musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第105号 2007年3月4日

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1)無料新聞のゴミ被害に罰金


英国の新聞業界紙、Press Gazetteのサイト(2月16日)によると、現在ロンドンの地下鉄駅を悩ませているのが、いわゆる「無料新聞」(free papers)が読み終わったあとで路上に捨てられゴミの山となることで、発行元に罰金を科そうという動きがあるのだそうですね。

私は英国でも日本でも、無料新聞なるものを殆ど読んだことがないのですが、現在、ロンドンにはLondon Liteとthelondonpaperという無料新聞(いずれも夕刊)があるらしい。いずれも昨年(2006年)8月に発刊された。部数はどちらも40万部程度。

で、ロンドン地下鉄の駅管理会社であるMetronetによると、この2紙の発刊以来、駅の掃除に73万ポンド(およそ1億5000万円)余計にかかっているのだとか。

しかるに、最近になってthelondonpaperの出版元であるNews Internationalという会社(あのルパート・マードックが経営)が同紙の部数を10万部増やして50万強にすると発表したのに対して、ライバルのLondon Liteの発行元、Associated Newspapersが「きわめて無責任」と批判して「需要の増加もないのに。部数を増やすのは意味がない。どうせ路上のゴミが増えるだけではないか」(Increasing distribution is meaningless, unless there is an increase in demand. The most likely outcome of this latest increase in free papers is an increase in litter)というコメントを出した。

無料新聞の被害を被っている区議会(例えばWestminster CouncilやIslington Council)では「道路は汚したものから罰金をとるという制度がある。それを活用して両社に払ってもらう」(Westminster)とか「毎晩8時以後、路上に捨てられた無料新聞が除去されていない場合は両社に罰金を科する」(Islington)と言っているそうであります。

この記事に見る限り、「無料新聞」のゴミについては、両社に罰金を払わせることになる。どちらの新聞が何部捨てられていたかということは問題にならない。だからLondon Liteがthelondonpaperを非難しているわけです。ただLondon Lite側の「多くの無料紙が路上にポイ捨てされているのは明らか」(it is clear that many of the existing free papers are being dumped on the streets)というコメントには笑えました。発行元自らが「ゴミになっている」と認めているんですからね。

  • 私、R25とかいう週刊無料誌が駅においてあったので、一回だけ手にとって車内で読んでみたのですが、どうもイマイチ・・・という感じでした。編集記事を読んでもらいたさに広告を載せている(収入が必要だから)のが有料新聞、広告を見てもらいたさに、編集記事(らしきもの)を掲載しているのが無料新聞。その違いですかね。
2) 英国における親子の理解度


最近、国連機関のユニセフが先進国における子供たちの実情についての報告書を発表したのですが、英国の子供たちが最悪(the worst country in the Western world in which to be a child: the Independent)というレッテルを貼られたことで、英国内で話題になっています。どう「最悪」なのかというと、例えば「両親と食事を共にする」割合が一番低い、麻薬を使用するケースが多いなどの他に、登校拒否、若年妊娠、学校におけるいじめや暴力などにさらされる割合が高い・・・というわけで、先進国21カ国の中で英国は21番目というありさまなのだそうです。

この調査に関連して、Guardian紙が両親と子供を対象に聞き取り調査を行った結果が2月24日付けの同紙のサイトに出ています。それによると「両親の多くが、子供たちが日頃経験しているプレッシャーが親が子供のころのものとは全く違うことがしばしばある」(many parents are in the dark about the way their children cope with pressures that are often very different from those they faced in their own childhood)というのが現状なのだそうです。

この調査は匿名を条件に、11〜16才の子供約500人を対象にアンケートを行い、その結果についてそれぞれの両親に、自分たちの子供がどのように答えたと想像するかについて調べるという方法をとった。例えば「麻薬をやったことがある」と答えた子供たちの両親のうちの65%が「自分の子供はやっていない」と考えていたというわけ。他に「ウチの子に限って・・・」という親の間違った思い込みの例を挙げると・・・。

  • ウチの子に限ってポルノ写真など見たことない(60%)
  • ウチの子に限って避妊具なしに性行為をやったことがない(83%)
  • ウチの子に限って万引きなどしたことがない(65%)
  • ウチの子に限って警察のやっかいになったことがない(35%)

「ずる休み」についていうと、「やったことがあるという」という子供の親61%が「やったかもしれない」と答えているということは、親の観察がそこそこ正しいということになる。

ちょっと意外な気がしないでもないのは、調査対象の子供たちの84%が「タバコを吸ったことがない」と答えていること。案外少ないんですね。「喫煙する」という子供たちの平均本数は1日7本だそうです。飲酒については、殆どの子供が「飲んだことがない」と主張しているのですが、16才の子供については、これが27%に落ちる(つまり酒を飲んだことがある子供の方が圧倒的に多い)。

最後に「親が自分のことをよく分かっている」と考えている子供は全体の83%となっている。だとすると、子供の悪さを知らない親が多いとは言えるかもしれないけれど、それほど心配するような数字とも(私には)思えませんね。

ところでThe Telegraph紙によると、最初にあげたユニセフの調査は次のような結果を伝えているそうです。

  • 日本の子供の30%がI feel lonely(孤独感を持つ)という項目に賛成したけれど、英国の子供は5%に過ぎなかった。
  • ベルギーの子供の15%がI feel awkard and out of place(疎外感を持つ)と応えている。
  • ノルウェーでは、子供の38%がI like school a lot(学校が大好き)としているのに対して、フィンランドの子供たちは7%である。
  • 「学校の友達が親切だ」と考えている子供の割合は、スイスだと80%なのに英国では42%・・・。

    本日(3月4日)付けの朝日新聞が「内閣府調査」として伝えるところによると、父親が子供と触れ合う時間が毎日30分以下という人が60%、「子供の悩みや心配事を知らない」という父親は67%(母親は34%)なのだそうです。だからもっと親子の接触を・・・とか言うんですかね。そんなこと内閣府などに言われたくないな。

3) 道路有料制度が論議を呼んでいる


英国政府が導入を検討している道路有料制度(road pricing system)が論議を呼んでいます。最近、首相官邸のホームページを使って、この制度導入に反対の署名を集めたところ約180万の人がこれに「署名」したのだそうです。ややこしいのは、反対の署名を募集したブレア政府はこれを導入したがっているということ。「賛成」の署名を集めるのなら分かるのですが・・・。それからroad pricingと聞いたとき、私はてっきり「有料道路」制度のことを言っているのかと思ったら、これが違うようなのです。

要するに道路をクルマで走る人からお金を徴収することによって、交通量を減らすとともに、徴収されたお金を使って、特に公共交通機関のインフラ整備を進めようというのが趣旨です。政府の説明によると(労働党政府が発足した)1997年当時に英国内を走るクルマの量は2600万台であったのが、2015年には今では3300万台にまで増加すると見積もられており、何らかの手段を講じない限り、2015年までに大都市圏の渋滞の度合いが現在よりも25%ひどくなって、アメリカのような慢性的渋滞(gridlock)に陥るであろうというのが政府の言い分です。

で、検討中の料金徴収システムですが、英国内を走るクルマに「ブラックボックス」を取り付け、それを人工衛星を通じて監視して、運転した距離に応じてお金を取ろうというものです。お分かり?つまり田舎道を走ろうが、大都会の高速道路(motorway)を走ろうが、お金は取られる。もちろん徴収する料金の額は場所や時間によって異なります。田舎道の場合だと1マイル(約1・6キロ)あたり2ペニー(約50円)ですが、都会の高速道路をラッシュアワーに走る場合は1・34ポンド(約300円?)という具合です。「有料道路」を作るのではなくて「道路はみんな有料」制度というわけです。この案は2005年に当時の運輸大臣によって発案されたもので、別名「運転距離に応じてお金を払う」(pay-as-you-drive)制度であり、従来の道路税やガソリン税に替わるものとされていた。

これから5年以内にマンチェスター、バーミンガム、リーズのような都会で試運転、10年以内に全国的に導入しようというのが政府の考えで、大蔵省の試算では、年間280億ポンドの経済効果をもたらすのだそうです。ちなみにこのアイデアについて、BBCが世論調査を行ったのですが、賛成が23%、反対は74%であったそうです。

ただ反対意見にもかなりの説得力がある(と私には思える)。Guardianのブログ・コラムニストは、この制度は「最悪の無駄遣い」(the great waste of money ever)として、この制度は、政府の試算でも導入するのに少なくとも100億ポンド、場合によっては620億ポンドかかり、維持費として年間50億ポンドもかかるとされている。別の試算では維持費に100億ポンドかかるとも言われている。これは現在、道路整備に使われている年間70億ポンドを上回る額であり、「新しいroad pricing systemからの収入が、新しい道路建設や別の公共交通機関の充実に回される可能性は全くない(it would not yield one extra mile of road or help pay for any improvements to public transport)」と主張しています。

このコラムニストが、現在のガソリン税制度の場合、消費者はなるべく燃費効率の高いクルマを使おうとする。政府が考えているシステムだと走行距離に応じて料金を徴収するのだから、ガソリンを撒き散らすクルマに乗ろうが、小さなクルマに乗ろうが同じ料金をとられることになるので、金持ちにはいい制度かもしれないが、そうでない消費者はクルマに乗るなというシステムでもある、というわけです。

交通渋滞を緩和することを目的にしている新制度ですが、そのことについて想起されるのが、ロンドンで導入された「渋滞税」(congestion charge)です。導入当座、ロンドン市内の渋滞が減ったともてはやされたのですが、最近、ロンドン交通局(Transport for London)が発表して数字によると、渋滞税導入によって緩和された渋滞は以前の8%に過ぎない(the Economist誌)。別の言い方をすると、それまで20分かかっていたのが、18分20秒に短縮されたに過ぎないというのが現実だという見方もある。

この案についてThe Economistは、もう一つの問題点として「全てのドライバーの動きを追跡する国家的な監視システムの構築を意図しているのではないか」(the government wants to set up a national surveilance network to monitor every driver)という疑問について、政府は応えていないと批判しています。

  • ところで、最初に触れたブレアさん「主宰」の「反対オンライン署名」は、昨年の11月から始まって、2月21日で締め切ったのですが、ブレアさんは、この署名に参加した1,792,116人に対してメールで答えたそうです。「導入すると決めたわけではない。この署名活動と首相のメール回答は議論の始まりにすぎない」(No decision has yet been made. I see this email as the beginning, not the end of the debate)と言っています。1,792,116人に宛てたブレアさんのメールはここをクリックすると読むことができます。例によってめちゃくちゃ長い!
4) オンライン署名活動の是非


「道路有料制」の論議もさることながら、そもそも首相官邸のウェブサイトがこのような「署名活動(petitions)」の場として使われることが望ましいことなのかということについても問題になっています。このシステムは2006年11月から始まったものですが、http://petitions.pm.gov.uk/に出ているように、首相宛て署名活動をやりたいテーマを官邸のサイトに登録すると、署名活動と認められ、誰でも署名に参加することが出来る。実際これまでに3000件に近い「署名テーマ」が提案されているそうです。道路有料制度導入反対の署名もその一つです。

で、これを例にとると、まず次のような文章がサイトに掲載されています。

The idea of tracking every vehicle at all times is sinister and wrong. Road pricing is already here with the high level of taxation on fuel. The more you travel - the more tax you pay.It will be an unfair tax on those who live apart from families and poorer people who will not be able to afford the high monthly costs. Please Mr Blair - forget about road pricing and concentrate on improving our roads to reduce congestion.
全てのクルマを追跡しようというこのアイデアは意図もよくないし間違っております。道路有料制はすでに高いガソリン税というかたちで実施されていると言ってもいいものです。クルマを運転すればするほど税金を払わなければならないということ制度は、ファミリーから遠く離れて暮らしている者や毎月そのような料金を支払うことができない貧困者にとっては不公正であります。 ブレア様、道路有料制はないものとして、交通渋滞緩和に取り組んでください。

で、この主張に賛成の人は

We the undersigned petition the Prime Minister to Scrap...(署名者である我々は首相が・・・を廃止することを請願する)

というできあいの メールを送ると、それで反対の署名をしたことになる。道路有料制に関しては約180万の人が「署名」をしたわけです。BBCのサイトによると、このe-democracyは首相官邸からの要望で、あるNPOが思いついたものらしい。29歳になるこのNPOの関係者は「参加型民主主義」のやり方の一つであり、「署名」はいわゆる世論調査と異なり、世論の動向を示すものではないけれど、政治家に対して問題の所在を認識させるという役割を果たしている、と言っています。

もちろんメールによる署名だから一人で何通も送った場合は、それをチェックするシステムになっているのですが、一人でいくつもメールアドレスを持っていれば、一人で複数の署名は可能であるといったような欠点は承知のうえなのですが、道路有料制に関しては組織票めいたものとか、ウィルスによる妨害のようなものはなかった、とこのNPOは言っています。

が、当然反対意見もあります。例えば2月17日付けのThe Economistは、署名は、シングルテーマのキャンペーンを奨励し、複雑な思考を要するイシューに単純な賛成・反対という態度でアプローチしてしまうと言っており、「人々を政治に参加させるやり方として最悪の方法の一つ」(one of the worst possible ways of drawing the public into the political process)だと言っています。またブレア首相がやっているのは「国民の意見に耳を傾ける政府(listening government)」のふりをしているにすぎないとこきおろしています。

これまでの署名活動と決定的に違う点は、これを受け取ったブレアさんのような人が、参加者に直接返事が出来ることです。この点について、これを思いついたNPO関係者は次のように積極的にコメントしています。

That's historically unprecedented. For decades petitions have been given to Number 10 but it was too expensive to write replies back to tell them and it was instead done through the headlines of newspapers, which have their own agendas. Now if the petition is big or small, the government can send back messages directly.
(首相が直接返事ができるということは)歴史上かつてなかったことだ。これまでは署名は首相官邸に届けられてきたが、それに返事をすることはコストの関係で出来なかった。署名への返答はもっぱら新聞を通じて行わざるを得なかったが、新聞にはそれぞれの見解があり、それを基にした扱いをされてきた。e-petitionでは、署名活動の大小にかかわらす政府が直接返答することができるのだ。

また世論調査機関であるMORIの関係者は次のようにコメントしています。

It could mark a new phase in British democracy. It's not the death of Parliament but it's a gentle movement towards participative democracy.
(オンライン署名は)英国民主主義の新しい段階を画するものとなりうる。「議会の死」なのではなく、参加型民主主義へのゆっくりとした歩みなのだ。

  • この件についての記事とブレアさんの官邸サイトを見ながら、奇妙な時代に生きているのだと考えてしまったのであります、私としては。まず最後に紹介したMORIの関係者のコメントの中の「議会の死を意味するとまでは言わないが」という部分についてですが、180万という「反対署名」を集めておいて、彼らに「返事」という名の「説得工作」ができるのですよ。オンライン署名というブレアさんの発想は「議会の抹殺」を狙ったもの以外のなにものでもないと思いませんか?こんなものがまかり通るのは、どう考えてもおかしい。
  • これを日本に当てはめるとよく分かる。例えば、安部さんが、首相官邸のサイトで次のようなメッセージに対する「反対署名」を募集するのです。

安部首相殿:「美しい国」の実現のために君が代を歌わない国民は年金の対象から外し、国旗を掲げることを拒否する教師は直ちにクビにするような法案を作ってください。

  • これをメディアを通じてPRすると、「とんでもないことだ」というので「反対意見」が殺到する。その数200万通。メディアは「それみたことか」というので、安部さんの主張は不評だと書き立てる。が、その一方で、安部さんは200万人に対して、自分の「美しい国」哲学を諄々と語るメールを送ることができる。200万人の中の1%が「なるほど安部さんのいうコトも尤もかもな」と意見を変えるかもしれない。それでも2万人です。ウハウハじゃありませんか?
  • こんなものがまかり通るのは、どう考えてもおかしい。英国だけのことにしておいて欲しい。
5)短信


イヌとATM

障害者を助けるイヌの話。英国のCanine Partnersというイヌの訓練NPOが現在取り組んでいるのが、車椅子生活者が現金払戻し機(ATM)でお金を受け取るのを助けるイヌであります。キャッシュカードをATMに入れ、ご主人さまが脇から暗証番号だの金額だのを入れる。で、イヌがカードと現金を口にくわえて取り出す、というわけ。ある障害者がラブラドール犬を連れてATMのところに行って、例によって四苦八苦しながら現金をとろうとしていたら、ワンちゃんが、何の訓練もしていないのに、ご主人に成り代わって取り出してくれた・・・という実例に基づく訓練だそうです。この訓練には2年かかるのだそうで、いまのところ年間30匹ですが、将来はこれを倍増したいと言っています。

666は悪魔の番号!?

ロシアでは生まれた子供に番号をつけるんですね。いわば国家登録番号です。で、Natalia Serepovaという33歳になる女性に子供が生まれたのでお役所に登録に行ったところ、もらった番号が666。Nataliaによると、666は「悪魔的」(Satanic)というわけで、変更を要求したところ、お役所がこれを拒否。Nataliaは現在、この役所を訴えているそうです。彼女によると666は「反キリスト的」でもあるんだそうです。

  • うーん、666ならオイチョカブでいうと「八」。だいいち同じ数字が三つ並んでいるなんて・・・いいと思うけどなぁ。

女性オンリーの観光地

イスラムの戒律が厳しいイランで、女性だけの観光地を作る計画があるのだそうです。英国のPA通信のサイトにありました。イラン北西部にあるOrumiyehという湖の中に浮かぶArezouという島がそれで、とにかく女性しかいないのですから、水着で泳いでもオーケーなんだとか。観光局によると、この島には「男は一人も入れない。交通機関の運転手、ホテル、レストランなどのスタッフも一切女性オンリー」なのだそうです。現在まだ計画中とのことですが、以前にも女性オンリーの海岸という企画が成功したので、今度も成功間違いなし。

  • やりますね、イランも。男がのぞきに行ったら逮捕されるのでしょうか?
6)むささびの鳴き声


▼私、昔からプロ野球が好きであります。で、ロバート・ホワイティングというアメリカ人ジャーナリストが書いた日本のプロ野球に関する観察記に面白いことが書いてありました。野球が好きでない人には何のことか分からないかもしれませんが、ちょっと我慢してもらうとして・・・。

▼野球ファンの間で、いつも不満のタネとなっているのが試合時間の長さ。2時間で終わってもいいのに、いつも3時間、ひどい時には4時間もかかったりする。ホワイティングによると、その理由の一つとして、バッターがフルカウント(2ストライク・3ボール)になることが余りにも多すぎるということを挙げています。

▼大体において、投手が最初の2球でツーストライクをとる。コーチが投手に「有利なカウントにしろ」と命令するから。で、3球目は決まってボールを投げる。「有利なカウントからヒットを許すな」とコーチから厳命されているから。

▼打者についていうと、コーチが「第一球から打つな。じっくり待て」という指示を出すケースが多い。じっくり待った結果、2-0に追い込まれてしまう。そうなると思い切って打つよりも三振しないように慎重にバットを振る。だからファウルも打てるしボール球を見逃せるようになる。

▼要するに打者も投手も、コーチに叱れられるのが怖くて萎縮している。つまり、失敗を怖がりすぎるんです。自分の好きなようにして失敗すると「みんなに迷惑をかける」というタイヘンな罪を犯すことになる。ホワイティングは、いっそのこと「フルカウントから打者をボックスに立たせてはどうか」と言っています。

▼試合時間が長すぎるもう一つの理由として、ホワイティングも言っていないことがあります。審判がピッチャーに辛すぎるってことです。ストライクかボールか微妙な場合は殆ど「ボール」にする(と私には思える)。お陰で一人のバッターと勝負するのに異常に時間がかかる。微妙な場合は、みんなストライクにするべきです。

▼何故そうなるのか?審判が、打者の選球眼を審判するのではなくて、投手のコントロールだけを審判しているからです。そしてなるべく厳重にやろうとする。投手に対して厳しいのが審判の使命だと思っているから。全くの推測ですが、50年間も野球を見てきた人間の言うことだから、それほどメチャクチャにはずれてはいないはずです。

▼いずれにしてもフルカウントが多すぎるというホワイティングの指摘は当たっている。 コーチが怖いから・・・ということだけど、ではそのコーチは何故、あのような指示を出すのか?勝ちたいからですよね。勝つためには選手が勝手なことをやってはいけない、と考えている。そういうことなのですが、それでますますゲームが退屈になる。

▼それはともかく、NHKテレビの松坂騒ぎ、冗談ぬきにしてひどすぎませんか?大学生との練習試合をなんで生中継するの!?