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むささびの鳴き声
042 「戦後レジームからの脱却」は荷が重すぎた!?

安倍さんの辞任について、京都大学の佐伯啓思教授が次のように言っています((朝日新聞2007年9月15日)。

「安倍氏の不幸は、彼の政治手法も理念も小泉氏のものとは大きく異なるにもかかわらず、小泉氏の後見によって首相になったことにある」

佐伯教授によると、その結果として安倍さんの政策は

「一方で憲法や教育という戦後レジームの見直しという保守的政策を掲げ、他方で改革の続行、成長の追求をかかげるという支離滅裂なものとなる」

というわけです。これ、当たっていますね。

佐伯先生は、どちらかというと安倍さんの「戦後レジームからの脱却」を支持しておられるようでありまして、安倍氏の本来の政治的使命である憲法や教育がまともに争点にならず、小泉さんの大衆的人気主義や改革主義によってうやむやにされることは望ましくないと言っています。「安倍さんの本当の敵は自民党自体だった」というわけで、安倍さんがぶっ壊すべきなのは「(保守の理念を失った)自民党」だそうであります。

佐伯教授は、上に指摘するような矛盾に「安倍氏自身が十分に自覚的であったとは思われない」と言っています。私の推察にすぎませんが、先生は「戦後レジームからの脱却」という考え方は正しかったけれど、安倍さん(のアタマには)荷が重すぎたということを言いたいのではないかと思うわけです。

この先生がおっしゃっている(と私が解釈する)ことに、私もある部分までは共感します。安倍さんが訴えていた「戦後レジームからの脱却」という考え方が、余りにも無視され過ぎたということであります。誰もマジメに安倍さんの言うことを聞かなかった。 これは、はっきり言ってアンフェアであるってこと。

これも私の推察ですが、メディアを中心にした「ものを考える人たち」が、安倍さんのアタマをまるでバカにしており、「この人の言う哲学などディスカッションには値しない」と思っていたのでしょうね。「戦後レジームからの脱却」という考え方は、安倍さん後にも佐伯先生のような方々によって受け継がれるわけだから、その良し悪しはきっちり検討した方がいいに決まっているのに、です。

私と佐伯教授が分かれる(と私が思う)のは、先生が「戦後レジームからの脱却」は本気で支持されるべきであったとおっしゃっているのに対して、私は本気で反対されるべきであった、と思っているということであります。その部分を詳しく説明したいのですが、今のところその能力がないのであります。もちろん先生のように四六時中「思索する」という生活を送ってもいない。

でも、死ぬまでに、自分にも他人にも納得いくように説明してみたいですね。(2007.9.16)