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美耶子の言い分
016 trainとchain 、crowdとcloudの聞き分けがそんなに大事?

以前、「日本人のネイティブ信仰」について疑問を呈した。今回は日本にある名の知れた英語学校が出版している「大人のヒアリング上達用のテキスト」に感じた私の疑問を聞いてもらいたいと思う。

そのテキストには当然CDが付いていて、それを聞きながら自習するようになっているのだが、まずそのテンポがやたら速すぎる。始めの方に、テキストを見ながら、聞こえてくる単語に丸印を付けていく作業をするようにというのが出て来る。しかし、CDから次々と言われる順不同の単語(10個ぐらい)に順番に丸印を付ける作業の速さとヒアリングの能力との関連性がそれほど大きいとは私には思えないのだ。「どうだ!ナマの英語はこんなに速いんだぞ!」と言って、聞いている人を威圧するのが狙いなのか、とさえ感じてしまった。これを聞いて真面目な学習者は「あー、自分のヒアリングはマダマダだな、、、」と不必要な自己過小評価をしてしまうことになるような気がする。

次に、二つの英文を聞いて聞き分ける練習をさせようという問題が出て来る。これを聞き分けられることとヒアリング能力があることとを結びつける考え方そのものが、私には甚だ疑問に思えるのだ。しかも、これがまたやたらと速い(著者に言わせればこれがナチュラル・スピードなのだと言うことなのかもしれないが)アメリカン・イングリッシュで聞こえてくるのだ。

Do you see the train? Do you see the chain?

どっちの文を先に言ったか当てろというのだ。

There is a big crowd in the park. There is a big cloud in the park.

これも同様だ。 言うまでも無く人の話(会話)というものは必ず「内容」があって成り立つものである。前後関係もなしに「電車が見える」と言ったのか、「鎖が見える」と言ったのかなんて、どちらも「チェーン!」と聞こえなくも無いアメリカ人の発音するこの文章を、「どうだ、分かるか」と言わんばかりに聞かせて学習者をオロオロさせてしまうこの「罪深さ」「傲慢さ」はとても許せないし、意味のあることとも思えない。

発音についても、アメリカ人と同じように発音出来なければ通じないというわけではないということを強調する英語学校(または英語教師)がそろそろこの辺で出て来てもいいのではないか、と思う。

どうせCDを使ってナマの英語を聞くチャンスを与えてヒアリング能力をつけさせようというのなら、むしろアメリカ人の発音を聞き分けて真似をさせるのではなく、英語を母国語とする他の国の人達のいろいろな発音を聞かせて、いかに違うかということを体験させることのほうが、本来のヒアリング能力なのではないか、と思って目次を見ていくと、「英語はインターナショナル」という項目があったので見てみると、これがまたピントはずれなことを学習者にやらせるのだ。CDを聞いてその英文を読んでいるのはアメリカ人か、イギリス人か、オーストラリア人か、当てろと言うのだ!ナニジンが言っていようと、要は中身が解かるかどうかであるのに、何故こうも次々と枝葉末節なことをやらせるのか、私には納得できない。