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美耶子の言い分
010 年上の妹と年下の兄?

日本語に微妙な表現が多いのは、日本人の心が微妙で複雑だからなのだろうか。 英語では女のきょうだいはsister、男のきょうだいはbrotherである。年上、年下を敢えてハッキリさせたい時には、elderとかyoungerを確かに使うけれど、大抵の場合、英語話者はどちらの場合でも、ただmy sister、my brotherと言うことの方が多いような気がする。一方、よくよく考えてみると英語のsister、brotherにあたる年上も年下も一緒くたにした言葉が、そもそも日本語にはないのだ。

ところが日本語は「きょうだい」の場合には男女を一緒くたにして使うという極端なところもある。「ご兄弟は何人ですか?」というのは、女のきょうだいのことも含めて聞いているのだ。しかも、この場合「ご姉妹は何人ですか?」とは絶対に言わない、という文化が日本語にはある。 私自身、実は「年上の妹」がいるのだ。彼女の立場から言うと私は「年下の姉」ということになる。主人と結婚したことによって、主人の妹であるその人は、私より年上であっても「妹」ということになるのだ、と極自然に受け止めたのだが、こういう場合、彼女は何故私の「姉(elder sister)」にはならないのか、、、。

英語ではこのような場合、elder sisterと言うのだろうか、younger sisterと言うのだろうか?。それとも、長ったらしくmy elder younger-sister-in-lawなどと言うのだろうか、、、。 最近の日本は昔に比べて年上の女性と結婚する男性が増えたように思うのだが、それによって生じる複雑な日本語文化にまたまた気付かされた。それは、結婚によって生ずる兄弟・姉妹の関係は「夫」、つまり男性の家族関係が基準になっているということで起こる複雑さだ。

女性は結婚によって、普通は姓を夫の姓に変えるので、当たり前と言えば当たり前ではあるが、呼び方として、妻が夫の兄である「年下の兄」を「お兄さん」と呼ぶのは良いとして(家族の呼び方については年少者の立場、この場合は年少者である夫を基準にした呼び方が日本語の習慣だそうだ)、そう呼ばれた「年下の兄」は弟の妻である「自分より年上の女性」を、「妹」と考える事に抵抗はないのだろうか、、、と考えたら、「義理の妹」「弟の嫁さん」などという実年齢の上下を感じさせない言い方を使うという手が、日本語にはあった。

因みに、私の教えているカナダ人とタイ人に尋ねてみたら、英語では年齢の上下には触れずにただsister, brotherとだけ言うのが普通だそうで、タイ語では日本語と同じように兄、弟、姉、妹に当たる言葉が独立して存在するが、通常、外に対しては実年齢より家族関係の言い方を優先させるとのことであった。