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美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第50号 2005年1月23日 

私、白状するとNPOというのが余り好きでありません。叱られることを覚悟で言うと「世の中のためにいいことをしております」という姿勢が気に入らない。もう少し恥ずかしいという感じを持ってくれないものか・・・と、私と同じような抵抗感をNPOと呼ばれる人々に持っている人は案外多いのではと思ったりしています。特に私のような年齢の人間には、です。で、最近日本記者クラブで行ったスマトラ地震・津波関連の救助活動をしている日本の二つのNPOの人の話を聞いて、少しばかり自分の態度を改めなければと思いました。人助けを案外、淡々とやっているような感じでした。40年前にはいなかったですね。若い世代の社会活動といえば政治デモが主流だった。ひょっとすると昔の方がよほど独善的だったかも・・・。というわけでむささびジャーナル第50号をお送りします。

目次

@無料新聞の独占配布にストップ
A外人学生が英国の大学を支える・・・
B短信
C英国人の外国感覚
D編集後記


@無料新聞の独占配布にストップ
ロンドンの地下鉄の場合、車両の中にお菓子のスロットマシーンがあるでしょうか?ロンドンにお住まいの方教えてください。1月13日付けのThe Economistにちょっと気になる記事が出ておりました。ロンドンの地下鉄構内における無料新聞(Metro)の配布権がMetroの独占ではなくなるとのことであります。また車内のスロットマシーン(slot machines on the London Underground)で売られていたチョコレートはこれまでキャドベリーの独占であったとのこと。

チョコについては事態は変わらないのですが、無料新聞についてはリビングストン市長が、午前中の配布はMetroでいいとしても、夕方用にもう一紙の配布を許すことにしたのだそうです。 Metroは元々スウェーデンのストックホルムで生まれた無料新聞で、英国ではロンドン以外にもマンチェスターのような大都市の駅などに置いてあるそうです。これを出しているのがDaily Mail & General Trust (DMGT)という会社で、いわゆる大衆紙のデイリー・メールの発行元でもあります。

DMGTの独占が気に入らないのがExpress Newspapersのオーナーのリチャード・デスモンドなる人物。彼の会社はデイリー・メールのライバルであるデイリー・エキスプレスを出しているのですが、デイリー・メールが彼のことを「ポルノグラファー」呼ばわりしたことで腹を立てての敵討ちという見方もある。

リビングストン市長の決断によってExpress Newspapersの無料夕刊新聞の配布が許されることになると、大打撃間違いなしとされるのがDMGTの有料夕刊紙であるEvening Standardという新聞。業界関係者の話ではいずれはこの新聞も無料化せざるを得なくなるのではとのことです。Evening Standardはロンドンだけで出ている夕刊紙ですが、かつてリビングストン市長のことを酔っ払いだの「暴力男」だのと書きたてたことがあるらしく、市長もこれを目の仇にしているのだとか。

The Economistの記事によると、Metroをロンドン地下鉄構内で独占配布することでDMGTがロンドン市に対して払っていた金額は「たったの年間100万ポンド」(The Economist)らしいのですが、2紙が競争ということになると、これが600万ポンドにもつりあがるというウワサもある。 Metroの独占販売契約については、英国の公正取引委員会(Office of Fair Trading)もその正当性を問題にしているそうでMetro側に勝ち目はないだろうとのことです。


A外人学生が英国の大学を支える・・・
現在、英国の大学生の9%が外人留学生だそうです。この場合の「外人」とはEU以外からの留学生という意味です。2004年の数字によると彼らの数は一昨年比で25%も増加したのだとか。 英国の大学は留学生大歓迎。何せ国内学生の授業料が約5000ポンドであるのに対して外人学生は8000ポンド払う。彼らの存在ヌキにして英国大学は経済的に成り立たないのだそうで、あの名門LSE(London School of Economics)でさえも英国人の学生1人につき外人1人を入れることでようやく収支トントン。

最近は米国の留学ビザがとりにくく、その分、英国に来る学生が多いということも英国の大学にとっては有利な材料になっています。特に中国からの留学生は50%も増えており貴重なお客様になっている。中国における英国の大学のブランドイメージは大変なものだそうです。

尤もこうした人気がいつまで続くのかについては悲観的な見方もあります。一つには欧州大陸の大学との競争に勝たなければならない。アメリカの大学との競争もある。ビザの問題を乗り越えるべく外国に進出してそこでビジネスをしようという動きもある。特に中国などでは外国の大学が中国にキャンパスを開くことを大いに奨励している。

さらに外国人学生を受け入れる英国の大学側にも問題がある。ニューカッスル大学の調べによると「外人の学生の多くが英国の大学は不親切だと思っている」のだそうです。それに受け入れる大学側にも外国からの留学生の世話に苦労しているということもある。 というわけで、うかうかしていると外人学生を他所の国に取られてしまうということですが、これを防ぐためには英国の学生の授業料を値上げして、外国人留学生の授業料との差を余り大きくしないようにするしかない。

という記事がThe Economistの1月15日号に出ていました。 それにつけても中国人というのは凄いですね。先日、アイルランドの政府関係の人から聞いたのですが、最近の外国からの留学生の数の上でのナンバーワンは中国だそうで、日本人の留学生などほんの少しなのだそうです。


B短信
市長が悪質運転手の摘発に乗り出す

英国とチェコの間には週200便もの飛行機が飛んでいるそうで、チェコにとって英国人は大切な観光客になっていますが、事情を知らない英国の観光客がタクシーに乗って法外な料金をふっかけられたりすることが頻発しているそうです。そこで首都プラハの市長さん(パベル・ベルンという人)が、こうした悪質運転手の摘発に乗り出した。それも個人で・・・。ある日、付け髭をつけるなどの変装をしてタクシーに乗り、運転手に英語で(つまり英国人の観光客を装って)、市内の観光名所まで行って欲しいと頼んだところ、タクシーは大きく遠回りをして普通なら3ポンドくらいで行くところなのに18ポンドも請求された。タクシーの運転手は23000ポンドの罰金を払わなければならないハメに陥っているそうです。市長によると、この運転手が初犯なら罰金で済ませるが、同じことを過去にもやったことがある場合は免許停止だそうです。
  • キツイな、これは。しかし3ポンドのところを18ポンドもふんだくったのなら仕方ないか。
焦って大声、そのまま逮捕

クロアチアの首都、ザグレブにある銀行に男が入ってきて、女性の行員に「俺は爆弾を持っている。金を出せ」という手書きのメモを見せた。この女性行員、メモが読めないふりをして「用件を言ってくれ」と頼んだ。それを真に受けた男は小さな声で「爆弾を・・・」と脅迫。行員、今度は聞こえないふりをして「もう一度、少しだけ大きな声でお願いします」と繰り返したところ、この男もアタマへ来たと見えて、ついに大声で「爆弾持ってるんだ。金を出せ、金を!」と怒鳴りつけた。それが守衛に聴こえてその場で捕まってしまったそうです。
  • よほど焦っていたということ?行員の求めに応じて脅迫を繰り返すというのもドジな話ですが。
ひったくり被害は銀行にも責任

もう一つ銀行の話題。オーストリアの首都ウィーンの銀行で、ある女性が自分の預金から2万ポンド引き出して500メートル離れた自宅へる途中でひったくりにあってこれを強奪されてしまった。で、この女性は「ひったくり犯人は自分が銀行のカウンターで現金を受取るところを見ていたに違いない。これは銀行にも一部とはいえ責任がある」ということで銀行に損害賠償を求めたところこの言い分が聞き入れられて銀行は彼女に1万ポンド払うことになったそうです。「銀行は彼女をもっと人目につかないところで現金を渡せたはず」というのが判決です。
  • 日本で起こった例のスキミングとかいう犯罪によって、自分のキャッシュカードからお金を引き出された人が「銀行に責任がある」として補償を求めたところ断わられたそうですね。ウィーンの銀行を見習えと言いたいですね。


C英国人の外国感覚
どの程度マジメにとるべきものなのかは分からないのですが、世論調査とかアンケートというのは見ていて面白いですね。最近、英国の世論調査会社が行った、英国人の外国観についてのアンケート結果もその一つといえます。

英国も含めて23カ国についていろいろな質問をして「トップ3にあたる国はどこだと思うか?」というのがアンケートのポイント。例えば「美しい国」のトップ3もあれば「美しくない国」のトップ3という質問もある。

ただこの調査の場合、予め比較の対象にする国が決められていて、リストにある国の中から「トップ3」を選択するというやり方です。欧州、北米、中東、アフリカ、アジアにある国が対象で、アジアでは日本・中国・インド・タイ、それにオーストラリア、ニュージーランドが入っている。何故か南アメリカからはどの国も入っていません。

対象となったのは18才以上の成人男女の約2000人。調査結果については部分的に抜き出したものを表にしてありますので、それを見てもらうとして、私が面白いと感じた部分をいくつか抽出してみると次のようになります。
  • 自国(英国)について
    英国人が自国をトップにあげたのは「住みたい国」「民主的な国」「国際的な尊敬に値する国」の3項目であったのですが、それ以外の項目についても結構高いランクにあげている。例えば「信頼性のある製品作りをする国」として英国は23カ国中の第3位に挙げられている(1位は日本)し、「美しい国」としても第3位となっている。
  • 英連邦が好き?
    私などがつい忘れがちなのが、英国人の豪州、カナダ、ニュージーランドという白人人口が圧倒的に多い英連邦諸国への憧れが高いということです。例えば「住みたい国」のトップは英国ですが、豪州、カナダ、ニュージーランドが2―4位を占めている。「国際的な尊敬」についても同じで、1位は英国ですが、2位はカナダで3位は豪州、ニュージーランドも5位となっている。ちなみに「国際的な尊敬に値する国」の4位はアメリカですが、アメリカは「尊敬に値しない国」のカテゴリーでもトップ3に入っている。
  • イメージの悪い国
    英国人にとってイメージが良くないのは「中東全般」とロシアのようで「住みたくない国」のトップ3はイスラエル、インド、ロシアですが、エジプト(5位)、ドバイ(6位)などもいまいちのようです。「最も尊敬に値しない国」のトップ3はというと、イスラエル、米国、中国となっている。4位はロシア、5位はフランス。笑ってしまうのは「フレンドリーでない国民」のトップにフランス人、2位にドイツ人が来ている(3位はイスラエル人)ことですね。
  • 対米感覚
    このアンケートに見る限り、英国人のアメリカに対する感覚は複雑です。「住みたい国」(5位)としても「住みたくない国」(8位)としてもランクが高いし、「国際的な尊敬」は「値する」(4位)も高いけれど「値しない」(2位)はもっと高い。「民主的な国」という点では4位、「民主的でない国」としても第10位で、英国のあとに来ている。米国を民主的でない国のトップ3に挙げている人は全体の6%だから大した数ではないようですが、フランス、ドイツ、アイルランドなどに比べると高い。これは英国人がヨーロッパ(と英連邦)に比較するとアメリカの民主主義に違和感のようなものを感じているということでしょうか?
  • 対日感覚
    何といっても「信頼性の高い製品を生む国」ということではダントツの1位。ランクが1位ということもさることながら、パーセンテージでも70%が日本を1位に挙げています。2位はドイツの39%。製品の信頼性で、中国については「高い」という評価では第5位(16%)と悪くないのですが、「信頼性が低い国」としてのランクも第3位(21%)となっている。「住んでみたい国」としての日本は23カ国中の14位(2%)、「美しい国」では18位((3%)、「休暇を過ごしたい国」では13位(8%)となっている。尤も日本を「住みたくない国」「美しくない国」「休暇を過ごしたくない国」という人もそれぞれ6%、5%、6%という具合に、さして多数というわけではないのですが、生活とかレジャーのような普通の人のレベルでは存在感が薄いというのは事実でしょうね。

    で、日本が「国際的な尊敬に値する国」かどうかについてですが、「値する国」としてのランクは第7位(9%)、「値しない国」としてのそれは19位(1%)となっている。いずれもドイツやフランスよりもプラスのイメージとなっているのですが、これは多分イラクについての姿勢が影響しているのではないかと思います。
  • 味覚のベスト3
    最後に英国人が食べたいレストラン料理のベスト3は中国・インド・イタリアの順で、4位は「英国料理」で5位はフランス。日本食はというと11位ということで丁度真ん中くらいってとことですね。ただこの場合の質問は「あなたの家の近くにあるレストランから選ぶとすれば」となっているので、日本食は中国やインドなどに比較すれば一般的ではないということなのかもしれない。が「英国料理」って何?まさか、あのFISH & CHIPSとかいう食べ物(?)ではないですよね。ところで「食べたくない料理」のトップ3はロシア、エジプト、ケニヤとなっています。

D編集後記

●今回もお付き合いをいただき有難うございました。50回も同じことを言ってきたような気がしないでもないですね。月2回ですから25ヶ月間送り続けたということになります。多分これからもう少し続くと思います。よろしく●そこで前書きに書いておいたスマトラ沖地震・津波で被災者の救援活動をやっている日本の二つのNGOは、JEN(スリランカの援助)とJVC(タイ援助)です。新潟地震に関連して雪降ろしボランティア「スノーバスターズ」なるものを募集したりしています●あっという間に1月も終わりです。最近は寒いのでウォーキングもストップしています。

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