むささびの鳴き声


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面白かった、小沢さんの記者会見

民主党の小沢さんが、資金管理団体・陸山会の土地取引を巡る事件で政治資金規正法違反に問われた裁判が10月6日にあって、同じ日の夕方小沢さんの記者会見があり、テレビで中継されましたね。見ました?私は見ました。

さしたる期待感もなく見たのですが、結果としてはとても面白い会見でありました。岩上安身オフィシャルサイトというサイトを開けるとこの記者会見をノーカットで、しかも発言内容が文字のかたちでも見ることができるのですから、インターネットというのはありがたいものでありますね。

で、記者会見ですが、まず小沢さんが裁判で行った意見の陳述をもう一度この場所で読みあげることから始まりました。これが良かった。なぜかというと、裁判の報道の場合、裁判所で行われた発言の類がそのまま中継で流されるということはないですよね。それがこのようにして、小沢さんの言い分がそっくりそのまま聞けたのだから、事実上裁判の生中継を見たのと同じということになる。そのような機会を与えてくれた小沢さんには感謝の拍手を贈りたい気分だった。

小沢さんの「朗読」が終わると記者との一問一答に入りました。詳しくは岩上安身さんのサイトを見てください。私はいくつかの質問から一つだけピックアップして小沢さんの答えと一緒に紹介します。ちょっと長いけれどお許しを。

質問:今回の裁判におきましては、小沢さんへの支持、不支持という事を超えまして、これはもうこれまでと大きく違いまして、司法の在り方そのものに、やはり疑問視する声が非常に多い状況となっております。こうしたこの現実の国民や識者の声がある一方で、ちょっと重なりますが、マスメディアの言う世論というものがあります。これは昔からこうした声というのは正反対の意見が多いわけですが、この点についてもう少しお考えをお聞かせ頂けますでしょうか?あと、今後の対応です。要するに国民と称して、二つの大きい正反対の意見があるということです。

文字にすると、何を言っているのかよく分からないかもしれないけれど、要するに、メディアの世論調査で示される数字を見ると、誰も彼もが小沢さんに批判的であるかのような印象を受けるけれど、実際にはこの裁判そのものに対する批判意見もある。小沢さんはメディアのいわゆる「世論」についてどのように考えるのかという質問です。それに対する小沢さんの答えは次のとおりです。

小沢:私はテレビ・新聞のやっている世論調査、国民の声というものが全くデタラメだとは申し上げませんけれども、しかし必ずしも全国民の、まんべんなく全国民を代表しているというふうにも思えません。ですからもし、その通りであるならば、私自身が選挙に受かることもなかったでしょうし、こうして政治家として活動が許されることもなかったと思います。ですから、賛否両論、色々私に対してはあると思います。それは当然です。しかし、それが一方的なものであるとは私は思ってませんので、頑張ってくれという大勢の方もありますし、私自身、なんら1点もやましいことありませんので、今後も頑張っていきたいと思っております。

小沢さんはメディアの世論調査が「まんべんなく全国民を代表しているというふうにも思えません」と言っており、その理由として、もしメディアの世論調査の結果が本当に国民の声を反映しているのなら「私自身が選挙に受かることもなかったでしょう」と言っている。実に尤もだと思いませんか?

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▼前回のむささびジャーナルで「世論調査報道の日英比較」という文章を載せました。日本で新聞や放送局が世論調査をやって「小沢さんは説明責任を果たしていると思うか?」と質問すると、9割近い人が「果たしていない」と答える。するとメディアは「それみたことか」と言わんばかりにあたかも日本人の9割が小沢さんに批判的であるかように伝える。でも英国のYouGovのように、質問に答えた人々の年齢・性別・支持政党・社会階層・居住地域のような詳細は何も伝えない。

▼この会見の翌日(10月7日)の読売新聞の社説を読んでみたら、小沢さんの「一方的な検察批判には、首をかしげざるを得ない」と書いてありました。小沢さんが意見陳述の中で「国民の負託を受けていない検察が、権力を乱用し、議会制民主主義を踏みにじった」と言ったことについて「選挙で選ばれた政治家に、検察は手を出すべきでない、という傲慢な主張ではないか」とのことであります。

▼世論調査のことにも関係するけれど、読売新聞は、政治家が「選挙で選ばれた」という事実をどのように評価しているのだろうか。読売のやる「世論調査」では悪者扱いの小沢さんなのに選挙では勝ってしまう。なぜそういうことになる、と読売新聞は考えているのか?小沢さんのような政治家に投票する岩手の人たちがアホもしくはカネで買収された情けない人々だってこと?「選挙で選ばれた政治家に、検察は手を出すべきでない」という主張は傲慢でも何でもない。当たり前のことだと私などは思いますが。

▼上には紹介しなかったけれど、記者会見では「フリー」の記者から「小沢さんがこうまで検察とマスコミに狙われるのは、検事総長をはじめとする検察の人事、それから記者会見のオープン化、それから新聞社がテレビ局を持つというクロスオーナーシップなどに踏み込むからじゃないかとみる向きもあります。小沢さん自身はこれをどう考えておりますでしょうか?」という質問がありました。ひょっとすると読売新聞は「クロスオーナーシップ」の関係で小沢さんを抹殺したくて仕方ないってこと?!

▼いずれにしても小沢さんの会見が面白かったのは、最初の「朗読」もさることながら、記者からの質問の中に面白いものがあったということでもあります。「菅おろし」については、小沢さんは全く間違っていたと思うけれど、この裁判については「小沢さん、がんばれ!」と言っておきたい。(2011/10/9)