の先生によると、2年前にティリザ・メイの下で選挙が行われたころの英国は「4:4:2」の国だったのが、今では「2:2:2:2:2」の国になってしまったとのことです。「4:4:2」の国とは、有権者の投票の4割が保守、4割が労働、残りの2割が「その他」に配分される国ということです。つまり有権者の8割が保守党もしくは労働党に投票していた。二大政党とはよく言ったものですよね。

▼それが現在は保守と労働の4がそれぞれ分裂状態で「2:2:2:2:2」という状態になってしまっているということです。理由はBREXITです。最初の「2:2:2:2」保守党・労働党内における分裂なのですが、最後の「2」は、これまで弱小政党とされていた集団の集まりで、全国規模の政党としては離脱反対の自民党、大賛成のBREXIT党が中心です。自民とBREXIT党(特に後者)はEU離脱という現象があってこその存在です。離脱したあとはどうなるのでしょうか?ボリスはBREXIT党について「問題外の存在」とバカにしているようです。

▼Facebookを見ていたら、60代半ばと思われる英国人(男性)が、BREXITをめぐる最近の国論分裂状態について「家族同士が感情的に対立して口もきかない状態になっている」と嘆いていたのですが、彼はその理由として"gutter press"(ハキダメ・プレス)の存在を挙げていました。対立を煽り立てて部数を拡大しているというのですが、この人が「EU残留」を望んでいるところを見ると、いわゆる「ハキダメ・プレス」はサンとかデイリーメールのような存在を意味している。

▼どの国にも"gutter press"はいますよね。日本における最近の例としては「嫌韓大特集」をやった挙句に直ちに謝罪コメントを出してしまった『週刊ポスト』がありますよね。発売日に謝罪コメントを出したというのはホントですか!?ジャーナリストの江川紹子さんは、「何を謝っているのかよく分からない『お詫び』だが、反発の大きさに慌てて出したものだろう」と言っている。週刊ポストは「誤解を広めかねず」と言っているのですが、江川さんは「悲しいほどの『軽さ』だ」と言っています。

▼週刊ポストの特集について日本人が本当に悲しいと思うべきなのは、あのような「嫌韓特集」によって部数が増やせると出版社に思わせるような「世論」の存在です。情けないと思うけれど、この点で日本人はシンゾーらにやられてしまっている。

▼このむささびを千葉県でお読みの皆さまには、言うべき言葉もありません。よろしければ(それが可能になったら)近況などお知らせを。

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