musasabi journal

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399号 2018/6/10
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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
埼玉県は雨、いよいよ梅雨入りのようです。間もなく話題の米朝会談が開かれますよね。首脳会談と言えば、ニクソンと毛沢東、レーガンとゴルバチョフ、ケネディとフルシチョフ等々、両者ともに「国民の支持を得ているリーダー」という権威めいたものに包まれていましたよね。トランプとキムさんは?申し訳ないけれど二人ともそれを感じさせない。前者はツイッター以外にやることがない不動産屋のおっさん、もう一方は独裁者のドラ息子・・・そんな二人が「ディール」(取引き)して、どのような世界を作ろうと言うのか?上の写真、ヘルシンキ交響楽団のオーボエ奏者だそうです。

目次

1)MJスライドショー:眠る動物
2)ロンドンで米大リーグ?ムリ・ダメ・アウト!
3)"Woman" は侮辱語?
4)否定的メディアがトランプを生む
5)アメフト問題:アイルランドでの伝わり方
6)どうでも英和辞書
7)むささびの鳴き声


1)MJスライドショー:眠る動物

National Geographicのサイトを見ていたら "24 Endearing Photos of Animals Sleeping" という写真企画が出ていました。野生動物が眠っているところを集めたもので、ライオンからクジラまでいろいろな動物の寝顔が写っているのですが、当然、オオカミもワニも「平和」そのものという雰囲気であります。記事によると動物が眠っている場所は、そこが彼らにとって最も安全な場所であることを意味するので、それからも習性を知るヒントにはなる。例えば北極ギツネには「秘密の穴」(secret den)があり、ヒョウは木の上で寝る、クジラは群れを成して「立って眠る」のだそうです。


そもそも動物(人間も含めて)は何故眠る必要があるのか?実はよく分かっていないのだそうですね。科学者によっては、眠りがその日に起こったことを整理して記憶として脳に貯めこむという仮説を立てている人もいるし、生きていくうえでのリセットボタンの役割を果たすという説も。Bull frogという食用ガエルは全く眠らないのだそうですね。カエルの寿命がどのくらいなのか知りませんが、眠る動物と眠らない動物では寿命に違いでもあるんですかね。


でも我々(人間)が眠るのは長生きしたいからではないですよね。不眠という状態が不快感を伴うからですよね。でも眠れないと何故人間は不安を覚えるでありましょうか?眠れないということは、眠気がないということ、だったら起きてりゃいいじゃん・・・これはむささびが自分の奥さんから教わった「常識」であります。言われてみるとそうですよね。24時間眠らなかったからといって死ぬわけじゃないもんな、でもなぜ睡眠薬などというものが存在するんですか?なんてことを考え始めると眠れなくなる、この際、むささびが夜も寝ないで制作したスライドショーでも見ることにしよう!

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2)ロンドンで米大リーグ?ムリ・ダメ・アウト!

来年(2019年)3月、米大リーグ(MLB)の開幕戦が東京ドームで開かれることになっていますよね。オークランド・アスレチックス対シアトル・マリナーズの2連戦がそれで、MLBの公式戦が日本で開かれるのは7年ぶりなのだとか。知らなかったんですが、来年はロンドンでもMLBの公式戦が見られるのだそうですね。これは全く初めてのことで、6月にニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックスの2連戦が見られる。会場は2012年のロンドン五輪の会場となったロンドン・スタジアムだそうです。



5月10日付のThe Economistの記事によると、アメリカのプロ・スポーツの試合が英国で行われる例としては、2007年以来やっているアメフト(NFL)、2011年からやっているバスケットボール(NBA)がある。プロ野球で3例目ということになる。

要するにアメリカ国内でのビジネスが頭打ち状態だから海外でひと儲けしようというわけですが、MLBといえば年間の総収入100億ドルでNFLに次ぐ世界第二のリッチなプロ・スポーツです。ただThe Economistによると昨年(2017年)の観客動員数の7300万は2002年以来の最低だった。これまでにも日本や南米への遠征はやっているけれど、ヨーロッパは来年のロンドンが最初です。


そのレッドソックスvsヤンキース戦ですが、The Economistによると「赤字間違いなし」とのこと。MLBとしても来年の試合は今後のヨーロッパ進出のPR計画の一環として考えている。一方受け入れるロンドンもサッカーのオフシーズンに少しでもこのスタジアムを使ってもらえれば有難いという思惑もある。

対英進出については先輩格であるアメフトの場合、2017年の試合は8万5000人の観客を動員したし、テレビのハイライト番組は約80万人が観ている。サッカーのハイライト番組の場合は400万人が観ていることを考えているとかなりの開きではある。世論調査機関のYouGovが行った観るスポーツの人気度調査によると、59%の英国人がアメフトを「非常に退屈」「かなり退屈」なスポーツであると考えている。野球はこの調査の対象に入っていないけれど、似たようなスポーツであるクリケットについて58%の英国人が「つまらない」と答えているのだから、野球関係者は「あまり期待しない方がいい」(don't count on it)とのことであります。

英国人に受けるスポーツ・受けないスポーツ: YouGov
▼観るスポーツとしてのゴルフの不人気は意外な気がしないでもないけれど、英国人にとってはゴルフは「やるスポーツ」ということなのでしょうね。クリケットについては、何をやっているのか、むささびにはさっぱり分からない。ビリヤードと同じようなスヌーカーはテレビ中継があるけれど、なぜか飽きなかったのを記憶しています。

▼英国で野球ですか?観るスポーツとしては無理だと思うけどなぁ。野球というゲームは静止している場面が多すぎる。ピッチャーが投球する際にキャッチャーからのサインをじっと見る、投げる、打者が見送る・・・また同じ動作が繰り返される・・・ようやく打った!センターフライでアウト、それで終わり、そしてまた最初のシーンが繰り返されて・・・常に動いているサッカーやラグビーに興奮する人たちにしてみれば、野球は見ていてイライラするだけでしょう。むささびのような野球ファンが、「静止」もまた「動き」なんだよ、なんて言ったって「非文明人間」には分かりっこない。むささびに言わせると45分も途切れなく走り回って、わずか1点だの2点だのを競うサッカーなんて見ていて疲れるだけ。

▼それはともかく、日本におけるプロ野球人気ですが、TBSが今年からラジオ中継をやらなくなりましたね。ひどい時にはNHKを含めたラジオ局が全部同じ野球のゲームを中継したりしていたことを考えるとこれは画期的です。それから地上波の日テレがジャイアンツの試合中継をやらなくなって久しいですね。ただ東京ドームのジャイアンツ戦は相変わらず超満員なのだそうですね。

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3)"Woman" は侮辱語?

保守派のオピニオンマガジンであるThe Spectatorのサイト(5月26日)に
という見出しのエッセイが出ています。書いたのはコラムニストのマシュー・パリス。


何のことかと思ったら、最近、ジョン・バーコーという英国下院の議長が議事進行中に、下院院内総務(Leader of the House)という要職にある女性議員(保守党)のことを、あろうことか'stupid woman'(バカな女)と呼んでしまったことを話題にしている。大きな声で怒鳴りつけたというわけではなく、ちょっとしたつぶやきで舌打ちと同時に口走ってしまった。今回の失言については議会において明確に謝罪をした。ジョン・バーコー(保守党議員)が下院議長になったのは2009年だから今年でほぼ10年ということになるのですが、これまでにも議員を怒鳴りつけたり、汚い言葉を使ったりすることで悪名が高い。

ただThe Spectatorのコラムニストであるマシュー・パリスが問題にしているのは、議長の失言そのものではなくて'stupid woman'という表現における‘woman’という言葉の持つニュアンス(意味合い)のことです。'stupid'という言葉が侮蔑的な言葉であることは間違いないけれど、下院議長が意識したかどうかはともかく‘woman’という言葉にも相手を見下すような侮蔑的なニュアンスがあるのではないか・・・ということです。例えば'stupid woman'と呼ばれた院内総務が下院議長のことを'stupid man'と言い返した場合、「侮辱的だ!」として大騒ぎになったりするだろうか?


このあたりのことになると、英語を母国語としないむささびにはよく分からない。ただ侮蔑的な形容詞(stupid, ugly, silly etc)の後ろに普通の名詞を置いてみるとパリスの言っていることは漠然とではあるけれど伝わってはくる。'stupid American'と言っても特定の人物を侮辱することにはなるけれど、アメリカ人全部を侮辱したとはとられないのでは?ということです。'stupid cyclist', 'stupid engineer', 'ugly runner' etc...という具合です。でも'stupid woman'となるとちょっと違ってくる。

つまり‘woman’という言葉そのものに侮蔑的な意味合いが存在している、と。マシュー・パリスによると、英国で使われている英語における似たような例として‘Welsh’(ウェールズ人)、‘Jew’(ユダ人)、‘Pakistani’(パキスタン人)などがあるのだそうです。知らなかったのですが、政治の世界では‘Welsh’ではなくて‘the people of Wales’というのが普通だそうです。なのにスコットランド人については‘the Scots’とか‘Scotsman’というのが当たり前で‘the people of Scotland’なんて誰も言わない。


ちなみに'homosexual'という言葉もニュアンスとしては微妙なところです。パリス自身が同性愛者であり、パートナーは男です。そのことによってあからさまな嫌がらせを受けることはある。ただ自分が'homosexual'と呼ばれることに抗議などしないだろうと言っている。慣れてしまったということもあるけれど、そのことに抗議をすると自分自身の存在を否定することに繋がるからだと言っている。で、'stupid woman'と呼ばれた院内総務に話を戻すと、'stupid'について抗議するのは当然としても'woman'については、自分がwomanであることに誇りを持つべきだ、というのがマシュー・パリスの意見です。

▼日本語の場合「女」というのか「女性」というのかでかなりニュアンスが違ってくる。「アホな女」とは言うけれど「アホな女性」とは言わないよね。ただ英語と違って、それは男にも言えるのでは?「アホな男」とは言うけれど「アホな男性」とは(普通は)言わない。つまり「女」という言葉も「男」という言葉も侮蔑的なニュアンスがあり得るということですよね。

▼上の写真をクリックすると、今から7年前の2011年7月13日の下院におけるバーコー議長の奮闘ぶりを見ることができます。当時はキャメロンの保守党政権だったのですが、閣僚である児童問題担当大臣という人物が、指名もされていないのに大声でヤジを飛ばしたりして議事妨害的行為に出ていた。そのことに腹を立てたバーコー議長の発言です。
  • 静粛に・静粛に(Order, order!)・・・Mr David・・・<ヤジで聞き取れない>静粛に・・・Mr David・・・<再びヤジ>静粛に。児童問題担当大臣、静かにしなさい、大人の振る舞いをしなさい、それが出来ないのなら、それがあんたの能力を超えているというのなら議場を出なさい、あんたなんかいなくてもやれるんだ・・・<中断>静粛にしなさい。これはとても許される行為ではない、国民が・・・<ヤジで中断>可笑しくなんかない。可笑しいと思っているのはあんただけだよ。全く可笑しくもなんともない、侮辱だ・・・
▼この種のやりとりがHansardという議事録にはすべて文字として公開されていて、しかも非常に使いやすい。日本の国会の議事録を見ようと思ったのですが、あまりにもややこしいので諦めました。

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4)否定的メディアがトランプを生む


ちょっと古いけれど、2月17日付のGuardianに変わったエッセイが出ていました。「変わった」というのは、読み終わってからむささびがその中身に賛成なのか反対なのか、よく分からない心境に陥ってしまったということです。書いたのはスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)というアメリカの社会心理学者で、見出しは次のようになっている。
要するにメディアの報道をそのまま受け取ってしまうと、世の中どうしようもないほど狂っているという気分に陥って滅入ってしまうけれど、報道には世の中の悪い面だけを誇張するという傾向があるのだから気を付けた方がいい・・・と、これは読者に対するアドバイスですが、筆者のメッセージはむしろ否定的な報道ばかりに力を入れがちな編集者に向けられている。



ピンカーによると、現代のアメリカのジャーナリズムの世界において文句なしに信じられている考え方がある。それは「真面目なニュース」(serious news)とは「世の中間違っている」というニュースのことであるという考え方である、と。ジャーナリストの責任は悪いニュース(negative coverage)を伝えることだとジャーナリストや編集者たちが信じているということです。その結果として(例えば)2016年の調査によると、圧倒的多数のアメリカ人がISISのテロに関するニュースを熱心に追いかけており、77%のアメリカ人がISISの存在はアメリカという国の存在と生存を脅かすものであると信ずるにいたっている。

データ研究で知られるカレフ・リータルという科学者が、言語を通じて時代の風潮を探る「感情採掘」(sentiment mining)と呼ばれる方法を駆使して1945年~2005年の60年間、ニューヨーク・タイムズに掲載されたすべての記事を分析したことがあるのだそうです。記事の中で(例えば)good, nice, terrible, horrificのような形容詞がどのような頻度で使われているかなどを調べてみたわけです。それによると1960年代から70年代初期にかけて「暗い」(negative)ものが多く、80~90年代に「ほんの少しだけ」(just a bit)明るくなり、21世紀に入ってからはずっと暗い雰囲気が続いているのだそうです。1960年代から70年代初期と言えば、ベトナム戦争やウォーターゲート事件の時代であり、80年代~90年代は大統領でいうと、レーガン、ブッシュ(パパ)、クリントンの時代であると同時に冷戦が終わった時代でもある。そして21世紀に入ってからというと、2001年の9・11同時多発テロとそれに続くアフガニスタンやイラクでの戦争etcというわけです。


ピンカーに言わせると、アメリカのメディアが流し続けている「悪いニュース」で常にやり玉に挙げられてきたのがワシントンの政治家たちであり、そのルーツは1960年~70年代に遡るのですが、メディア報道のおかげでアメリカ人の間に「選挙で投票などしても何の意味もない」(Why should I vote? It’s not gonna help)というシニカルな気分が蓄積されている。多くのアメリカ人が今日、制度改革などという手段では何も変わらないと思い込むようになってしまった。

そのシニシズムに乗じたのがトランプである、というわけです。トランプはアメリカ人の欲求不満に耳を傾けながら彼らの個人的な生活上の不満を「国の衰退」という大きな枠組みの中で語ってみせた。アメリカが直面してきた衰退は極めて急激で怖ろしいモノであり、いまや必要なのは「何もかもぶっ壊せ!」という革命なのであると訴えた。そしてその「革命」を実行できるのは自分しかいないと語りかけて受けてしまったというわけです。

メディア論を研究する学者が、新聞の編集者たちに様々な出来事のリストを提供して掲載するものを選ばせたところ、どの編集者も「いいニュース」(positive coverage)よりも「悪いニュース」(negative coverage)の方を報道することを望んだのだそうです。要するに世界中で起こっている悪いことだけを集めて紙面を作れば大いに素晴らしい(impressive)ジャーナリズムが出来上がるというわけである、と。人類がこれまでに直面したこともないような危機について報道するという姿勢そのものを否定するわけではないけれど、往々にしてメディアが提供する「ペシミズム」には全く不合理(irrational)なものもあるということは分かっておくべきだということです。

▼アメリカ・メディアが「悪いニュース」の中で常にやり玉に挙げるのが政治家であり、それが故にアメリカ人の間でシニシズムがはびこり・・・これは英国も日本も同じですよね。ではその「悪いニュース」の提供者であるメディア人への信頼度はどうなのか?英国の場合はほぼ常に政治家などと共に「ワースト」の中に入っている。日本の場合は10の職種中下から3番目、アメリカは15の職種中下から4番目がテレビ記者で6番目が新聞記者というわけで、いずれにしても大して信頼はされていない。政治家が信用されない背景の一つがメディアによる政治家叩きであることは間違いないけれど、政治家の悪口を言うメディアもさして信頼されていない・・・これはどのように解釈すればいいのか?この記事の最初の部分で、言っていることに賛成なのか反対なのか、「むささび自身にもよく分からない」と言ったのはそういう意味です。

▼英米のメディアのことはともかくとして、日本のメディアはどの程度「世論形成」への影響力を有しているのか?多少の影響力はあるかもしれないけれど、決定的と言えるほどのものではないのでは?モリカケ問題をめぐる報道ぶりを見ていると、あれほど叩かれているのに安倍政権に決定的なダメージになっているような気がしない。シンゾーを支える政治家仲間もお役人も、メディアがそれなりの影響力を有していることは分かっているけれど、決定的なものではないことを知っている。街頭インタビューなどで「首相なんて誰がやっても同じなんじゃありませんか?」とシニカルに語る人を見ると「しめしめ」と思っているのでは?

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5)アメフト問題:アイルランドでの伝わり方

アイルランド最大の有力紙、Iritish Timesのサイト(5月25日)が、日本における「アメフト問題」を解説しています。
というわけです。書いたのはデイビッド・マクニールという記者で、ここ1カ月ほど日本中のメディアの話題をさらっている、この問題の背景について語っています。


マクニール記者によると、アメリカン・フットボールというスポーツは1930年代にアメリカの宣教師によって日本に紹介されたものではあるが、相撲・野球・サッカ-などに比べると、とてもメジャーな人気を誇っているとは言い難い。北朝鮮情勢、モリカケ問題など他に日本が直面している問題がいろいろあるだろうに、なぜアメフト試合の違反行為程度のことがこれほど大きな話題になるのか?

一つには北朝鮮だのモリカケだのという政治的な話題について「メディア自身が飽きてしまった」(the media is bored)ということがあるけれど、アメフトの反則問題は政治よりも深い部分における日本社会の暗い面を示しているとして、かつては政府のアドバイザーでもあった西村六善氏という人の意見を紹介しています。
  • ボスは常に王様だということ・・・それは我々の社会(日本)が持っている暗い部分なのだ。
  • This is a dark side of our society - your boss is your emperor.
とのことであります。


日本の至る所で頑なな上下関係があって、企業の上司、学校の先生のような「権威」には絶対服従という習慣が浸透している。時にはボスに対する忠誠心のために自分自身(your integrity)さえも投げ出してしまうというわけです。マクニール記者の記事は、反則を犯してしまった日大の選手が後日の記者会見で、自分が命令されたことは悪いことだということは分かっていたが「それを口にすることはできないと感じた」(he felt unable to say no)という言葉を紹介して終わっています。
 
▼権威・権力に弱いというのは、日本人の専売特許ではない。アイルランドのことは良く知らないけれど、英国にもアメリカにもそれはある。そういう切り口でこの話題を語るのはピントがずれていると思いません?ボスには絶対服従が日本社会の「暗い部分」であるとすると、反則したプレイヤーが記者会見までやって自分自身とボスたちを公の場で批判するという行動に出たことはどのように説明できるのか?さらに悪者の代表のように言われている監督やコーチも一応カメラの前で自分たちの言い分を語っている。これが「暗い社会」のやることなのか?

▼マクニール記者の記事の中でむささびが注目したいのは、日本ではメジャーとは言えないアメリカン・フットボールの試合で起こった反則がこれほど大きな話題になっている理由について、「北朝鮮」だの「モリカケ問題」のような「政治」については「メディア自身が飽きてしまったことが理由だ」と言っている部分です。マクニールがこの部分をもっと掘り下げていたら、もっと面白い記事になっていたのにと思うわけ。

▼「メディアが飽きてしまった」というのは、正確に言うと、テレビの視聴者や新聞・雑誌の読者が政治的な話題に飽きてしまった(とメディア人たちが考えてしまった)ということですよね。前号の「鳴き声」でも触れたけれど、過労死やギャンブル依存症の問題とアメフトの反則の問題を比べれば、前者の方が読者・視聴者にとって切実であるのは当たり前ですよね。でもNHKを始めとする日本のメディアは後者の報道に力を入れてしまった。どこからか圧力がかかったからだ・・・という陰謀論のようなことは言いません。編集者が過労死よりアメフトの方が読者に「受ける」と思ったということだと(むささびは)思っている。過労死や教育勅語のことより、傍若無人な独裁的監督を叩き、独裁者に楯突いて記者会見をやってしまった、あっぱれな若い選手の話の方が受ける、と思ったということです。

▼独裁的な監督を叩きまくるような報道を繰り返す方が視聴率が上がると思ったし、現にそれは当たっていたということ。政治の世界の出来事にウンザリしている読者や視聴者には、「悪い奴らを叩きまくる」報道の方が受けるに決まっている。4番目の「否定的メディアがトランプを生む」という記事で紹介したアメリカのメディアの編集者たちと同じことです。そうなると、アメフト問題はメディア人たちの価値判断の問題でもあるということになる。マクニールがこの話題を日本特殊論ではなくて、Irish Timesも含めたメディアの問題として取材・報道していたらもっと面白かったのに・・・と(むささびが)思う理由です。

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6)どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 

split infinitive:分離不定詞

「不定詞」というのは、to という単語に動詞の原型をくっつけたものですよね。"to go", "to eat", "to understand" etcです。文章にすると"I don't want to see her immeidiately", "I told him to eat quickly" etcというわけです。「分離不定詞」というのは "to"と動詞の間に副詞を挿入した使い方のことです。「今すぐ彼女には会いたくない」という」のを"I don't want to immeidiately see her"と言い、「勇気をもって行けと彼に言った」を "I told him to boldy go"とするのが「分離不定詞」というわけです。

「分離不定詞」については英語を母国語とする人の間でも賛否あるらしい。アイルランドの劇作家、ジョージ・バーナードショーは「分離不定詞」を使いたがるタイプだったので、これを嫌う編集者との間ではしょっちゅう揉めていた。「急に行く」というのをバーナードショーが "to suddenly go" と書くと、その編集者は"to go suddenly" か "suddenly to go" のどちらかにするように主張した。意味が同じならどちでもいいのではないかと思うのですが、バーナードショーは
  • あいつをクビにして、代わりにアタマのいいニューファンドランド犬を雇ってくれ
    Set him adrift and try an intelligent Newfoundland dog in his place.
と出版社に怒鳴り込んだのだそうです。なんでここで「ニューファンドランド犬」が出てくるのか分からないけれど、オックスフォードの英語辞書によると、「分離不定詞」は「文法的に間違っている」(grammatically incorrect)から使うべきでないという人は多いけれど、話し言葉としては何百年も使われている。ただ正式な文書などでは使わない方が「無難」(safe)だと言っている。

それにしても文法用語というのは、どれも意味不明ですよね。「不定詞」の「不定」ってどういう意味なのでしょうか?中学生で初めて英語なるものに接したとき、「英語は主語・動詞・目的語(補語)の順に並ぶ」と説明されたときの戸惑いは今でも憶えています。主語って何?動詞、補語なんて聞いたことない、というわけで、英語を学んでいるのにそれを説明する日本語が分からなくて挫折していたのでありますよ。

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7) むささびの鳴き声
▼5番目の「アメフトとメディア」についてもう少し。5月24日付のAERA dotというサイトに『内田前監督ら主役の座を奪った「上から目線」日大広報の正体』という見出しの記事が出ています。日大アメフト部の前監督とコーチが5月23日に開いた記者会見について書いているのですが、前監督やコーチの発言のことではなく、その会見の司会役を務めた日大の広報担当者の振る舞いについて書かれている。記事によると、この司会者はかつては通信社で記者をやっていた人で、ジャーナリストとしては「華麗なる経歴の持ち主」なのだそうです。

▼この記者会見が始まってから1時間半ほど経ったときにある記者が「選手のアメフト人生を奪っているかもしれないが、心の痛みはないか」と質問したところ、その司会者が「仮定の質問はやめてください」と言いながら「1時間半以上やっています。これで終わりにしたいと思います」と記者会見を打ち切ろうとしたことで、記者たちとの「バトル」が始まってしまったというわけ。詳しくはAERA dotの記事を読んでもらうとして、むささびの独断により、この司会者の発言の一部分だけを抜き出すと次のようになる。
  • 同じ質問が繰り返されているので、これで質問は終わります。
  • だから全員からは聞けないですよ!すでにじゅうぶん聞きましたよ。じゅうぶん、聞きました!
  • それじゃあそろそろ終わりにしたいと思いますんで・・・
▼要するに司会者は同じ質問を繰り返す報道陣に文句を言い、記者たちは勝手に会見を打ち切ろうとする司会者に怒っており、その様子がテレビで生中継されてしまったというわけです。ここをクリックすると会見の様子を見ることができます。

▼この種の大きな会見になると、ニュース番組やワイドショーで放送するために、一つの局から複数のキャスターやアナウンサーが会場に現れるのだそうですね。そして派遣されたキャスターらが質問をするシーンを撮影・放映するのですが、あるキャスターが聞こうと予定していた質問を他社や他の番組のキャスターらが先にしてしまった場合でも、自分らのキャスターの質問場面を撮るために似たような質問をする。するとどうしてもダブリに近い質問が出てしまう。そのことについて、この司会者が「いい加減にしろ」となったわけです。そのことについてAERA dotの記事は、この司会者の「上から目線」を批判している。

▼それにしてもこのアメフト騒ぎ、さっぱり分からない出来事だと思いません?「相手にケガをさせて来い」と命令した監督が、その独裁的メチャクチャぶりが故にアメフト界を追放され、監督のひどさ加減を記者会見で暴露した選手はヒーロー扱いされ・・・「正義は勝った」ということで一件落着ですか?実に分かりやすい勧善懲悪物語ですよね。そのような無理な命令を出した時に、そのことが後日自分に跳ね返ってくるかもしれないという自己保身の本能のようなものは働かなかったのでしょうか?彼らは文句なしの悪者であるだけでなく、自己保身の本能さえ持たないアホ人間であり、日大はそのような人物を自分たちの幹部として持ち続けたどうしようもない悪徳・アホ大学・・・ということ?納得いきます?

▼日大広報担当者の横暴ぶりを伝えるAERAの記事は、記者たちが同じような質問を繰り返したことについては殆ど触れずに、司会者の横暴だけを書き立てている。同じような質問というのがどのようなものであったのか、何回ほど繰り返されたのか・・・そのことが全く書かれていないので読んでいても納得がいかない。そのことについて、この記事を書いた記者やそれを通してしまった編集者はどのように思っているのか?むささびは前回の「むささびの鳴き声」の中で、このアメフト問題についての報道が「大した問題でもないのに騒ぎすぎだ」と書いたし今もその考えは変わっていない。この騒ぎの中で自分たちが演じた役割についてメディア人が何を想うのかは是非知りたいと思うわけです。

▼日大や関学、アメフト連盟の関係者による行動や発言は大いに伝えられているけれど、行動も発言も一切伝えられない唯一の「関係者」がいます。それが新聞、テレビ、雑誌の記者であり編集者です。この問題を、単にアメフト界の話題としてではなく、いまの日本の社会全体に漂っているかに見える欲求不満現象の問題として考えると、メディア人たちの言動も「関係者」のそれということになる。つまり取材対象になるべきだということです。これはアメリカも英国も同じです。日本の新聞やテレビには、メディア関係者の言動について検討する記事や番組はどの程度あるのか?英国のメディアにはそれがあるように思えます。

▼お元気で!

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むささびへの伝言