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musasabi journal
第112号 2007年6月10日

 

こんにちは。2007年も半分が過ぎようとしています。ブレアさんが英国の首相の座にあるのもあとわ ずか。112回目のむささびジャーナルです。よろしくお願いします。


目次

1)住宅が足りない
2)電気自動車が増えている
3)英国の執事が足りない
4)ブレアさんの寄稿文
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)住宅が足りない


BBCのサイトによると、現在の英国の住宅価格は年収の約7倍。これが2026年には10倍にまで上がるだろうという予測があるそうです。予測を発表したのはNational Housing and Planning Advice Unit (NHPAU:住宅・都市計画審議会)という政府系のthink-tankで、これから10年間、1年あたり19万戸の住宅が建設されるということを前提にした予測なのですが、現在のところは年間住宅建設は168,000戸にとどまっています。

この場合の年収倍率は、年収の一番低い層25%の年収と現在最も安い住宅の価格帯25%を比較しているもので、ごく普通の英国人が住宅を購入するときの購入可能性(affordibility)を示しているものと言えます。要するに住宅需要に対して供給(住宅の建設件数)が余りにも少ないということです。

Yvette Cooper住宅・都市計画担当大臣は、年間建設件数の19万戸でも「次世代の一次購入者にとって全く足りない」(simply won't do enough to help the next generation of first-time buyers)だと言っています。実は住宅不足については、以前から言われているところで、政府も建築規制の緩和策などを通じて、全国規模での増加プロジェクトを推進しているのですが、地方自治体からの抵抗もあってなかなか進まない。Cooper大臣は「地方自治体が住宅建設に協力すべきだ(local and regional government should support proposals to encourage more house-building)」と言っています。

で、英国で住宅を買おうとするといくらくらいかかるのか?BBCによるとイングランドとウェールズの平均価格は約18万ポンド(3600万円以上)ですが、一番高いロンドンだと333,785ポンドだから6500万円は楽に超える価格です。価格高騰が一番少ないとされるNottinghamだとロンドンの3分の1以下というところのようです。

住宅の値段が年収の7倍というのは、かつての日本の土地・住宅バブルを思わせる数字ですが、6月8日付けのDaily Telegraphによると、30才前の若い人が住宅を購入する場合に両親からかなりのお金を借りるというケースが46%(95年時点では10%)なのだそうです。住宅価格が最も高いロンドンで初めて家を買う人で、親や親戚から借金して買う場合、頭金57,000ポンドを払うというのが「典型的」で、この種の援助がない人の場合はこれが12,500ポンドという数字が出ています。

で、ローンはどうかというと、無理をしてでも組むケースが増えているようで、年収の4倍借りる人の割合は2005年4月には11%だったのに、2007年3月には21%に増えています。

  • 英国で持ち家という習慣が広がったのは、サッチャーさんが首相になった1979年以後のことです。それまでは英国の庶民にとっては住宅と言えば公団住宅のことだった。Exeter UniversityのJeremy Black教授が書いたBRITAIN SINCE THE SEVENTIES(70年代以後の英国)という本によると、1981年時点の持ち家率は36・4%、10年後の91年にはこれが52・8%に増加した。2004年の統計によるとこれが70%にまであがっています。
2) 電気自動車が増えている


東京都内をどのくらいの台数の電気自動車が走っているのか、どなたかご存知ですか?最近のThe Economist(英国内版)によると、ロンドンを走る電気自動車は約2500台だそうです。それが他の都市に比べて多いのかどうか(私には)分からないけれど、4年前の2003年ではたったの49台であったそうで、それを考えると50倍。タイヘンな増加ってことになります。

中でも人気があるのが、G-Wizという名前のインドからの輸入車なのですが、値段が6000〜7000ポンド(138万円〜161万円)というわけで、ハイブリッド車のトヨタ・プリウス(18,000ポンド)などに比べるとかなり安い。 電気自動車は、ロンドンの渋滞税も払わなくて済むし、中心部のWestminsterには無料の駐車場もある。

さらに昨年12月には電気自動車用の充電スタンドも設置されている。充電用のコードなどを買うのに50ポンドの保証金を払う必要があるけれど充電器の利用自体はタダ・・・というような明らかな利点のほかに、G-Wizの場合は明らかに電気自動車であることが分かり、それを運転していることで「自分は環境保護に熱心です」という自己PRもできる。

が、問題もある。安全性です。交通省が行った衝突実験によると、時速35マイル(約50キロ)で衝突すると「かなりの重傷(severe injury)」を負うという結果が出ています。G-Wizの輸入元では、この車は市内をゆっくり走ることを目的としているのだから、時速35マイルの衝突実験そのものが馬鹿げている(absurd)と主張しているのですが、交通省としては、この車についてさらなる安全性テストと規制強化を考えているようだ、とThe Economistは伝えています。

ちなみにG-Wizの競争相手である、フランス製のMega Cityという車は上記のテストには無事合格していると宣伝しています。さらに2007年7月からはダイムラー・クライスラーからSmart EVなる電気自動車も参入するそうです。

  • 前回のむささびジャーナルで、ロールスロイスの話をしましたが、電気自動車の場合も英国製ではないんですよね。
3)英国の執事が足りない


え〜っとあの映画、なんてったっけかなぁ?英国のナントカ・イシグロって作家が書いた小説を映画にした、あれ。そお!カズオ・イシグロの「日の名残り」(The Remains of the Day)は英国の執事が主人公でしたよね。アンソニー・ホプキンスが主演だった。

で、いま英国(イングランド)の執事さんが世界的に不足しているんだそうですね。英国執事組合(Guild of Professional English Butlers)によると、現在英国内にいる執事の数はおよそ5000人なのですが、プロの執事になろうという人が不足しているんだそうです。 ここ10年ほどで特にネット関係でお金儲けをしたミリオネアからの需要が高いわけですが、英国だと年収平均3万ポンド(約700万円)なのが、アメリカへ行くと年収25万ポンドの執事もいるんだとか。ずいぶん違いますな。

執事というとマルチタレントであることが要求されるわけですが、毎朝の新聞にアイロンをかけるなんてのも仕事らしい。 が、なんつっても、英国人執事に求められるのは「問題が起こっても冷静・沈着に対応する能力」(calmness in the face of adversity)で、きりっと結んだ唇(stiff upper lips)から出る「よろしゅうございますな(very good, sir)」という言葉はこれからも生き残るであろうとのことです。

4)ブレアさんの寄稿文

イラク戦争開戦当時には「ブッシュのプードル犬」などと悪口を叩かれたブレアさんですが、最近(6月2日)のThe Economistに掲載されたブレアさんの寄稿エッセイを読むと、英米関係・欧米関係についての考え方がよく分かります。

ブレアさんが憂慮しているのは、英国内の意見として見られる「孤立主義」の傾向だそうで、これはメディアや政治家の間において「対欧懐疑主義(Eurosceptics)」と「対米独立外交路線(independent foreign policy from America)」という形をとっている。それではどこと同盟を組むのか?ということになると、中国やインドとの「新戦略的関係(a new strategic relationship)」を考えるべきだ、というわけですが、その際に英国がこれまで依拠してきたアメリカや欧州との繋がりをバイパスすべきだと言っている(とブレアさんは主張している)。で、ブレアさんは次のように主張しています。

現実的になってもらいたい。もちろん中国やインドとは英国なりの関係を保つだろう。しかし英国が中国やインドに対して影響を与えることができるのは、欧州やアメリカとの強力な同盟関係にあるからこそなのだ。(Get real. Of course we will have our own relationship with both countries. But we are infinitely more influential with them if we have two strong alliances behind us.)

次に欧州内において「これからもアメリカに依存し続けるのか?」(is it worth it to continue such reliance on America?)という懐疑主義的な意見についてブレアさんは「アメリカの政治指導者たちが欧州を重要度ナンバーワンの仲間として見ているのかどうかを自問してみろ」(We would be better asking whether the political leaders in America still see Europe as their first port of call)と言っている。

彼によると、アメリカとヨーロッパは同じ価値観を共有していることをはっきり認識すべきであり、大西洋を超えた同盟(trans-atlantic alliance)が必要である。が、そのためには欧州自体が一致団結して「強いヨーロッパ」を形成していなければならない。弱いヨーロッパは、アメリカにとって頼りにならない同盟相手(A weak Europe is a poor ally)であるというわけです。であるゆえに(アメリカとの強力な同盟関係が必要であるがゆえに)、EU加盟国間の緊密な協力関係が必要なのだ、というわけです。

中国やインドはそれぞれの人口がEU全体の3倍もある国なのだ。そのような国とやっていくためには他のどのような考え方(つまりアメリカと強力な同盟関係を保つということ)以外はすべて時代遅れというものなのである。(In a world in which China and India will each have a population three times that of the EU, anything else is completely out of date.)

ところで、The Economistに掲載されたエッセイの中で、ブレアさんは「我々は自分たちの価値観のための立ち上がらなければならない」(We must stand up for our values)というわけで、得意の(?)価値観論を展開しております。イスラム過激派によるテロとの戦いに関係して、次のように訴えています。

民主主義や自由というものが「西側諸国」の考え方であり、これらの考え方とは無縁の国々や人々に間違って押し付けようとしている、という言い方ほどバカバカしいものはない。自由や民主主義と無縁の政府はあるかもしれないが、国民がこれらに無縁であるということはない。民主主義廃止を投票で決めたところなどあるだろうか?言論の自由よりも秘密警察の方がいいなどと考える国民はいるだろうか?There is nothing more ridiculous than the attempt to portray "democracy" or "freedom" as somehow "Western" concepts which, mistakenly, we try to apply to nations or peoples to whom they are alien. There may well be governments to whom they are alien. But not peoples. Whoever voted to get rid of democracy? Or preferred secret police to freedom of speech?

  • 現在、日本はアメリカと同盟関係にありますよね。中国、インド、ロシアのような「ちょっと違う」国と付き合っていくためにはアメリカと仲良しであることが絶対的な条件である、という点で英国と似ていなくもない。
  • ブレアさんのような考え方をする人たちが「価値観」という場合、必ずvaluesという複数を使います。つまりいくつかあるってこと?私の解釈(考え方)によると、「価値観」とは「何が大切で、何がそれほど大切でないかを判断するための基準」のことを言うはず。で、私にとっては「とりあえず普通に生きていけるってこと」が価値観ナンバーワンであります。はっきり言うと首相や大統領が独裁的であったとしても、三度の飯を食えればとりあえずオーケーというわけです。あきまへんか?
  • ところでThe Economistに掲載されたブレアさんの寄稿文をお読みになりたい方はお知らせください
5)短信


列車内で眠る時はマナーに気をつけよう

45才になる英国人のオジサンが、電車の中で前の席に足を投げ出して眠りこけたことが原因で、50ポンドの罰金を取られた、と大衆紙、The Sunが伝えております。英国には1889年にできたRailway Regulations Act(鉄道規制法)なるものがあって、列車内で他の客の迷惑になるような行為をすると罰せられるのだそうです。この人はMerseyrailという鉄道会社の列車内で眠ってしまったらしいのですが、英国内の鉄道会社でも120年前の法律を未だに適用しているのは、この会社だけだとのこと。「列車内で眠るのは、私の悪い癖とはいえ、こんな法律に罰せられるのは不愉快」としながらも「裁判で争うのも時間のムダだし」というので罰金を払ったのだそうです。「眠りこける程度のことは大したこっちゃない。本当の犯罪はいくらでもあるだろう」と文句を言っています。Merseyrailの関係者は「世紀の大犯罪というわけではないが、乗客に迷惑をかけるような行為は許さない」とのことで、今後もこの法律を適用する方針だそうです。

  • ただ眠っただけなら犯罪にはならないんですよね。眠り方が悪かった!?

満月の夜には犯罪が多い?

南イングランドの町、ブライトンの警察は満月の夜になるとパトロールを強化するのだそうであります。なぜかというと満月の夜になると多くの暴力事件が起こるからなのだとか。満月と暴力の因果関係ははっきり解明などされていないのですが、警官歴19年というアンディ・パー刑事も「自分の経験からしても、満月の夜には変な行動をとる人が多い。この際大学で因果関係を調べてもらうべきだ」と言っている。実は過去、イングランドのリーズにある刑務所の入所者1200人を調べたところ彼らが犯罪を犯したのは、満月の数日前か後であることが多かったのだそうです。

  • ブライトン警察によると、満月の夜以外にもう一つ犯罪多発夜があるのだそうです。それは給料日の夜。まあこれは説明がつきますよね。給料もらって気分良くなってつい飲みすぎて、ケンカ沙汰に・・・なんてことはどこの国にもある。

米大統領のブルガリア訪問

ドイツで行われたサミットに参加したアメリカのブッシュ大統領は帰りにブルガリアの首都ソフィアに寄るんですね。6月11日だから明日ってことですね。で、いまソフィアはタイヘンなのだそうです。例えばブッシュさんの車列の通り道には洗濯物を干してはいけない。また無理やり車の窓拭きサービスをして小遣いをせがむ子供が多いらしいのですが、ブッシュさんご到着の日にそれをやると逮捕だそうです。「首都をきれいに見せるための特別措置」と警察では言っています。

  • ですよね。ブッシュ本人は分かりっこないけれど、洗濯物が窓からワンサカ見える部分を全世界に放映されないとも限らないんだから、それもしゃあないか。
6)むささびの鳴き声


▼英国の統計局(Office for National Statistics)のサイトによると、昨年(2006年)生まれた赤 ちゃんに付けられた名前で多かったのは、女の子だとOliviaがイチバンで、二番はGrace、三番は Jessicaだそうです。男の子の名前のナンバーワンはJack、次いでThomas, Joshua, Oliver, Harryと が続いている。

▼日本はどうなのかというと、明治安田生命のサイトによると、2006年度の人気トップ5は、男子の場合は「陸」「大翔」「大輝」「」「」で、女子は「陽菜」「美羽」「美咲」「さくら」「」なのだそうです。

▼このサイトには明治の終わりからの名前の人気度統計が出ており、見るだけでも結構楽しい 。明治45年(大正1年)に生まれた男の赤ちゃんの名前の人気ベスト3は「正一、清、正雄」の順、大正7 年は「清、三郎、勇」、私が生まれた昭和16年は「勇、進、清」、戦争中の昭和19年は「勝、勇、勝利」 という具合です。「清」の人気は常に高いですね。戦争が始まった16年は、ひょっとすると日本全体が 「勇ましく進軍せよ!」という雰囲気だったし、「勝てないかも」と思い始めたであろう19年は「勝つ、勇 ましく勝利する!」と自らを奮い立たせていたような感じであります。

▼非常に不思議なのは「三郎」という名前です。明治45年(1912年)から昭和9年(1934年)までの約20年 間はほぼ毎年ベスト10に入っていた。それもかなり上位です。それが昭和9年を最後にピタリと登場し なくなるのです。なぜ昭和9年以後にピタリとなくなるのかが不思議の第一ですが、さらに不思議だと 思うのは、「三郎」が隆盛を極めていた時代にも「二郎」(私の名前)は全くベスト10には入っていない ってことです。情けないじゃありませんか。ちなみに「一郎」はそこそこあるんですよ。なぜ三郎だけ がそれほどの人気なのか?

▼女性の名前はどうか?明治45年のベスト3は「千代、ハル、ハナ」で、ベスト10で見ても「ヨシ 」とか「キヨ」などのカタカナ名が結構多い。この傾向は6年間続くのですが、以後はカタカナ名はピ タリといなくなる。千代、久子、文子などが非常に人気が高かった名前なんですね。

▼それにしても最近の女性の名前、いやですねぇ、実に。昨年の「読み方」における女性人気名は「ハ ルカ、ミユ、モモカ、ハルナ」などだそうであります。可愛くないな、ったく。ミユだのモモカなんて 、お菓子の名前だっつうの!女とくれば名前は、ハナ、キヨ、ヨシ、フミなどに決まっておる!「おい 、フミ、ちょいと灰皿とっとくれ」というのはサマになるけど「おい、モモカ、モナカはあるかい? 」じゃ、言いにくいもんな。

▼明治安田生命のサイトはここをクリックすると見ることができます。

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