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むささびの鳴き声
024 無言実行と有言不実行
先日ある英国人と会ったときに、小泉さんの政治の話になりました。彼が言うのには「小泉さんの改革姿勢は素晴しい」とのことでしたが、付け加えて「でも、もっと説明しなくてはいけませんな」とも言っていました。「靖国」といい「郵政」といい、「やるっきゃない!」を繰り返すだけでは、よく分からないというわけです。確かに。で、ブレアさんの話になって「ブレアの言葉による説明能力は本当に素晴しい」と言ったあとで「でも実行が伴わない」とも言っていた。

ブレアさんは「イラク」だの「コソボ」だのと言った、国際問題になると「有言実行」なのですが、教育、公共サービス改革のような国内問題になると「言葉だけ勇ましい」(word salad)という批判があります。「無言実行」の小泉さんと「有言不実行」のブレアさんということです。うまくいかないものです。

が、あえてどちらをとるかと言えば、私なら「有言不実行」の方をとるでしょうね。少なくとも「自分が何をやりたいのか、何故やりたいのか、何故それが世の中のためにいいと考えるのか」ということを説明するための饒舌なら、許されると思います。それが出来なかったとしても、状況が許さなかったということなのだ、と納得が行く。人々の「納得」は大切ですよね。「きれいごとばかり並べやがって」などと無粋なことは言いません、私は。

よくないのは「無言実行」であると私などは考えるわけです。「郵政」「イラク」「靖国」などなど、イマイチ納得の行く「きれいごと」を小泉さんの口から聞いたことがない。「自民党をぶっ壊す!!」というけれど、何故ぶっ壊すんです?自民党をぶっ壊すと、日本にとってどんないいことがあるんでしょうか?(ひょっとすると、有名な小泉さんのメルマガにはきっちり出ているのかもしれないけれど、それを見るのは面倒であります)。

小泉さんは「寡黙の人」らしいですね。政治記者が書いた本がそう言っています。しかし首相と呼ばれるような立場の人については、「寡黙」ってのはよくないのでは?国民(この言葉ホントにきらいでございます)がフラストレーションに陥る。

ただ・・・小泉さんの「寡黙」については、メディアの側に責任の殆どがあるのではありませんか?毎晩のようにニュースで放映される、あの「立ち話風インタビュー」、何ですか、あれ?20秒も続かない。何故あのようなものを毎晩放映するのでしょうか?殆ど内容がないので、視聴者は小泉さんが口をパクパク動かしているのを見るだけ。コマーシャルと同じです。内容などはどうでもいい、とにかく売れてくれれば、というわけ。

こんな無意味なインタビューを毎晩やるくらいなら、ひと月に一度でいいから30分のインタビューをやるようにしてもらいたい・・・ということをテレビカメラの前で小泉さんに要求してもらいたいのです。彼がどのように反応するかを見せて欲しい。メディアがそのような要求が出来ないというのであれば、何故できないのか説明して欲しい。その説明はメディアの責任です。

先日なんか、あろうことか記者たちが小泉さんに誕生祝いか何かの花を贈り、にこやかに笑いながらこれを受け取る小泉さんの顔が放映されていました。あれ、何のマネだったんです?「毎日毎日インタビューに応じてくれて、感謝しております」ってこと?!

あのようなインタビューでも「ないよりマシ(better than nothing)だ」とメディアの人たちは考えているのでしょうか?私の考えでは「ない方がいい(worse than nothing)」のであります。そうでしょ、言葉を使ってきっちり説明もしないで「靖国だけが日中関係ではないと思っておりますから、それをしっかり、粘り強く中国側に説明していきたいですね・・・」の20秒だけでは言葉を使ったことにならず、そのくせ顔だけはしっかり映っている。同じ顔を20秒間見続けてみてください。結構長いですよ。

首相のような人は、自分のメッセージを国民に伝えるのをクルマのコマーシャルと同じつもりでやられてはたまらないんです。それを黙々と視聴者に与えて続けるメディアの世界の人たちの責任は誰が追及するのでありましょうか?誰もしません。できないのです。で、どうなるかというと、虚しいからテレビを見なくなる・新聞も読まなくなる。考えなくなる。「政治のハナシなんかしたってどうにもならないじゃん」というわけです。これがworse than nothingの理由です。