musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第73号 2005年12月11日 

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竹中総務大臣という人が、NHKの民営化を考えている、ってホントですか!?私、NHKの番組にはいろいろと不満がありますが、だからと言って民放がいいというわけでは絶対にありません。民放はおハナシにならないくらいひどいから諦めているだけ。総務大臣はpeople(私は国民という言葉がどうしても好きになれない)が自前で支えている(ことになっている)放送局を勝手に取りあげて企業に売り渡そうと・・・そういうことですね?


目次

@サッチャリズムと決別する若い保守党リーダー
A消えたRoutemaster
B根付くか、「社会派企業群」
C「伝統的な日本の公共意識」って何?
D短信
E編集後記

@サッチャリズムと決別する若い保守党リーダー


日本の新聞やテレビでも報道されましたが、英国保守党の新しい党首にデイビッド・キャメロン(David Cameron)という人が選ばれました。全国の保守党員からの郵便投票の結果、キャメロンの得票数が134,446票、対立候補(David Davis)のそれは64,398票。圧勝です。

この人いくつだと思います?39才ですよ。若さを売り物にしたブレアさんが1994年に労働党の党首選ばれた時の年齢が41だったから、それよりさらに二つ若い党首というわけです。保守派の新聞Daily Telegraphは、キャメロン党首の登場は保守党支持者によって「10年ぶりの熱狂をもって迎えられた」と伝えています。確かThe Economistが、保守党員の平均年齢は65を超えていると伝えていたはず。そんな党がよくぞ39才の若者を党首に選んだものですね。

年齢は書いていないけれど、Daily Telegraphのサイトに投書した保守党支持者は、キャメロンに「ブレアの真似だけはしてくれるな」というわけで、「傲慢(arrogance)」「うそつき(mendacity)」「シニシズム(cynicism)」「気短(petulance)」「退屈(vapidity)」「不真面目(profligacy)」などを挙げています。保守派の英国人にとってブレアの何がイヤなのかをよく表わしていると思います。

それはともかく、Daily Telegraphはキャメロンが「サッチャー伝説に終止符を打った」と伝えている点が注目されます。同紙によると、キャメロン党首は保守党を「近代的かつやさしい保守党(modern, compassionate Conservative)に変革することを重点にしている。そのことによって労働党に奪われた「中間層」を再び保守党に取り戻そうというわけです。具体的には、女性の議員を増やすこと、公共サービスの充実に力を入れること、何でも反対という対立的な姿勢を止めて、よい政策であれば労働党政府のものでも支持する等などが挙げられています。

キャメロン党首の就任演説の中で言った言葉There is such a thing as societyはサッチャー語録の中でも最も有名なものである「この世に社会なんてない(There is no such thing as society)」からの脱却を宣言したものだ、とDaily Telegraphは言っています。サッチャーさんは「政府に頼るのは止めなさい」と言ったのですが、キャメロン党首は「国家とは別に社会というものはある」と述べたそうです。

この人は、あの名門、イートン校とオックスフォード出身のエリートだそうですが、懸念と言えば「若さ」だそうです。年齢というよりも経験のなさのことで、何せ国会議員になってから5年も経っていない。野党党首としては最も未経験な党首なのだとか。

  • サマンサ夫人との間にもうすぐ3人目の子供が生まれるのだそうです。夫人と写っている写真に見る限り、この人の保守党と選挙を戦わねばならない労働党のゴードン・ブラウン(次回の選挙が行われる2009年には58才)はきついかもしれない。この人に比べると、明らかに「じいさん」だもんね。

 

A消えたRoutemaster


ロンドンの2階建て(ダブルデッカー)バスの中でも昔ながらのRoutemaster(写真左)という形のものが12月9日をもってロンドンの街から消えました。現在のリビングストン市長は就任当時の2001年、このバスの運行を続けるかどうかを聞かれて、ロンドンの風物詩ともいえるあの有名なバスを消すなどということは「とてつもない非人間的な愚か者が考えることだ(a ghastly dehumanized moron would consider getting rid of such an iconic vehicle)」と廃止案を一蹴していたのだそうであります。

ご存知の方も多いと思いますが、後部が飛び乗れるようなスタイルになっている、あのダブルデッカーです。ロンドン交通局によると、廃止の理由は、運転手と車掌の二人が乗務する必要があり人件費がかさむこと、さらに身障者が乗車できないなどだそうですが、乗り物ファンというのは、どこも同じで、このバスが廃止されるについて反対する愛好家が多かったのだそうです。

で、これに取って代わったのがbendy busという連結式のバス(写真右)なのですが、「モダンで退屈」という以外にドイツ製であるということで、これをけなす向きもかなりある。

Routemasterに対するノスタルジアに冷水を浴びせているのが、The Economistの12月10日号で、それによると、Routemasterは今から約50年前に作られた時には人気がイマイチで、採用したのはロンドンとサンダーランドという都市だけだったのだとか。さらにRoutemasterは現代でもそれほど一般的ではなく、ロンドンバスの700ルート中、これが走っていたのはわずか20ルートだった。

純英国製のバスに代わってドイツ製のバスが登場したとあって、英国人の誇りがいたく傷ついたのかもしれませんが、障害者でも楽に乗車できるというわけで、「bendy busの採用によって、乗り物におけるアパルトヘイトがなくなった」と言う人もいるようです。

  • 乗り物の風物詩としては、サンフランシスコのケーブルカーがありますよね。デザイン変更がなされていない限り、こちらも身障者の乗車は絶対できない。今でも走っちゃいますが、マジにとる人は殆どいない。

 

B根付くか、「社会派企業群」


Social enterpriseというビジネス概念が英国で市民権を持ちつつある、とThe Economistの11月26日号が伝えています。上手い日本語の訳語が私には分からないので、この際「社会派企業」とやってみました。企業ではあるけれど、利潤追求を第一義とせず、「世の中のためになることをやるが、少しはお金も儲ける」活動ということです。NPOと似ていますね。

具体例を挙げると、難民支援などで知られるOxfamというNPOがやっているCafedirectというコーヒー販売ビジネスは、生産国に対して公平(フェア)な料金を払って輸入されているもので、英国内ではベストセラーのブランドの一つとなっているそうです。

またテレビの料理番組で人気の若手シェフが経営しているFifteenというレストランの場合、もとホームレスだったり、麻薬に溺れていた若者たちに料理を用意させているのですが、メインコースが24ポンド(殆ど5000円)というお値段にも拘わらず結構受けているのだとか。

こうしたSocial enterpriseの場合、たいてい社員=オーナー・経営者であることが多いのですが、英国内に約15000社あると推定されているのだそうです。政府もこれらを奨励するべくFuturebuildersという機関を設けて、有望なところにお金の貸し出しを始めています。最初に貸し出しを行った対象はTreeHouse Trustという自閉症児のための学校だった。

またイチバンの成功例としては、ロンドン郊外のグリニッジにあるGreenwich Leisure Limited (GLL)という会社だそうで、業務は区立のレジャー施設の管理・運営。グリニッジの区当局からの委託事業で、区の予算削減対策の一環として管理を任されてのだとか。GLLはもともと低所得者でも使える「労働者クラブ」のようなものとして始まった活動であったのだそうです。

The EconomistSocial enterpriseという発想は、労働党政府のみならず保守党にもウケがいいと言っています。労働党にとってはコストのかかる公共サービスをアウトソーシングを進めながらも、保守党風「民営化路線」というイメージを与えなくてすむ。また保守党から見ると「小規模ビジネスの振興」という保守派の理念に合致するし「小さな政府」を維持しながら公共サービスの向上も図れるという利点もあるというわけです。

というわけで、Social enterpriseは、大きな産業セクターにはならないとしても、消えることもない(they are here to stay)というのがThe Economistの見方です。

 

C「伝統的な日本の公共意識」って何?


新聞や雑誌を何気なく読んでいると、思わぬところで思考を刺激される記事に出会うことがあります。インターネットには、この「何気なく」というのがないのですよね。最初から目的意識ギンギラギンという感じでコンピュータの画面に見入るわけです。疲れます、はっきり言って。 で、最近出会った刺激的な記事は、毎日新聞の11月21日付けの2面の下に出ていた「発信箱」というコラムの「暴走する『自由』」というものでした。書いたのは「編集局」の山田孝男という人でした。以下、長ったらしいので、別のところに掲載します。 →ここをクリック

 

D短信


霊柩車が駐車違反!?

イースト・ロンドンのハックニーの駐車禁止区域で、車が4台ダブルパークしたというので、それぞれ50ポンドの罰金を払うことになった。これが霊柩車と葬儀社のリムジンであったということで話題になっているのだそうです。なぜ駐車違反をしたのかというと、死者の棺桶を自宅から霊柩車へと運ぶのにリムジンのドライバーも手を貸していたから。葬儀社のブラックバーン氏は「いくらなんでも理不尽だ」とカンカンに怒っているそうです。

  • 確かに霊柩車が駐車違反で罰金というのは聞いたことないな。

女なのに男の刑務所に

アルゼンチンで、間違って男の刑務所に服役した女性の囚人が、女専用の刑務所に移されたのが気に入らないというわけで再び男の刑務所に戻りたいと訴えているというヘンなニュース。この女性は強盗の罪で捕まったのですが、警察でも男の名を名乗って通ってしまった。あるとき外部からの電話による密告を基にボディチェックをしたところこれが女性であることが分かったというわけ。この人、ペルー人らしいのですが、アルゼンチンの警察では「どうみても男だった。あれが女だなんて・・・」といまでも信じられない様子らしい。で、この人はいまでも自分が男であると言い張っているそうです。

  • でも、なんだってそれほど男でありたいんでしょうか?そのあたりを書いてないのです、このPA通信は・・・。

あたるか、音楽サンド

スーパーマーケットのテスコが、クリスマス商戦の一環として「音楽サンドイッチ」(musical sandwich)なるものを売り出すそうです。包みを開けると音楽が鳴り出す・・・たったそれだけのことなのですが、テスコでは「世界初」として力を入れています。とりあえずは「ジングルベル」「サンタが街へやってくる」などの定番で勝負するのだそうですが「これが当たればクリスマスでなてもやれるのでは」というわけで、将来は新作の音楽デビューの方法の一つとしても考えられるとテスコでは言っています。

  • このアイデア、私も最初はアホらしいと思ったのですが、売れない演歌歌手のCDの宣伝作戦などにはいけるかもね。日本の場合は「シャケのおにぎり」に仕掛けて「北海盆歌」とか・・・。

 

E編集後記


●NHKの民営化に関連するのですが、先日の日経新聞に寺島実郎という人のインタビュー記事が出ていた。インタビューはNHKのこととは関係はないのですが、彼によると、この世の中には「官」と「民」の間に「公」というものがあるということを認識すべきなのだそうです●お上に頼るのではないし、いわゆる利潤追及でもない姿勢で、自発的に世の中と拘わろうという生き方を持つということだそうで、寺島さんはこれを2007年にどっと定年を迎える「団塊の世代」の生き方としてすすめています。寺島さんは、個人レベルではボランティアだのNPOへの参加だのを挙げています●メディア組織のあり方として、NHKはこのような路線を進むべきなのではありませんか?NHKは見ている人々に対して「国営」でも「民営」でもない「公営」の持つ重大さをきっちり説明すべきなのでは?特に政府からの介入については、不公平と思われるぐらい批判的な考えを紹介すべきなのでは?

 

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