home backnumbers uk watch finland watch
どうでも英和辞書 むささびの鳴き声 美耶子のコラム green alliance
finland watch
007 サミットで感じたEUナショナリズム

東京のフィンランド大使館に行くと、敷地に旗が2本掲揚されています。1本はフィンランドの国旗で、もう1本はEUの旗。フィンランドはEUの加盟国なのです。加盟したのは1995年。同じようにEU加盟国なのですが英国大使館に行くと敷地の中に掲げられているのは英国の国旗だけ。つまり加盟国だからと言ってEUの旗を掲げることが義務付けられているわけではないのでしょう。

ところで我々日本人にはイマイチよく分らないのが、EU加盟国の人たちにとって「ヨーロッパ」とはどのような存在なのかということであります。私の勝手な推測に過ぎませんが、フィンランド政府は自国がEUの一員であることを非常に大切なことであると思っているのに対して、英国の場合は…(あえて言わない)ということなのでしょうね。ということで最近、フィンランドの日刊紙Helsingin Samonatに掲載された記事の要約を紹介します。この新聞の記者によるエビアン・サミットの取材の一こまです。題して「フランス人を叩かないで!」。
我々北欧の人間は南欧の人々の悪口を言うのた大好きである。特にイタリア人とフランス人のいないところで彼らのバッシングをするのは楽しいのだ。イタリア人ときたら誇大妄想の癖に怠け者で時間通りに物事をやったことがない。フランス人はもっと悪い。誇大妄想にプラスして傲慢であるのだ…という具合である。

エビアン・サミットのプレスセンターでEUのプロディ委員長(イタリア人)と議長国であるギリシャのシミット首相の記者会見が開かれるのを待っていたときのことだ。二人がなかなか現れないのでイライラした二人の北米人記者が会話を始めた。それが私の耳にも入ってきた。一人はアメリカ人でもう一人はカナダ人であった。 「ギリシャ人ってのはこれだからな。何をやらせてもまともにできない」 「でもイタリア人はもっとひどいぜ。彼等の頭には時間割ってものがないんだから」 「しかし最悪はフランス人。奴らの場合はわざと遅れたりするんだからな」 それから二人の会話は会見で使われる言葉の問題に移った。

会見ではプロディ氏はイタリア語を、シミット氏はギリシャ語を使うことになっていた。 「何でまた英語でやらないんだ?その方が簡単なのに…」とアメリカ人記者がつぶやく。 この二人の会話をそばで聞いていたEU諸国の記者団がお互いに目くばせをした。そこにはいわばEUとしての愛国心(ナショナルスピリット)のようなものが存在したのである。普段はEUとしての愛国心などはナンセンスであると思っている我々の間で感じたのである。 正直言って(フィンランド人である)私自身も会見は英語でやってくれた方が楽である。フィンランド語で会見をやってくれというのは無理としてもだ。それから更に正直に言うならば、北米の方がギリシャ、イタリア、フランスよりも物事が時間どおりに進むというのが、北欧人の一致した感想ではあるだろう。
しかし…しかしである、ヨーロッパ以外の人間がフランス人のことをとやかく言うのを聞くと不愉快なのである。なんのかんの言ってもフランス人は我々の仲間なのだ。ギリシャ人もイタリア人もである。この二人の北米人の会話がその部屋においてEUの愛国心を醸成してしまったのである。それは彼らが北米人であったからというのではない。日本人とブラジル人がこのような会話するのを聞いても我々の間には同じような感覚が生まれたであろう。いずれにしてもあの瞬間、EUの分裂などはどこかへ消えてしまったといえるのであった。
以上であります。EUがますます大きくなり、ユーロが広がりということで、ヨーロッパ合衆国(United States of Europe)のようなものが誕生するのではないかと言われています。そうなるとフィンランドなどの加盟国はアメリカで言う「州」みたいなものになるってことなんでしょう。ただアメリカと違って人々は祖国を捨てて新天地を求めた人たちではないわけです。つまりアメリカ人のような愛国心は生まれようがないってことなのですよね。これは結構なことです。 

musasabi journal

musasabi journal

musasabi journal

musasabi journal

musasabi journal

musasabi journal

musasabi journal