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どうでも英和辞書 むささびの鳴き声 美耶子のコラム green alliance
musasabi journal
第115号 2007年7月22日

   

次の日曜日は参議院選挙の日です。選挙があるたびにメディアで報道されるのは、有権者の間で「支持政党なし」という人が多いということです。そんなときに「国民の政治不信」とか「政党離れ」を嘆き、その責任が「政治家にある」という言い方をするメディアが未だに多い。それが全く間違いであると決めつけるだけの勇気は私にはないけれど、いわゆる「政党離れ」の責任の一端はメディアにもあるのではないかとは思います。以下「むささびの鳴き声」へ。 


目次

1)スコットランド人はケチじゃない!?
2)ネクタイなんて要らない
3)アメリカ人のイングランド絶賛
4)英語のスペルを簡略化しよう
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)スコットランド人はケチじゃない!?


スコットランド人のSir Tom Hunter(46才)は運動着(トレーナー)のセールスから身を起こして、今年の4月にスコットランド初の億万長者になった人物なのですが、その彼がBBCとのインタビューで、生涯かけて10億ポンド(約2600億円)を慈善事業に寄付すると宣言して話題を呼んでいます。

大学を出てからトレーナーをクルマに積んで売り歩く商売を始めのが当たって、チェーンショップに育て上げたところで他の企業に売却したのが1998年。当時の売却価格は2億8000万ポンドだった。これをさらに投資したりして、現在の資産は10億5000万ポンドというわけで、スコットランド一の金持ちであると同時に英国全体では60番目の金持ちに・・・。本当に10億ポンド寄付すると、英国史上、個人の寄付としては最大の規模になるそうです。

Sir Tomが考える10億ポンドの行方ですが、大きく分けて3つある。一つはアフリカの貧困救済、もう一つはスコットランドにおける若手起業家の育成、そしてもう一つはスコットランドにおける「ニート」(NEET: Not in Education, Employment or Trainingの略)の解消にある。The Scotsman紙によるとスコットランドにおけるニートは16〜19才のニートは約15,000人で、ここ10年間で増えてはいないけれど減ってもいないのだそうです。

ところでThe Scotsmanによると、Sir Tomの慈善精神のインスピレーションは、スコットランド出身のアメリカ人、アンドリュー・カーネギーの影響を受けてのものなのだそうです。カーネギー(1835〜1919)は1848年に13才で家族とアメリカへ渡り、ピッツバーグに製鉄会社を起こして成功、65才のときにこれを4億8000万ドルで売却してスーパーリッチになった。

カーネギーは、生涯で約3億5000万ドル(1億7100万ポンド)を慈善事業のために使っているのですが、彼の有名な言葉に「金持ちで死ぬのは、不名誉な死を遂げるのと同じ(The man who dies rich, dies in disgrace)」というのがあって、Sir Tomがイチバン感銘を受けた言葉なのだそうです。

  • スコットランド人というと、昔からケチで有名。Sir Tomの場合もお金を「あげる(give away)」というのを非常に嫌っており、この人にとって寄付は「投資」なのだそうであります。
2) ネクタイなんて要らない


最近の日本では「クール・ビズ」とかいって、政治家、お役人、サラリーマンなどが夏にネクタイを着用しないことが多いですよね。The Independent紙の7月10日付けのサイトによると、英国でもネクタイ無用論が出てきているのだそうです。あちらの場合は「クール・ビズ」ではなくて、最も本質的な「ネクタイなんか要らない」論のようです。

BBCの看板ニュース番組、New Nightの花形プレゼンター、Jeremy Paxmanがネクタイについて「完全に無用」(utterly useless)と決め付けて着用を止めてしまった。Paxmanは「いまどきネクタイなどしめるのは、政治家と記者と不動産屋だけ」と言っております。さらにChannel 4 NewsのJon Snowという看板プレゼンターも「ネクタイに未来はない」(There is no future for the tie)ってんで止めてしまった。Jon Snowという人は、かつては最もネクタイが似合う男(Tie-Wearer of the Year)として表彰されたこともあるくらいのネクタイ党だった。この二人の花形キャスターはイラン風襟なしシャツ(Iranian collorless shirt)を着用してテレビに出ているんだそうです。

英国内で売れるネクタイの数ですが、年間2200万〜2500万本、市場規模は1億5500万ポンドとされており、英国ネクタイ組合(Guild of British Tie Makers)によると「増大はしていないけれど縮小もしていない」(It is not growing, but not shrinking, either)」とのことなのですが、一般的な傾向として、ロンドンのCity(金融街)でもノータイ派が増えているし、企業の方も従業員に対して「きっちりした服装」を奨励しなくなっている。さらにブレアさんだってノータイでテレビに登場したりしている。

もちろんネクタイ堅持派も沢山いる。由緒ある社交クラブや名門学校のネクタイを着用することは、それだけでステイタスや仲間意識に繋がるわけで、ネクタイを「単なるお飾り(シンボル)」という人に対しては「飾りだからこそ意味があるんだ」てえことになる。その半面、庶民性だの若者受けだのを意識する政治家にとっては、むしろノータイの方がかっこよさのシンボルになるというややこしい状況になっている。

ネクタイ派の有名人であるD・ベッカムは「膨大なアルマーニ・コレクション」を持っているし、リバイバル歌手のトニー・ベネット(懐かしい名前ですな)などは「ネクタイをしめたことがカムバックできた理由の一つ。他と違ってたからな」(I think one of the reasons I'm popular again is because I'm wearing a tie. You have to be different.)と言っています。

ネクタイ組合のJohn Miln会長は「英国の男は他のヨーロッパの男に比べてカジュアルな装いまうまくない」(We're not as good at dressing casually in this country as elsewhere in Europe)というわけで、夜の食事に出かけるときなどは、スマートにドレスアップした方が気分がいいはずで、そのためにはネクタイは欠かせないと言っています。またある女性実業家は「ネクタイは必要」と主張しています。「男の首の部分のあの毛むくじゃらの見るに耐えない三角地帯を、ネクタイが隠してくれる」(It stops that horrible triangle at the neck where you sometimes see a bit of hair)というのがその理由。 Jeremy Paxmanは「役立たず(useless)」だからしめないと言っており、着用が害になるとは言っていない・・・と思ったら、そうでもないんですね。The Independentによると、ネクタイはばい菌の繁殖場になる可能性があるというわけで、英国医師会(British Medical Association)などでは、病院内で医者がネクタイを着用しないように勧告(advice)しているのだそうです。

  • ばい菌が繁殖するかどうかはともかく、ネクタイなんてない方がいいに決まっておる。The Independentの記事によると、ネクタイのルーツは17世紀のクロアチアで兵隊たちが首に巻いていた布で、それがフランス経由で英国に入ってきたらしい。クロアチアの兵隊さんたちも余計なことをしてくれたものであります。

 

3)アメリカ人のイングランド絶賛


いわゆる「英国ファン」ならBill Brysonというアメリカの旅行作家の名前を聞いたことがあるでしょうね。Notes from a Small Island(邦題:『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』)というユーモラスな英国体験記は英国でベストセラーになりました。そのBrysonが最近、イングランドの田園地帯を保護する団体(Campaign to Protect Rural England )の会長さんに就任したらしい。Guardianのサイトに彼の就任演説の原稿が掲載されていた。イングランド全部を国立公園(national park)にすべきである、というくらいイングランドの田園地方の美しさを絶賛しています。私なりに感じた面白いポイントをピックアップすと・・・。

カントリーサイド・ウォーキング:田園地帯のウォーキングということですが、イングランドのカントリーサイドの素晴らしい点は(Brysonによると)誰でもそこへ行ってウォーキングを楽しめるし、現に楽しんでいるということ。彼はアメリカのアイオワ州の出身なのですが、アイオワで「カントリーサイド・ウォーキング」などと言おうものなら、アホかと言われるそうです。

  • 分かるな、これは。アイオワは何度かクルマで通過したことがあるけれど、やたらにだだっ広いだけで、クルマならともかく、人間が足で歩くには寂しすぎる。

人間が作った自然:Brysonの故郷であるアメリカで「自然」というと、ナイアガラ瀑布であれグランド・キャニオンであれ、まさに「自然が織りなす美しさ」であるわけです。イングランドの田園風景は「自然」に見えるけれど、実は人間が作った景色であるということです。

  • これも私には非常に分かる。イングランドの田園風景は静かで心休まるものがあるのですが、どこか「箱庭的」なのであります(私の眼には)。日本の風景も「箱庭的」なのですが、それは「小さい」という意味での箱庭であって、人間が人間の知恵で作り出し、保護している というものではない。Brysonは、イングランドの自然の「人工的」(man-madeというよりもhuman-made)なところが素晴らしいのだ、と言っています。あえて私の個人的な好き嫌いを言わせてもらうと、イングランドの自然は飽きがくるけれど、日本のそれには飽きがこない。ちなみに英国にある世界遺産27ヶ所、そのうち「自然遺産」は4ヶ所だそうです。日本は13ヶ所中3ヶ所。

電線と送電線:Brysonが特に文句を言っているのが、送電線で、カントリーサイドが「許し難いほど周囲に合わず、醜いもの(inexcusably alien and ugly)になっていると言っています。それはともかく、英国で電力産業が民営化された1986年、当時のThe Economist誌の試算によると、民営化後の電力会社が売り上げの0・5%を電線の地中化のために使うと、1年間で1000マイル(1600キロ)の電線の地中化が実現することになるとのことであったそうです。英国には約8000マイル(1万2000キロ)の電線が走っているのだから、今頃とっくに全て地中化されていたはず、というのがBrysonの主張です。

  • しかし私の眼から見れば英国は、都会であれ田舎であれ、日本のように電線が空を掻きむしっていることがなく、本当にきれいだと思いますがねぇ。まだ不満ってことでしょうか?国土交通省のサイトには、世界の都市を比べた電線の地中化率が出ています。それによると、ロンドン、パリ、ボンは100%なのに対して、東京23区は7.3%、全国の市街地平均だと1.9%にすぎない。これだけは余りにもお粗末ですよね。毎日の勤務先(日本記者クラブ)は霞ヶ関にあるのですが、電線は全て地中化されています。だから非常にきれいです。私がいつも感心するのは、東京の国会議事堂の付近のきれいさ加減であります。やればできるんですよね。

森林率:もっと樹木を植えろというのが、Brysonの注文です。彼によると、英国の森林率はヨーロッパでも際だって低いのだそうです。フランスが28%、ドイツが32%、イタリアが34%、スウェーデンは70%あるのに対して、イングランドはたったの12%だとか。

  • ちなみに日本の森林率は約67%です。確かにイングランドのカントリーサイドを走っていると、日本のそれと違って樹木に被われた山とか丘がない。個人的な体験ですが、英国のある町の観光案内で「イングリッシュオークが植わっているところはありますか?」と聞いたら、ある場所を教えられ「そこへ行けばwoodland(林)がある」と言われた。張り切って行ってみたら、樹木が6〜7本立っているだけだった。
  • ところでBrysonは「イングランド全体をnational parkにしてもいいくらいだ」と言っていますが、英国でいうnational parkを「国立公園」とするのはちょっと躊躇してしまう。「国が税金で保護・管理している公園」と受け取られてしまうからです。英国にあるnational parkというのは、私有地であることが多い。それを一般の人のレジャー用に開放しているわけです。つまりこの場合のnationalは「国」というよりも「国民の」と言った方がよろしいかも。
4)英語のスペルを簡略化しよう


知らなかったのですが、英語のスペルを簡略化しようというキャンペーンがあるんですね。Simplified Spelling Societyという団体が100年にもわたって続けている運動なのですが、BBCのサイトに、スペルの簡略化を主張するこの団体の代表と、今のままでいいと主張する言語学者のメールによる討論が掲載されています。スペルが話題だけにメールによるディベートとなったというわけであります。

簡略推進派の意見によると、英語においてはアルファベットの使われ方が余りにも不規則で、発音と綴りの間に関係がないケースが多く、いわゆる「正しいスペル」は結局のところ暗記するしかない。発音とスペルをもっと近づける(つまりスペルの簡略化)ことによって、英語国の子供たちの読み書き能力(literacy)も向上するだろうと言っている。この人たちの言う簡略化の例をいくつか挙げてみると:

Beautiful butiful
Couple cupl
Health helth
Learn lern

確かにBeautifulの中のeaは何のためにあるんですかね?HealthLearnaも同じ。CoupleCoup(カタカナで言うとカプ)は、どうしたってcupの方が正解ですね。これ以外にもyouは発音からすれば「u」だけでいいはずだし、slowの最後の「w」なんて要らない。Simplified Spelling Society(略してSSS)は、英語にあるスペルの不規則性(inconsistencies)によって、子供たちが教育上の不利益をこうむっていることに普通の人々が気づいていないと主張している。

スペルの不規則性は外国人が英語を学ぶ際にも問題になっている、とSSSは言っています。要するに書いた英語をそのまま発音しても、「正しい発音」にならないケースが多すぎるというわけです。SSSでは、英国の子供たちが他のヨーロッパの子供たちより3倍も読み書き能力を身につけるのが遅いのはこのせいであると言っている。これは私にも分かるな。例えば・・・。

sunが「サン」なら何故sugarも「サガー」ではないのか?
onは「オン」なのに、onceは「ワンス」
womanの発音は [ウーマン:wooman]なのに、複数のwomenは [ウィメン:wimmen]と発音するのはおかしいんでない?

これに対して、いまのままでいいという意見の言語学者は「どの言語にも非論理的な要素はある。非論理的な部分も含めて人間が使えるものになっているのだ」ということで、単純な英語の単語はいちいちスペルなど気にしていない。「theは"t+h+e"ではなくて、theとして憶えるものだ。@と同じようなものだ」("the" is not "t+h+e" but a whole symbol "the" like "@")と言っています。

SSSはスペルの簡易化には、子供たちが読み書きを身につけるのに費やす時間が劇的に減るし、教えるコストも減らすことができるというメリットがあるが、さらに重要な効果として、英国における機能的文盲率(functional illiteracy:仕事などに必要な読み書き能力の欠如率)を減らすことができることを挙げています。現在の英国の機能的文盲率は20%、それに対してフィンランドは4%、スウェーデンは8%、ドイツは10%だそうです。

この点、現状維持派の学者は「それらの国では、言語の標準化が比較的最近(19世紀)行われている。言語が古くなるにしたがって、ストレートな発音とスペルが一致するようなものからは離れていくだろう」と言っている。コストの問題について、この学者次のようにコメントしています。

スペルを変えることのコストは天文学的な数字になるだろう。英語で書かれている本の数を想像してみなさい。それらのスペルを全部変える必要がある。そうしないと、新しいスペルシステムを教わった子供たちは、自分たちの書き言葉の文化遺産から切り離されることになるのですよ。コンピュータのプログラムだって英語で書かれている。それを変えるコストを想像してみなさい。(The cost of any change would be astronomical. Imagine the number of books in English that would need to be changed. If they were not changed the children taught by the new system would be effectively cut off from their written heritage. Imagine the conversion of every computer, every programme written in English)

▼この議論ははっきり言って「いまのままで結構」という学者の方が説得力あるな。確かに英語には「考えてみると不自然」なスペルはいくつもある。peoplepeepleであるべきだし、haveの最後のeは要らない等々。しかしだからと言ってyouuEnglishInglishてえのはどうも・・・。例外だらけでややこしいのが非論理的でよろしいんじゃないですか?「読む」の英語は現在形も過去形もread、でも発音が違う。過去形は何故かredというスペルではない。と言ってですよ、you are beautiful and I love youという文章がですね、u ar butiful and I lov yuとされたのでは、却ってややこしいんじゃありませんか?

▼発音のややこしさという点では、ひょっとすると、もっと泣かせるのは地名や人名じゃありませんかね。ロンドンの近くにあるReadingという町、あれを「リーディング」ではなく「レディング」と読ませる根拠は何なの?Gloucesterは誰がどう見たって「グロセスター」じゃありませんか?グロスターとは読めないもんな。というわけで、英国の場合、この種の「わけが分からないけど続いている」というものが結構ある。それがまた、いわゆる「英国通」という人たちに活躍の場を提供しているってことですよね。

  • 個人的には、これまでどおりでよろしい、とは思うのですが、この議論を延々100年も続けている執念にはマジメに脱帽であります。


 
5)短信


拍手の騒音

中国の重慶に張泉という名前の爺さんがおります。70才なのでありますが、妙な「特技」がある。拍手(かしわで)の音がとてつもなく大きいってのがそれ。「私が拍手をすると自分の耳がおかしくなるんです」と言っている。地元のお役所が測ったところ、107デシベルあった。ヘリコプターが着地をするときに発する騒音は110デシベルなんだそうですね。地元のお役所によると、張泉さんの拍手は余り頻繁にやると騒音防止条例にひっかかるような音であることは間違いないらしい。

  • 107デシベルの拍手って、ちょっと聴いてみたい気がしないでもない・・・。

ゴアさんの「不都合な真実」?

Daily Mirrorによると、アル・ゴア元米国副大統領が、ビバリーヒルズにおける、自分の娘の結婚披露宴でチリ産のシーバスという魚を使った料理を出してヒンシュクを買っている。このハナシ、聞いたことあります?何故ヒンシュクを買うかというと、この魚が世界で最も大量に捕獲・消費されている種類の魚であるからだそうです。環境保護のためのLive Earthコンサートの幕開けから1週間後のことで、映画『不都合な真実』(An Inconvenient Truth)で環境保護論者として有名になってしまっただけにまずかったというわけ。ご本人からのコメントはナシだそうです。

  • 私の知り合いが先日、この映画を観る会に参加したのですが、観客は彼ら夫婦を入れて6人だったとのことでした。

ドンキーにオムツ

アフリカのケニヤにLimuruという町があるのですが、現在もめているのが、ドンキー(ろば)にオムツを着けさせるべきかどうかということ。クリア市長の発案によるもので、ドンキーが町中にフンをして臭くて仕方ない、というわけでオムツの着用を義務付けることにしたもの。ただこれにはドンキーの所有者たちから反発がある。この町では、ドンキーが非常に重要な運搬手段になっており、オムツ着用などやってられないというわけ。「どうしてもやれというのなら市当局がオムツを着け方を実演すべきだ。ドンキーは怒らせると怖いんだから」という人もいる。ただ今のところ市長はこの方針は変更しないとがんばっており、お役人に対して、オムツを実施している町へ行って着け方を習って来いと言っているそうです。

  • ひどい臭いであろうし、町をきれいにしよう、という市長の意気込みは分かるけど、怒ったドンキーに蹴飛ばされる身にもなってあげなきゃ・・・ということで、この際、オムツは止めた方がいいと思います。



6)むささびの鳴き声


▼で、イントロからの続きですが、先日、新聞に各政党のマニフェストを採点する企画記事が掲載されており、いろいろな専門家がそれぞれの意見を述べておりました。どれも余り簡単に理解できる意見ではなかったのですが、はっきりしていたのは、どの政党のマニフェストも合格点にはほど遠いという採点であったということです。あの企画を読めば、誰だって「支持政党なし」となるに決まっている。

▼考えてみると、政治というものは1億2000万人を幸せにしようという作業なのだから、みんながみんなハッピーなんてことあり得ない。誰が何をやっても必ず欠点はある。ということは選挙は(当たり前ですが)betterとかbestの選択なのではなくて、badless badかの選択であるわけですよね。「どちらがちっとはマシか」という選択です。

▼メディアによる報道は、政党や政治家の「マシ」な部分は言わないで、「ダメ」な部分だけを一生懸命に伝えているように思えるわけであります。「自民党もダメだが、野党も頼りない」風の報道が行われ、どっちが少しはマシかもしれないという部分は殆ど語られない。私が言いたいのは「マシ」な部分を語ることが、自分たちがどこに立っているのかを、読者や視聴者に語ることになるのではないかってことであります。

▼ハナシは変わるけれど、先日、マクドナルドで、ハンバーガーとコーヒーを注文したら「180円です」と言われて「え?あの、コーヒーも欲しいんですが・・・」と念を押したところ「二つで180円で〜す!」ときたのには驚きました。いまどきそんな値段の食べものってあるんですか?!

▼で、最近のThe EconomistにBig Mac Indexなるものが掲載されておりました。世界約50カ国におけるビッグマックの値段が載っているのですが、この種の国際比較は何故か楽しいですね。ビッグマック1個をシカゴで買うと3・41ドル、東京だと280円(2・29ドル)、ロンドンでは1・99ポンド(4・01ドル)という具合です。ロンドンは高いですねぇ。1・99ポンドをそのまま円換算すると500円ですよ。

▼ドル換算でビッグマックがイチバン高い国はどこだと思います?アイスランドの7・61ドルでございます。2位はノルウェー(6・88ドル)で3位はスイス(5・20ドル)となっています。何故か北ヨーロッパが高いんですね。そう言えば知り合いのフィンランド人が、フィンランドでは外食はメチャクチャ高いので、普通の人は外で食事は殆どしない、と言っておりました。それから安い国のベスト3は中国(1・45ドル)、香港(1・54ドル)、マレーシア(1・60ドル)といずれもアジアの国でした。アフリカはリストに入っていない。

▼実はご存知の方もおいでかと思いますが、Big Mac Index(ビッグマック指数)は、ハンバーガーの値段の国際比較を楽しむためのものではなくて、ある国とある国の通貨の交換レートが適切であるかどうかを検証するためのものらしいのですが、その辺りのことになると、何だかよく分からないというのが正直なところであります。

▼分からないままにThe Economistの言うことを鵜呑みにすると、例えば円とドルの「適正な」交換レートはBig Mac Indexによると、280円を3・41ドルで割った数字なのだそうです。つまり82円。でも実際のレートは122円。これは円が安すぎるということであり、いずれは88円に向かって円高が進むであろうとのことです。イマイチ分からん!余りにも違い過ぎるじゃありませんか。中国における値段(1・45ドル)を元で表すと11・0元。。元とドルの交換レートは11・0元÷3・41ドル=3・23元であるはずなのに、実際には1ドル=7・60元がレートです。アメリカに言わせると、どう考えても元が安すぎる。だから中国製品がアメリカに出回って困るのだという人もいるというわけです。

▼難しい経済学のハナシはともかく、マックが高いアイスランドの人が、北京でビッグマックを100個(145ドル)買って、そのままレイキャビク(アイスランドの首都)まで飛んで、1個5ドルで「安売り」すれば、収入は500ドル、仕入れ値を差し引くと355ドルの儲けてぇことになる。ただ・・・北京からレイキャビクまで飛ぶのに何時間かかるのか分からない。「中国製」のハンバーガー(段ボールが入っている可能性もある!?)、しかも作ってから24時間も経っているかもしれない「賞味期限切れ」を買う人は・・・いないだろな、おそらく。